東洋ビジネスエンジニアリング
プロダクト事業本部 コンサルティングサービス本部
デジタルソリューション推進部
副部長
鈴木 將路
新商品開発本部 商品開発本部
副本部長
関口 芳直
拠点の会計はブラックボックス化している
─お二方はこれまでに多くの企業の海外展開をサポートしてきた実績があります。海外に進出した企業が、拠点マネジメントで抱えがちな課題を教えてください。
鈴木:「タイムリーに拠点の会計を管理できない」ことです。多くの企業は、海外拠点の会計について現地の会計事務所などにアウトソーシングしています。ただ、現地にいる日本人駐在員は、会計のスペシャリストではないことが多く、アウトソーシング先からあがってきたものの「結果」を見ることしかできません。
また、日本本社からすると、もっと時間がかかります。現地の会計がどうなっているのか情報をとろうとしても、日本人駐在員に報告するように指示をして、駐在員が現地のアウトソーシング会社に「データを出してくれ」と依頼して、出てきたデータを駐在員がチェックして、ようやく本社に報告される──。そのころにはビジネスの状況が変わっていて、「意味のないデータになってしまった」などということも、ざらにあるんです。
関口:多くの現地拠点で使われている会計ソフトにも問題があります。たいていはローカルパッケージ。現地の方にとって非常に使いやすいメリットがあるもの、その国の言語や通貨、会計基準にしか対応していない。データを日本本社にわかるようにまとめるとなると、非常に時間がかかります。それもあって、日本本社からすると、なかなか現地の状況が見えてこない。ガバナンスが効きませんし、適切な指導をすることもできません。現地での会計はまさにブラックボックス化しているんです。
─ローカルパッケージがダメなら、グローバルスタンダードになっているようなERPを導入すればいいのでしょうか。
鈴木:いいえ。私たちも、海外拠点のマネジメントに課題をもつ企業に対し、ERPの導入支援を行いますが、その拠点の状況によってはERP導入だけではどうも解決しないことがわかってきました。というのも、現地にERPを入れたからといって、いままで会計や経理業務に携わっていない日本人駐在員の方が急に「会計がわかった!」とはなりませんよね。
一方で、現地採用のスタッフの方にERPを使ってもらったとしても、文化の違いから、結果のみを伝達して中身を報告してこないこともめずらしくない。結局、ほしい情報がスムーズにあがってこない状況は変わらない。これが大きな課題になっています。
会計基盤がコミュニケーションツールになる
―ローカルパッケージでもERPでもダメ。では、どうすれば課題を解決できるのでしょう。
関口:本質的には、多言語・多通貨・多基準に対応している会計基盤を導入することが解決策になります。ERPを導入すると、それなりに専門知識をもったスタッフが必要になります。一方、ローカルパッケージは、現地語・現地の会計および税務基準だけに対応している。どちらを使っても、日本本社・現地拠点・アウトソーシング先の会計事務所の3者のうち、誰かが「私たちのなじんだやり方ではない」となってしまう。
その点、多言語・多通貨・多基準に対応している会計基盤であれば、3者のいずれも、同じデータや同じ処理を、自分たちの言語・通貨・基準でみることができるので、コミュニケーションをはかれるのです。つまり、会計基盤がコミュニケーションツールになる。
鈴木:たとえば、当社が提供している『GLASIAOUS』。現地拠点の会計データやキャッシュフローなどの状況を日本本社がタイムリーに把握でき、明細摘要も機械翻訳できるので、日本本社から現地への確認作業が大きく削減できます。「本社からヒトを現地へ派遣しなくてすむようになった」という導入企業の声はよく聞きますね。これは、『GLASIAOUS』が本社と現地拠点のコミュニケーションを円滑にしているからこその効果といえます。
数ヵ月かかっていた明細摘要の確認が1秒で終了!
―なるほど。では、「多言語・多通貨・多基準に対応している会計基盤」を導入したことによって、「海外拠点の会計がブラックボックス化している」という課題を、解決した具体例をシェアしてください。
鈴木:大手自動車関連企業のラオス拠点の例をお話ししましょう。次の決算期からラオス事業が連結対象に入る予定なのに、本社が求める情報がアウトソーシング先からスムーズにあがってこない。そのうえ、日本本社にラオス語を解読できる人がいない。完全にお手上げの状況でした。そこで当社が提供しているクラウド型国際会計基盤『GLASIAOUS』を導入。すると、ラオスではラオス語で現地のアドバイザーを活用しながら『GLASIAOUS』で会計処理を行い、日本本社は『GLASIAOUS』を通してモニタリングする、という仕組みができあがりました。
これまでラオス語で記載された明細摘要の確認だけで数ヵ月かかっていたものが、『GLASIAOUS』導入後は1秒で完了。この仕組みができたおかげで、いまではなんの問題もなくラオス事業が連結対象に組み込まれています。そのうえ、拠点のモニタリングがタイムリーにできるようになったため、日本人駐在員は不要に。引き上げさせて、完全に現地化できたのです。
―人件費を削減し、完全現地化まで達成できた、と。
鈴木:ええ。もうひとつ、インドネシアに拠点をもつ企業の事例を紹介しましょう。現在は日本語を話せて会計のノウハウもある優秀な現地の女性スタッフと、ITの管理責任者がいて、まったく問題なく管理ができています。ただし、その女性スタッフに頼っている部分が非常に大きいので、彼女が退職してしまったら、業務が破たんしてしまう危険がありました。IT管理責任者はほかの拠点の面倒もみなければいけない立場で、インドネシア拠点だけに注力できないのです。
そこで『GLASIAOUS』を導入。「優秀な女性スタッフが退職してしまったら、後任を雇えるまでアウトソーシング会社に業務を依頼できる」という条件になっています。これで現地のスタッフの陣容にどんな変動があっても、つつがなく会計処理ができる仕組みをつくったのです。
―まさに、先手必勝ですね。
関口:はい。いわゆるリスクマネジメントです。人材をロックしようとするのではなく、仕組みで対応しようという話です。海外進出をはじめた当初は、日本人駐在員と現地スタッフの能力に依存せざるをえませんが、事業が軌道に乗り、ビジネスが大きくなってくると、属人的な要素を排して、仕組みで回るようにしなければいけないのです。
会計基盤と「それを使える人」をセットで提供する
―「多言語・多通貨・多基準に対応する会計基盤」は、いくつかあると聞いています。どんな基準で選んだらいいでしょう。
鈴木:その会計基盤を「使える人」がいるかどうかが大事です。せっかくいいパッケージを導入しても、使える人がいなければ意味がありませんから。その点、私たちはグローバル経営の専門家である会計事務所とタッグを組んで、アウトソーシング先と会計基盤をセットで提供しています。『GLASIAOUSコンソーシアム』という組織をつくっていて、業界を代表する会計事務所がもつ、多種多様な「知識」と「経験」を結集してお客さまを支援しています。現地に精通した会計事務所の支援を提供できるのは、大きな強みです。
また、クラウドサービスであることも選択基準になりえます。「現地で海賊版のソフトを使っていた現地担当者が辞めてしまった。ソフトはもう使えないうえに、過去のデータもすべて白紙に…」というケースもあります。クラウド上で管理できる『GLASIAOUS』であれば、グローバルに広がるどこの拠点でも使いたいときに使えて、なおかつ会計データも安全なところに保存されている。リスクを少なくしながら、セキュリティの向上に貢献できます。
―最後に、円滑な拠点マネジメントを実現し、海外ビジネスで成功したい企業の経営者・管理部門責任者にアドバイスをお願いします。
鈴木:海外拠点マネジメントではガバナンス面での不安を抱えている企業も多いと思います。『GLASIAOUS』は、修正した履歴や入力した担当者名がわかるので、ガバナンスをきかせやすく、不正の抑止力にもなります。また、これまで拠点ごとに個々に管理していたものが、すべて『GLASIAOUS』で管理できるので、「自社の海外事業全体がどうなっているか」を簡単に確認できるメリットもあります。
関口:「新しいパッケージに切り替えたいが、現地スタッフに新たな操作方法をおぼえさせるのは困難だ」と、導入に二の足を踏んでいる方がいるかもしれません。その点、『GLASIAOUS』は国や文化が異なっても誰でも感覚的に使えるデザインをめざしています。いままで現地パッケージを使っていた人が使っても、直感的に操作できて使いやすいと思います。ぜひ『GLASIAOUS』を通して、拠点の「見える化」をはかり、海外ビジネスを成功させてください。
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