「シンガポール人も仕事に対する向き合い方は日本人と同じ」-コロナ禍の海外赴任で感じたこととは -2/2 | シンガポール進出企業インタビューならヤッパン号


【海外の人材マネジメント特集】
「シンガポール人も仕事に対する向き合い方は日本人と同じ」-コロナ禍の海外赴任で感じたこととは -2/2

ENEOS Oil & Energy Asia Pte. Ltd. Managing Director 峰岸 実

【海外の人材マネジメント特集】
「シンガポール人も仕事に対する向き合い方は日本人と同じ」-コロナ禍の海外赴任で感じたこととは -2/2

2020年5月、新型コロナウイルス感染拡大真っ只中のシンガポールへ赴任した峰岸氏。ローカルスタッフのマネジメントにおいて注意しているポイント、現在のシンガポール人スタッフへの印象などについてお話しを聞いた。

▼峰岸さまは2006年にもシンガポールに赴任されていたと聞いています。

はい、私は2006年から2008年まで一度シンガポールに赴任していました。旧新日本石油時代の配属です。その後東京に戻り、次に中東のアブダビという都市の事務所に3年間おりました。それから再度東京を経て、去年から2回目のシンガポール配属となりました。ですので海外経験としてはシンガポール2回、中東1回となります。

アブダビでは、現地スタッフの中心はインド人でした。向こうでは中東の人が外国人を雇用する形式が一般的で、中東の人と一緒に働くというよりは、アジア人やインド人、パキスタン人と働くことが多かったです。

中東で働いている外国人労働者は、エリートや大手も含めて多様な人種が混在しています。そして会社を保有しているのが中東人であることが多いですね。

2020年5月に再度シンガポールへ着任した当初は、サーキットブレーカー(外出制限策)真っ只中。現地のスタッフとの距離を縮めることが非常に難しいタイミングでした。

6月に入るとサーキットブレーカーも終了し、外食時の人数制限がある中ではありましたが、全社員とランチやディナーミーティングを行い、互いを理解する機会を意識的に設けました。

シンガポール人は、仕事外での付き合いが少ないというイメージを持っていましたが、弊社のスタッフは非常に積極的でした。2か月間で15回ほどの会食を通し、ようやく全社員と直接話すことができました。現在の仕事の話だけでなく、プライベートの話、将来のキャリアの話などについても話を聞くことができ、スタッフとの心の距離を縮めることができたと感じています。

シンガポール人に対して、どのような印象をお持ちですか。

私のシンガポール人に対する印象は「仕事に対する向き合い方は日本人と同じ」ということです。

日本人の中でも、残業する人もいれば時間通り帰る人もいますし、1を聞いて10を知るという人から、与えられたタスクしかしないという多様性があるとして、シンガポール人もその範疇にあるという感覚です。

もちろん全員ではないですが、予想していた以上に、身を粉にして働く人がいるんだなと、個々のスタッフを見て驚くことがあります。

いい意味での発見ということでしょうか。

そうですね。かつてはシンガポール人は定時で帰るイメージを持っていましたが、現在は自身の業務を突き詰めて残業する人や、コロナ下ということもありますが家に持ち帰って遅くまで仕事をする人もいます。逆に私達から見てがっかりする人もいますが。

与えられた仕事を責任を持って進めていく真面目さなど、言語は違えど、日本人と大きく変わらない。そこは改めて思い直したところです。会社の中にも、ずっと居てほしいと思える人がかなりの数おりますから、日本人もうかうかしていられないですね。

 

ローカルスタッフの働くモチベーションを上げる工夫や取り組みはありますか。

最も意識しているのは、「日本人と現地スタッフが対等であること」です。日本人同士で固まって仕事をしたり、現地スタッフと日本人で人種による上下関係が生まれるような仕組みは作らないようにしています。

本社の日本人と話したりメールしたりするときだけは日本語になってしまいますが、社内の共通言語は英語ですから、仕事の際はテレコンやビデオカンファレンスも含め、ローカルスタッフが入る会議は当然英語です。

社内では、私の下にDMD(副社長)、GM(部長)といった役職はまだ日本人スタッフが担っていますが、課長レベルではローカルスタッフもでてきました

また部門によってはチーム制を敷いており、そのリーダーをローカルスタッフが担うケースもでてきていますそのような役職を担える点はモチベーションになっているのかもしれません。

課題はキャリアパスです。課長レベルまでは一定数ローカルスタッフを入れていますが、部長以上を現地化できるかはこれからの課題です。現状の事業内容では、どうしても日本本社との調整が業務の重要な部分を占めますので、グローバル化をどう進めていくか、ENEOSとしての全社的な対応が必要となると私は思っています。

▼勤怠管理のシステム「KING OF TIME」を導入された背景は何でしょう。

もともと勤怠管理はエクセルシートに各従業員が自己申告で記入して、上長が承認するという形をとっていました。

過少申告をしてしまう傾向にあったので、適正な労務管理を行うという観点からも指紋認証の仕組みをHUUBAP様にご提案いただきました。何時何分にオフィスに入室して、またいつ退勤したかという管理がしやすくなるのが導入の決め手でした。確か2019年の10月ごろ導入して、社内で本格運用を始めたのは11月くらいだったと思います。

   

導入されてから、どのような効果を感じられていますか。

管理者目線では、指紋認証で勤怠管理することで恣意的なものが入る余地がなくなりますから、きちんとオフィスに来て、指紋認証さえしてもらえれば良いという管理のしやすさという部分は大きく改善したかと思っています。

従来のエクセルでの運用において部門ごとにばらつきがあり、毎日全従業員分をチェックする部門長もいれば、1週間、1ヶ月にまとめてチェックするという部門長もいました。

そうするとどうしても、“あの日は何時から何時まで出勤したかわからない”という事態が発生し、エクセルにはとりあえず9時から5時半の勤務と記入してしまいます。各従業員において、そういった点も防ぐことができるため、King of Timeは労使双方に納得感のあるシステムではないかと思います。

▼最後に、会社としてのビジョンや、個人として展望はございますか。

思えば過去10年以上、合併も含め、日本においても、海外の各部門においても、ビジネスは拡大基調でした。

一方、今はコロナウイルスの影響、また2050年に温暖化ガス排出を実質ゼロを目指す政府の「カーボンニュートラル宣言」による脱炭素という動きもあり、転換期に差し掛かっています。

我々ENEOSとしても、「2040年に自社が排出するCO2をカーボンニュートラルにする」というビジョンで、水素などのクリーンエネルギーなど新しいビジネスを模索しています。

しかし、シンガポール拠点は従来の基盤事業と呼んでいる石油や潤滑油の事業が中心であり、現事業のみで継続的に成長できる時代はもう来ないだろうと予測しています。

そういった時代背景の中で、「アジアを代表するエネルギー・素材企業」「事業構造の変革による価値創造」「低炭素・循環型社会への貢献」を行っていくためにも、今はいかに維持し、生き残るかを重視しています。アジアは世界の中でも高い経済成長が見込まれるので、これを取り込み成長に繋げて行くことも可能と思います。そのためには、今はまず毎年毎年の利益をしっかりと積み重ねていくことを重視しています。

幸か不幸か、海外拠点のサイズはフレキシブルに動かせます。ローカルスタッフ比率を上げていくという選択肢がありますし、メンバーも50人を維持するというよりは、調子がよければ60名へ増員、悪ければ40名へ減員という体制をとることが可能なわけです。

今年から来年にかけては事業を安定させ、どれだけ会社を健全経営にもっていけるかという点に重点を置きたいと考えています。

  

  

日本でクラウド勤怠管理システム「キングオブタイム」を開発し、国内シェア トップクラスを獲得したメンバーが、その海外展開として東南アジアへ進出。徐々に人事管理が浸透してきている東南アジアでも勤怠管理システムや人事管理システムを提供し、ローカル企業のクライアントも多数。 

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