外国人ITエンジニア採用をお考えの方へ
日本のIT業界では近年継続して人手不足に陥っており、回復の兆しはありません。求人票を出していてもなかなか良い人材に出会えなかったり、希望する採用活動が行えていなかったりといった状況も続いています。
そんな中、日本人だけに目を向けるのではなく、外国人材に狙いを定め、外国人ITエンジニアを採用する企業が増えています。人手不足が続くIT業界において、ITエンジニアの採用に最適解はあるのか、そして外国人ITエンジニア採用のメリット・デメリットは何か。
現在のエンジニア不足の状況を整理しつつご紹介します。
掲載情報については2021年2月時点における情報に基づいて、ヤッパン号編集部で作成したものです。ただし、その掲載情報の真実性、合法性、安全性、適切性、有用性について弊社(ISHIN SG PTE. LTD.)は何ら保証しないことをご了承ください。直接、専門家の方々にお尋ねすることをお勧めいたします。くれぐれも慎重にご判断ください。
メリットや採用に必要なステップと注意点
IT分野の人手不足の現状
まず、IT分野の現状を整理してみましょう。
令和2年8月時点での、情報・通信分野での有効求人倍率は1.29倍でした。前年の同時期に比べ求人倍率は下がったものの、依然として人手不足の状態が続いています。
求人倍率が下がったのはコロナ禍による一時的な求人数の低下や、求職者の増加が要因です。逆に言えば、コロナ禍であっても人手不足が続いている業種であると言えます。
今後の5Gの浸透やテレワーク、働き方改革の推進などによって市場はまだまだ発展していくと考えられており、それに伴って人手不足もさらに進行するでしょう。
経済産業省がまとめた資料によると、 2030年のIT人材の不足人数は最大で79万人にも達すると試算されています。この通りになれば、IT業界の人手不足は今よりも深刻化することになります。
今のような求人を続けていても大きな解決にはならず、一刻も早い抜本的な解決が不可欠な状況です。特に不足しているITエンジニアについては、日本のIT教育・エンジニア育成の強化だけでなく、積極的な外国人材の採用がカギとなることは間違いないでしょう。
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日本のIT分野における外国人材の現状
【外国人材の雇用状況】
すでに日本のIT企業で働く外国人はたくさんいます。厚生労働省の発表では、
2020年10月末時点で、情報通信業に従事する外国人材は71,284人でした。
2016年では43,758人でしたので、
数年の間に63%増加したことになります。年単位で見ると、2016年から17年にかけて18.9%、17年から18年には10.7%、18年から19年にかけては17.2%と高い伸び率で推移しています。
19年から20年については、新型コロナウィルスの影響もあり5.5%にとどまっていますが、増加傾向は続いています。外国人材を雇用する事業所数についても同様に増加しており、2016年は8,248カ所であったのに対し、
2020年は11,912カ所が外国人材を採用しています。
特に、ITエンジニアの活躍が目立っており
約6割がエンジニアとして採用されています。そのほかには、オフショア開発を積極的に行っている会社ではブリッジエンジニアや通訳、外国人材の多い会社では管理職として採用されているケースもあります。
【外国人材の給与】
日本で外国人が働く場合、その事業所は日本人と同等かそれ以上の給与を支払うことを政府により決められています。守れていない事業所は指導を受けることもあります。
外国のスキルを持っている外国人材は日本人にはない特別なスキルがあり、日本人以上の報酬が妥当と判断されているためです。とはいえ、極端に高額に設定する必要もなく、不当に冷遇をしたり、報酬を能力以下に設定したりしていなければ問題ありません。
一方で少し気になるのが、
他先進国と比較した日本の給与水準の低さです。日本とアメリカのIT人材の平均年収を比較すると、日本は20代が413万円、30代が526万円、40代が646万円、50代が754万円であるのに対し、アメリカは20代で1,023万円、30代が1,238万円、40代が1,159万円、50代が1,041万円(2016年)となっており、待遇に大きな差があることがわかります。
インドネシアやベトナムなどの発展途上国の人材が外国で能力を活かしたいと考えたとき、アメリカのような好待遇の国での就職をしたいと思うのは当然のことのように思います。今日本を選んでくれている外国人エンジニアの多くは「親日」で、日本に対してポジティブなイメージを持っている方がほとんどです。彼らのような人材がより多く日本に来たくなるような環境をつくっていくことは重要でしょう。
また、年収比較で日本が年齢によって年収が上がる傾向にあるのに対し、アメリカは年齢に関係なく平均的に高い水準にあることがわかります。これは、年功序列を重んじる日本の文化と、実力を重視するアメリカの違いが反映された部分でしょう。
日本が実力主義に舵を切る必要は必ずしもないですが、給料形態については入社前にしっかり説明し、誤解が出ないようにしておくことで、入社後のトラブルを防ぐことができます。
【国内の即戦力採用は限界がある】
依然としてITエンジニアの不足が続いているため、多くの企業が求人票を発行し人材を募集しています。その多くが即戦力を求めています。
コロナ禍もあり、新規の入国へハードルが上がっている昨今では、
すでに日本で働いている外国人エンジニアへの需要が高まっています。 特に、自社で求めるITスキルと合致した経験のあるエンジニアを求める傾向は顕著で、必須要件には「〇〇をつかったシステム開発の経験5年以上」のように具体的なプログラミングソフトの指定や経験年数の指定が多くなっています。
しかし、外国人材を採用しようとしても、現在日本で働いている71,284人を取り合うこととなり、なかなかうまく採用できない事例をよく目にします。こうした状況が続いている企業は採用要件を変えることをお勧めします。
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どのようなITエンジニアを優先的に採用するべきか
【ITエンジニアの採用の4つのパターン】
では、外国人ITエンジニアを採用しようと考えたとき、どのような人材を採用していくべきでしょうか。日本人も含めて、ITエンジニアの採用には次のような4つのパターンがあると思います。
A) 現在不足している分野の経験があるエンジニアの採用(即戦力採用)
B) 現在不足している分野に近い経験があるエンジニアの採用
C) 実務経験はないが、IT分野を専門に勉強してきた人材の採用(新卒採用)
D) IT分野の勉強をしていない人材の採用
この4つのパターンは上から即戦力順に並んでいます。
Aの人材はどの企業でも最も欲しいエンジニア採用の形です。同分野でのエンジニア経験があるので無駄な教育期間などは不要。就社してすぐ作業に当たってもらえます。入社したエンジニアとしても、職場や環境こそ変われど、実務で使用するツールに変化はないため、ストレスなく職務に当たることができます。
Bのパターンは同じプログラミング言語を利用して全く違う種類のソフト開発をしたことのあるエンジニアなどです。Aに該当するエンジニアに比べれば、慣れの部分で劣りますが、経験があるため比較的即戦力として見込めます。ただし、開発する業界が変わることで注意点や仕事の進め方なども変化がある場合が多く、ある程度の教育は必要になります。
Cはいわゆる新卒採用です。学校で学んだ分野であるためエンジニアとしての知識は豊富ですが、実務経験がない分、社会人としての教育を一からしなければなりません。教育の時間がかかる分回り道ではありますが、自社の開発内容に則した経験を詰むことで、将来的に自社にとって重要な人材となります。
Dは派遣社員などに多い形態です。高度なITスキルや知識が必要ではなく、数か月の研修でカバーできる範囲の業務を任されます。もちろん、派遣社員でも優秀なスキルを持った人材はいます。しかし、期限のある契約である以上、契約期間の満了後は、培ったスキルを他社のために使われてしまう可能性があります。派遣社員の採用はメリット・デメリットを吟味したうえで行うのが良いでしょう。
【人材採用の優先度】
近年のITエンジニア採用の現場では、即戦力順に優遇される傾向が強くあらわれています。IT業界全体の人手不足が影響し、常に即戦力が必要な状態にあるからです。
しかし、実際には即戦力採用は難しい傾向にあります。会社の求めるスキルと経験を持ったエンジニアはそう多くなく、さらにその中で転職を希望しているとなると、ごくわずかの人数にしかなりません。
少し幅を広げて、近い経験のある人材を採用しようということになりますが、これもうまくいっていない企業が多いでしょう。即戦力系の人材を求めても、エンジニアが不足している業界の中で取り合いが起きているからです。
少し話が変わりますが、世界的ベストセラーである『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー)の中に「最優先事項を優先する」という項目があります。ここでは物事を緊急度と重要度の二つの軸で4つのグループに分けて優先度を考えています。
「【第一領域】緊急かつ重要な項目」が増えると問題を処理しきれなくなりますので、最も早く取り組むべき項目です。問題は次に優先すべき項目がなにかということです。
結論としては 「【第二領域】緊急ではないが重要なこと」が優先すべき項目 です。しかし、多くの場合「【第三領域】緊急だが重要ではないこと」を優先してしまう傾向にあります。
目の前に差し迫っている問題として、第三領域の方が切迫感を感じ、優先して行ってしまいますが、長い目でみると、第二領域を対策しておかなければ、将来的に第一領域の項目が増え、処理できなくなってしまいます。
この緊急度と重要度の考え方をITエンジニア採用の4つのパターンに当てはめるとこのようになります。
【第一領域】緊急かつ重要=A現在不足している分野の経験のあるエンジニアの採用
【第二領域】緊急ではないが重要=C実務経験はないが、IT分野を専門に勉強してきた人材の採用
【第三領域】緊急だが重要ではない=B現在不足している分野に近い経験のあるエンジニアの採用
【第四領域】緊急でも重要でもない=D IT分野の勉強をしていない人材の採用
いかがでしょうか。現在A、Bに該当するエンジニアを求める企業が多い傾向にありますが、これは改善すべきです。Aは一刻も早く最重要なので、継続すべきですが、Bについては求人の数を減らし、その分をCのエンジニア採用に当てましょう。
A、Bを続けていても、既存の人材を採用し続けているので、根本的な人手不足問題の解決にはつながりません。一方でDを増やしても、業界のレベル向上にはつながりません。
人材の数も質も上げるには、Cの新卒エンジニアを増やしていくしかありません。今は余裕がなく苦肉の策でBの方法を取っている企業も多いでしょうが、こういった企業こそCの方法を取らなければ、業界の人手不足はより進行していき、今よりも苦しい状況に陥ってしまいます。
もちろん、AやBのような緊急度の高い分野の人材採用も重要ですので、採用方法のバランスを見直すことが必要です。しっかりとした分析をして的確なエンジニアの採用方法を選択しましょう。
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新卒外国人ITエンジニアを採用するメリットとデメリット
日本の人口が減少する中、外国人ITエンジニアの積極的な採用は必須です。とはいえ、外国人の、しかも新人を採用するとなると、企業への負担が大きくなることも確かです。
下記に主な外国人エンジニアの採用のメリットとデメリットをまとめました。
【メリット】
・外国人材を視野に入れることで採用候補者の母数が増える
・(外国の大学出身の場合)世界の技術を導入できる。
・将来的なオフショア開発や海外進出の助けになる
【デメリット】
・日本文化への適合が難しい
・日本語の能力が低い
・来日や生活に関するサポートが必要になる
どうしても文化的な面の問題解決や、サポートに力が必要となるため、外国人ITエンジニアの採用経験がない企業では敬遠されがちですが、こうした部分も適切な体制を整えることで簡単に乗り切ることができます。
例えば日本文化への適合でいえば、近年は日本の大学でITの勉強をする外国人も多くなり、日本の大学を出た新卒人材として外国人ITエンジニアを採用できるようになってきました。長く日本に住んでいる経験があれば、すでに日本の文化になじんでいることも多く、障壁は少なくなります。
日本語能力についても同様で、日本に住んでいた経験がある外国人であれば、一定の日本語力がある人材が多数です。外国在住の人材でも、N2、N3程度の日本語力を有している人材も増えています。システムエンジニアやプログラマーであれば、日本語力がビジネスレベルに達していなくても、コミュニケーションが多い職種ではないため大きな影響は出づらいでしょう。
また、来日や生活に関するサポートは、外国人専門の人材紹介会社などの協力を仰ぐことで緩和できます。そういった会社であれば採用した外国人エンジニアの母国語や文化に明るいスタッフがいる場合も多く、日本人では気が付けないような部分にもアドバイスしてもらえることがあるでしょう。慣れないうちはその道のプロに協力を依頼することをお勧めします。
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まとめ
ITエンジニア採用において、即戦力採用だけを続けていては、現状の人手不足は解決できません。外国人ITエンジニアも含めた新人採用も積極的に行い、バランスの良い採用活動を実施することが最重要です。
また、日本人や外国人といった考え方ではなく、優秀な人材を採用することを主軸とすることで、会社のレベルアップにもつながります。そのためには、求人の幅を広げ、国籍や人種に捉われない、世界レベルで公平な採用活動が必要となるでしょう。
監修 株式会社電広
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