エストニアってどんな国?なんで注目されている?
エストニア共和国は、ロシア、またバルト海を挟んでフィンランドと国境を面する、旧ソ連、バルト三国のひとつでEU加盟国でもあります。言語はエストニア語、通貨はユーロ、面積は45,230 km²で北海道の半分ほど、人口は132万人で、沖縄県民よりも少ない人数です。
このように小規模の国家ではありますが、その実態はIT先進国。スカイプを生み出した国でもあり、行政の電子化を進め、結婚・離婚・不動産取引以外のすべての行政手続きがオンラインで完結。セキュリティ対策も隣国ロシアによるサイバー攻撃に対応していることから徹底しており、ブロックチェーンの研究も盛んです。確定申告もオンラインででき、3日で還付金が振り込まれます。どの国よりもデジタル化を進めている国といえます。https://iotnews.jp/archives/140870
日本国内の企業経営者や投資家へのメリットもあります。それは法人登記を現地に行かず実施ことが出来るということです。
今回の記事では、エストニアにおける法人設立の方法やメリット、起業時の注意点や費用などをまとめます。
【約10分で会社設立が可能】
エストニアでの会社設立(法人設立)は、日本国内に居住していてもオンラインで行えます。最短10分程度で手続きが完了するため、巷では、SNSアカウントを作るような簡単さで行えると言われることもあります。
【どれくらいの日本企業がエストニアに法人を保有しているか】
そのため、日本企業によるエストニアでの法人登記も活発で、19年11月のデータでは243社が登記しています。
e-Residencyとは?
法人登記を行う際に利用するのが、「e-Residency」(イーレジデンシー)と呼ばれる電子居住プログラムです。イーレジデンシーは、エストニア政府が管理している電子プラットフォームで、政府発行のデジタルIDを取得すれば、国籍を問わず仮想のエストニア国民になることができます。そして、オンライン上で法人手続きや銀行口座開設も可能になるのです。
日本はこのイーレジデンシーの取得に前向きな国の一つで、2019年11月時点で3,000名弱に達しています。その中には、安倍晋三 前首相の名前もあります。
イーレジデンシーの総登録者は19年11月で62,000人、1位はフィンランドの約5,100人、以降ロシア、ウクライナ、ドイツ、イギリス、アメリカときて、日本はこの時点で7番手となっています。
イーレジデンシーへの登録はSNSアカウントと同じくらい簡潔に済ませることが出来ます。 【サイトURL】 https://e-resident.gov.ee/become-an-e-resident/
登録は上記サイトからオンラインで行います。英語ですが、グーグル翻訳の利用が可能です。申請してからカードが届くまで数ヶ月かかるとされていますので、動き出しは余裕を持って行うことをお勧めします。
エストニアへの登記は、現状で日本企業が最も簡単に行うことのできるEU市場への進出方法と言えます。
また、法人の登録や管理がすべてオンラインで行えることで、ヨーロッパに居住人員を移住させる必要がなくなります。日本国内からネットでヨーロッパに情報を発信したり、EC販売やITサービス提供を行うといったことが可能です。
そのため、2020年11月現在はほぼ渡航不可能なEU・ユーロ圏へ、オンラインで進出し、ビジネスを行えるという点が大きなメリットとなるでしょう。
一方で、イーレジデンシー経由で登記を行っても、移住を行うことはできません。移住を希望する場合は、別途、ビザ取得が必要になります。
また電子投票や公共交通の無料利用といった、自国民向けのサービスを受けることもできません。これらの利用には、現状では永住許可の取得が必要になります。日本とエストニア間で租税条約も結ばれており、タックスヘイブン的な使い方も不可能です。
登録に必要な費用の総額は日本円で16,000円程度です。
まず、イーレジデンシーのID取得に必要な登録料が100ユーロ、12,200円程度。クレジットカード(VISA・Master)で決済をするため、少額ですがカード手数料が発生します。
これに加えて、国内でイーレジデンシーカードを受け取る場合に東京・浜松町にあるピックアップセンターへ向かう必要があり、利用料が30ユーロ、3,600円程度かかります。
エストニア e-Residency Collection センター(ピックアップセンター) 東京都港区芝1-4-3 SANKI 芝金杉橋ビル 4F https://www.vfsglobal.com/estonia/japan/Japanese/contact-us.html#1
エストニアに法人設立するメリット
エストニア登記の何よりのメリットは、28カ国5億人のEUマーケットへ、10分ちょっとの時間と16,000円少々の費用という、僅かな投資で進出できてしまうということ。ヨーロッパ方面への進出を今後考える企業にとっては破格と言えます。
EU内のEC市場規模は12兆円と言われており、日本からエストニアを経由してヨーロッパに輸出やサービス提供を行うことで、ビジネスの拡大を行うことができます。
エストニアは納税システムも全て電子化されているため、税務署や銀行に赴く必要はありません。
また、登記してすぐにエストニアに対して住民税などの課税が発生するわけではありません。エストニアへ住民税の納付が義務付けられるのは居住者のみ。居住者となる条件は、「居住地(恒久的または主に居住地)がエストニアにある場合、または連続する12か月間に少なくとも183日間エストニアに居住している場合にのみ、エストニアの税務上の居住者と見なされます。」(https://www.emta.ee/eng/tax-residency)。
さらに法人を登記しても、ビジネスの中心が日本国内になる場合、原則として法人税の支払先は日本になります。二重課税、二重非課税を回避するためです。
また法人税は、利益の分配時に一律20%を課税されるという仕組みです。
日本法人の基本税率は23.4%なので、比較的安価な税率です。さらに内部留保をしている限りは課税されないので、資金に乏しいスタートアップや中小零細企業にも有効です。
このほか、消費税は20%、社会保険料(役員報酬と現地居住の従業員)は33%です。
ただし国際課税規則には複雑な面があるため、専門家にアドバイスを頼ることも忘れないようにしてください。
エストニアで会社設立(法人設立)するためのステップ(手順)と費用
ここからは、実際にエストニアへ法人を設立する流れを紹介します。
法人設立するにあたり、日本人がエストニア人と創設した「Set Go」(セットゴー、https://www.setgo.ee/)について触れます。
セットゴーはエストニアへの登記を代行するサービスで、現地法人が登録を義務付けられる「コンタクトパーソン」の代行、法人の住所にあたる「リーガルアドレス」の提供を行います。
登記までのステップは以下の通り。
①イーレジデンシーカードを取得する 先述のイーレジデンシー登録サイトより取得が可能です。
②セットゴーに登録 イーレジデンシーカードをカードリーダーに差し込み、IDを認識された後、イーレジデンシーカードのPINコードを入力してログインします。
③社名、屋号、事業内容(活動分野)、資本金、創業者や役員などを記入する 社名はアルファベット・リトアニア語文字・一部の記号が利用可能です。事業内容はリスト選択式。資本金は2,500ユーロ(約30万円)必要ですが、最長10年間の猶予期間があります。
④ペイパルで支払い セットゴーに対する費用をここで支払います。支払い方法ペイパルのため、クレジットカードまたはデビットカードの利用が可能です。
費用は、基本的なサポートとリーガルアドレス・コンタクトパーソンがついてくる「スタートアッププラン」が月35ユーロ(約4,300円)、法人口座開設や子会社設立、コンサルやビジネスマッチングまでサポートするプランが応相談となっています。
⑤定款と申請書の確認 確認画面が表示され、定款・申請書に署名をしてエストニア政府へ提出します。
以上が法人登記までの流れで、最短1営業日で完了します。 この後、IBAN(EUの口座番号の規格)に対応した銀行口座を開設して、本格的にビジネスをスタートすることができます。
他国での会社設立と比較しても非常に手軽に行えるため、新たに起業を考えている起業家の方にもエストニアでの起業はおすすめです。
エストニア登記に必要な物品はPCとイーレジデンシーカード、カード受け取り時にもらえるカードリーダーのみです。また事前に社名、事業内容や定款は定めておく必要があります。また法人登記費用の他、資本金も(猶予期間はありますが)準備する必要があります。
法人設立後、どのような仕事ができるのか?
これで、バーチャルながらもエストニア、ひいてはEU圏で事業展開を行えるようになります。日本からリモートでエストニア法人を運用する場合、どのような事例が考えられるでしょうか。
セットゴーで登記を行った場合、アプリのリリースに必要な「DUNS番号」の発行が登記とともに行われます。
また、行政が電子化されているため日本国内よりも手続きが完結で早く、法人税は売上を上げたタイミングではなく分配したタイミングで査定されます。
そのため、スピード感の求められるITサービス、とりわけスマートデバイス向けアプリのリリースを行うのに有利です。
エストニア発のユニコーン企業としては、以下のような会社があります。
スカイプ(2003年)国内外のユーザーと音声通話、ビデオ通話、テキストやファイルの送受信が可能なソフト。2020年現在マイクロソフト傘下。
ボルト(2013年)ドライバー50万人、利用者2500万人のライドシェアサービス。類似企業でウーバーがある。ウーバーと比べ運賃もドライバー手数料も安価。
プレイテック(1999年)オンラインカジノなどを提供するオンラインゲーム開発企業。
トランスファーワイズ(2011年)国際送金サービスを提供。国際送金処理をシンプル化し、銀行と比べ手数料を最大8分の1まで圧縮した。
「電子化でどこでも手続きができる」「売上に課税されず配当時に税査定される」こうしたメリットを最大限活かし、日本からEUで事業を展開する橋頭堡としてみてはいかがでしょうか。
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