「シンガポール人も仕事に対する向き合い方は日本人と同じ」-コロナ禍の海外赴任で感じたこととは -1/2 | シンガポール進出企業インタビューならヤッパン号


【海外の人材マネジメント特集】
「シンガポール人も仕事に対する向き合い方は日本人と同じ」-コロナ禍の海外赴任で感じたこととは -1/2

ENEOS Oil & Energy Asia Pte. Ltd. Managing Director 峰岸 実

【海外の人材マネジメント特集】
「シンガポール人も仕事に対する向き合い方は日本人と同じ」-コロナ禍の海外赴任で感じたこととは -1/2

2020年5月、新型コロナウイルス感染拡大真っ只中のシンガポールへ赴任した峰岸氏。ローカルスタッフのマネジメントにおいて注意しているポイント、現在のシンガポール人スタッフへの印象などについてお話しを聞いた。

▼アジアにおける御社の事業内容をお聞かせください。

弊社は、大きく3つの事業をシンガポールで行っております。

一つは石油トレーディング事業です。日本で精製した石油の調達と販売を行っています。原油や軽油、重油などの石油製品の輸出入が中心です。

シンガポールはアジアにおける石油マーケットの中心で、日本の石油精製工場に向けた輸出入のほかに、弊社独自の売買も行っています。

2つ目は潤滑油事業を行っています。弊社が出資する形で、自動車潤滑油や工業潤滑油などを製造する、現地のブレンド製造会社を運営しています。また日本の潤滑油をシンガポールやマレーシアなど東南アジアのお客さまに販売しています。

3つ目が産業エネルギー事業です。個人のお客様向けの自動車のガソリン等とは異なる、船舶の燃料やジェット燃料産業などを「産業エネルギー」と呼んでおり、大口のお客さまに向けた船舶・ジェット燃料の販売や、販売支援を現地企業向けに行っております。

アジアに関してはシンガポールがメインとのことですが、そのほかに独自拠点などはお持ちですか。

ENEOSはここシンガポールの他、世界各地に拠点を持っておりますが、ENEOS Oil & Energy Asiaが管轄するのはシンガポール及び東南アジアが中心です。会社のルーツは日本石油時代の1980年に、シンガポールに現地法人を作ったところまで遡りまして、ENEOSが日本で合併を行っていく中で規模を拡大してきました。

シンガポールに拠点があった会社としては、2009年にジャパンエナジーと、また2017年には東燃ゼネラルと統合しました。そのなかで、それぞれの会社がやっていたことを集約し、また事業を拡大してきたことにより、会社のサイズは大きくなって参りました。

開設当初の日本石油時代は数名のオフィスでしたが、現在スタッフは52名おります。そのうち日本人の駐在が20名。そして現地シンガポーリアンやマレー系、中国系の社員が合計32名在籍しています。

 

新型コロナウイルスによる影響が去年の年明けから全世界的に出ていますが、御社のアジアビジネスにおける影響はいかがでしょうか。

コロナの影響で各地でロックダウンが起こり、油の需要が落ちたことで、トータルで見ると厳しく、今も影響が続いています。3つの部門でそれぞれ影響は異なっているのですが、アジア各国での需要が、石油製品であれ、潤滑油であれ、コロナによる経済の低迷により落ちました。

トレーディング事業の場合は例えば、日本等から仕入れたものを販売する際に、売買の差益が出れば儲かりますし、逆だと赤字になります。その際に規模と併せて、どれほどギャップがあるかという面も大きいので、良い時期も悪い時期もあったのですが、2020年通年で見るとやはり厳しい年でした。


ローカルスタッフが32名いらっしゃるとのことですが、トレーニングや研修などは行われていますか。

ローカルスタッフの育成や研修は大きく分けて、ENEOS本社として各地の現地子会社社員を集めて合同で行うものと、現地子会社が独自に行うもので分かれています。

前者についてはENEOS本社の人事部が主体的に行っている研修がありまして、これはアメリカもヨーロッパも中国も含め、将来マネージャー候補になるような社員が日本に1週間程度集まって、我が社の話やマネジメント教育を行う内容で、年に1度行うものです。

また、トレーディング部門や潤滑油部門などでは、各部門の現地スタッフが日本へ1週間ほど出張し、日本人の社員と一緒に仕事を行う形の研修制度もあります。

2020年度はこのご時世で、東京に向かわせることができず中止したのですが、3年ほど前から、毎年2名ほどを日本に送っていました。やはり東京本社の状況や、本社目線でどのような働きを求められているかが分かりますし、各拠点ごとの自分と立場が似通ったメンバーと触れ合うことで、モチベーションの向上にも繋がっていると思います。

ただ、やはりローカルスタッフが32名所属している中で毎年2名ずつ研修を行っていくため、皆にチャンスがあるわけではありません。いろいろな組み合わせの都合もあり、全社員に同一の研修機会を提供することに関しては難しさを感じています。

またシンガポールでは、外部の各種研修やセミナーも開かれていますので、本人や上長が価値があると感じたセミナーには適宜参加してもらっています。

また一般的な社内研修として、コンプライアンス関係ですとか、情報の取り扱い、情報漏えい等に関しては、総務部門がプレゼンをしたり、eラーニングを行ったりしています。

東京から全社に配信できるよう、日本人の社員が受講する研修の内容を英語に翻訳した資料がありますので、ローカルスタッフ向けに日本と同様の研修を実施しています。

▼ローカルスタッフの採用についてはどのように行っていますか。

人材採用を行う際は、いくつか契約しているエージェントがあり、そちら経由で探すことが多いです。

対象になる求職者が見つかった際は書類選考をして、現場を中心に面接を進めていきます。弊社の場合は、各部門のDMD(Deputy Managing Director)という統括する立場の人がこれを主導します。面接は、採用候補者の配属予定の部署の責任者がまず行い、その次にマネージャークラスというように進めています。

 

▼採用においては現場の意見が第一優先なんですね。

はい。逆に私が見ても、実際に一緒に仕事をするわけではないですし。それよりも現場で仕事をする人たちが、能力、個性、モチベーションや経歴などを鑑みて、一緒に仕事したい候補者かどうかを自分たちで確認をしてもらうという点を重要視しています。

日本本社の場合も中途採用はそのニーズがある部署が選んでいましたし、現場を中心に選考を行うというのは他社様でも同じではないでしょうか。

またアジアで採用を行っているとジョブホッピングの文化があると感じます。日本も徐々にジョブホッピングをしてキャリアを上げていくことが一般的になってきていると思いますが、シンガポールでは早い人は1年や2年で辞めてしまいます。

ただ、他社さんと比較したわけではないのですが、弊社はシンガポールにしては定着率が良いかもしれません。私が去年1年いて、退職したのは4名でした。そのうち2名は6年在籍、もう1名も5年ほど在籍していました。

我々としては会社に貢献してきた社員が退職された際に、そこをカバーしなくてはいけないのが大変ではあります。

40代になると大胆なチャレンジがしづらくなるため、後悔しないために30代までに転職を通じてキャリアアップを目指していくという傾向が強いとも感じています。

ただ、コロナという外部環境による変化もあるように感じます。2020年は景気が冷え込み、転職するには厳しい環境ではあったと思います。とは言えども弊社でも数名が退職したわけで、常に覚悟はしておかなくてはなりません。

  

⇒次ページ:コロナ禍での海外赴任。スタッフとの距離を縮めるために行ったこととは

  

日本でクラウド勤怠管理システム「キングオブタイム」を開発し、国内シェア トップクラスを獲得したメンバーが、その海外展開として東南アジアへ進出。徐々に人事管理が浸透してきている東南アジアでも勤怠管理システムや人事管理システムを提供し、ローカル企業のクライアントも多数。 

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