内需押し上げの切り札、巨大公共事業は日本企業にとっても◎
タイの内需押し上げの切り札、総額3兆3000億バーツの大規模インフラ整備8ヵ年計画(2015〜22年)が始動した。計画予算の大部分を占めるのは鉄道整備だが、タイ政府が昨年12月に中国と事業に関する覚書を締結したことは記憶に新しい。
巨額な鉄道整備事業の受注を、各国の企業は喉から手が出るほど欲しがっている。中国と締結した事業は長距離鉄道で、国家規模で決定されるメガ案件。一方、民間レベルで注目されるのが、すでに建設進行中で、今後、次々に開業されるレッドラインやグリーンラインといったカラー名で呼ばれる都市鉄道「バンコク首都圏鉄道整備事業」だ。
運輸省の発表によると、前述の3兆バーツに及ぶインフラ計画のうち約3分の1となる1兆2000億バーツは今年度執行され、その大半が都市鉄道に注がれる。最も距離が長いタマサート大学−マハーチャイ間を結ぶ、「ディーブ・レッドライン(総延長80.8キロ)」は、2018年建設完了予定で、残りのタマサート大学−ランシット間は10月にも工事入札が行われる。また、バンコク西部シリラートと東部フアマークを結ぶ「レッドライン(同54キロ)」のうち、バンスー−フアマーク間も今年中の入札。さらに、ラムルッカーとサムットプラーカーンを結ぶ「デイープ・グリーンライン(同66.5キロ)」、MRTフアランポーン駅からの延伸区間である「ブルーライン(同55キロ)」、バンヤイとラートブラナ間の「パープルライン(同42.8キロ)」の3路線は、着工済または完成済だ。
そのほか、タリンチャン−ミンブリー「オレンジライン(37.5キロ)」、ケーライ−ミンブリー「ピンクライン(同36キロ)」、ラップラオ−サムローン「イエローライン(同30・4キロ)」の3路線は、内閣承認待ち。上記地図にはないが、運輸省は「ケーライとカセナワミンで計画中の高速道路計画が中止されれば、同区間をモノレールで結ぶ『ブラウンライン』を追加する」と発表した。
目白押しの鉄道事業。企業にとってのうまみは建設受注に留まらず、電車システムや車両供給など多岐にわたる。日本のお家芸“正確・安全・高品質”の武器が生かされるだけに、今後に注目したい。