―HISさんといえば澤田社長の印象が強いですが、考え方やカルチャーなど社員の方々に浸透していることはございますか
組織も大きくなり、役員層でないと澤田がどういうことを考えて、どういう風にやろうとしているのか、何故うまくできたのか、何が成功メソッドなのかということを直接聞く事ができません。そのため、全世界のマネージャーを集めて、全体会議を年に1回行い、企業理念の確認やマネジメントの研修を行っています。
澤田がずっと言っているのは「明るく元気に楽しくやろう」という事です。シンプルな事ですが、非常に重要な事であると考えています。我々の業界は、台風や地震、戦争などが起こるとお客様がすぐにいなくなってしまう業界です。例えそういう状況に陥っても、モチベーションを下げるのではなく、「明るく元気に楽しくやろう」というポジティブシンキングを社員一人ひとりが持つことが大切だと思います。 ―シンガポールにおける人材マネジメントや社員教育について、苦労や現在取り組んでいることはございますか やはりシンガポールのジョブホッピングの文化には悩みます。特に若い世代に関しては、3-5年、短いスタッフだと1年で退職するパターンもあります。3-5年経つと、現状に不満があるわけではなく、キャリアアップとして別のことにチャレンジしたいといって辞めていく傾向があると感じます。 結果、中堅としてマネージャー職で活躍してほしいと思う年代が残らないという状況が生まれてしまいます。中途採用として管理職を採用するとなると、同じ業界でも会社ごとに風習や文化は違いますし、別の業界からだと細かなナレッジがないため、キャッチアップに1年以上かかってしまい事業スピードが遅くなる可能性が出てきます。 人材マネジメントという点においては、現在は評価システムの構築・整備に取り組んでいます。「目標を設定し、達成するとどういう評価が得られるのか」ということを明確化する作業です。目標は各個人で立てさせています。意見や文句を言ってきても、「君が立てた目標だよね」とコミュニケーションを取ることでより納得感と責任感を持たせるようにしています。 評価に対する意見はシンガポール人に留まらず、どこの国のメンバーからも声が上がります。自分の評価や給与を同僚と話すなど、日本人には考えられない事も起きます。なのでシンガポールでは「納得感のある評価を行う事」がとても重要で、その評価を行うためのシステム構築・整備を今プロジェクトとして取り組んでいます。評価は非常に難しい問題です。一度システムを決めても見直しを続けていかないといけないと考えています。 スタッフへの接客教育は、実践に基づきOJTで伝えています。接客する際のマインドセットや、旅行に対する知識等は伝えていますが、日本国内の接客ほど体系化はできていません。日本では39年やってきた経験・ノウハウがありますが、一歩海外に出ると状況は変わり、顧客対応も複雑化します。マクドナルドを代表とする飲食業のようにマニュアルに落としこんで教育していくというのは、旅行業においては一つの課題かも知れません。 (次ページへ続く) 次ページ > HISシンガポール ~人材マネジメントは日々のコミュニケーションから~(2/2)日本でクラウド勤怠管理システム「キングオブタイム」を開発し、国内シェア トップクラスを獲得したメンバーが、その海外展開として東南アジアへ進出。徐々に人事管理が浸透してきている東南アジアでも勤怠管理システムや人事管理システムを提供し、ローカル企業のクライアントも多数。 |