ケネディクスグループ
アセアンでもREITを運用し、多様な投資機会を提供する
―まず、御社の事業内容について、簡単にご紹介頂けますでしょうか?
ケネディクスグループの主な事業は、不動産ファンドの組成・運用です。日本のREIT、年金基金、生命保険会社、リース会社、海外投資家など、資金を運用したい方々に対して不動産へ投資する機会を提供することが弊社の役割です。
ただ、不動産というのは権利関係や遵法性など複雑な部分も多いため、問題ない物件の選定・取得から、運用による収益管理、最後の売却といった部分までを含め、不動産投資の専門家として一連のサービスを提供しています。
日本では、50以上のJ-REITが上場されていますが、そのうち5つのJ-REITにスポンサー参加。REITのプラットフォームで大きな基盤があることに加え、私募ファンドも50個以上運用していて、多様性に富む運用体制が特徴です。
―どのような経緯でアセアンへ展開を始めたのでしょうか?
もともとは、アメリカの不動産投資会社であるケネディ・ウィルソンの日本法人として1995年に設立された法人です。当初はケネディ・ウィルソン・ジャパンという社名でしたが、2002年に上場した後、最終的に親会社との資本関係もなくなったことから、2005年には社名をケネディクスと改めました。現在では日本最大の独立系不動産アセットマネジメント会社となり、グループ全体で総額2兆円ほどの不動産を運用しています。
独立系として日本最大ではありますが、投資対象となる不動産が日本に集中しているため、顧客投資家の幅広い投資ニーズに応えるべく、海外も含めて広い投資機会を提供できる体制を整える必要がありました。そこで2015年、経済成長著しいアセアンの事業拠点として、ケネディクス・アジアをシンガポールに設立しました。
―アセアンではどのような活動をしているのですか?
アセアンでの事業軸としては3種類あります。1つが、シンガポールやアジアの投資資金で日本の不動産に投資して頂くインバウンドビジネス。2つ目が、日本の投資資金でアセアン地域の不動産に投資して頂くアウトバウンドビジネス。そして3つ目が、アセアンならではの新しい事業です。
ただ、現状では日本国内の不動産投資に関わる競争が非常に厳しい状況なので、実際にはインバウンドビジネスよりも、2つ目のアウトバウンドビジネスや3つ目の新事業の獲得に注力しています。
―アセアンではこれまで、どの様な実績がありますか?
アセアンでの最初の案件はベトナムで、2015年12月にハノイ所在のV Towerというオフィスビルへ投資しています。
2件目が2016年10月にタイの不動産開発会社であるAIRA Propertyへ出資しました。現在AIRA PropertyはSpring Towerというオフィスビルを建設中で、将来的には開発物件を活用してタイでREITを作る予定です。
そして、昨年はマレーシアのAmanahRaya REIT(アマナラヤREIT)にスポンサーとして参画しました。2007年にマレーシアで上場したREITです。元々は政府系の信託会社が100%保有していたREIT運用会社の株式を、ケネディクスが49%取得することで、共同運用している状態です。
これまでの投資は自社資金のみで、顧客投資家からお預かりしている資金は投資していません。まずは弊社の自社資金でノウハウと実績を積んでから、日本の投資家の方々にもご紹介していきたいと思っています。
―日本企業がマレーシアのREITスポンサーになるのは初めてのケースと聞きますが、なぜREITスポンサーになれたのでしょうか?
2015年の海外展開はいいタイミングでした。実は2010~2011年ころも一度、アジアでREITスポンサーになる機会を模索していた時期があり、シンガポールなどのローカルパートナー候補を訪問していました。しかし、その頃は日本の不動産市場に元気がなく、逆にシンガポールや香港の不動産市場が活況な時期でした。そんな時代ですから、日本企業と組む必要が感じてもらえず、あまり実のある話はできませんでした。
2015年ころは、アベノミクスなどで日本の不動産投資市場が活気を取り戻し、J-REIT市場も活況になる中で、逆にシンガポールや香港の不動産市場が少しピーク・アウト気味になっていました。そのタイミングで、改めてアセアン展開を模索していたところ、マレーシアのアマナラヤが、REITのテコ入れを共同スポンサーとして一緒にやってくれるパートナーを探しているという噂を聞きつけ、話し合いの機会を頂けたのが始まりです。
―マレーシア側が御社に求めたものは何だったのでしょうか?
端的に言えば、マレーシアのREITをさらにグローバルな金融商品にするためのノウハウを求められています。
もともとマレーシアに限らず不動産はローカルの方々が購入することを前提で考えられていて、外資規制等もあり、海外の投資家が投資しづらい状況があります。その不動産をREITとして取引所に上場することで、取引の流動性や情報の透明性も改善されるため、海外の投資家からも投資してもらいやすくなるメリットがあります。海外の投資家が購入するようになれば、買い手が増えるのでREITの評価も上がり、資金調達が活発化することで、また新しく不動産を購入できる、という好循環を生むことができます。
ケネディクスでは、日本の事業において、シンガポール、アメリカ、ヨーロッパなどの投資家からもREITへの投資資金を集めてきたノウハウとネットワークがあったので、それを活かして一緒にREITを運用していきたいと考えています。
―東南アジアの不動産市場をどのように見ていらっしゃいますか?
シンガポールは日本と同様に成熟してきており、良くも悪くも安心かつ安定した市場です。弊社としては、日本の顧客投資家の方々に、よりユニークな投資機会を提案したいと考えており、特にグロースが期待できる投資機会のニーズが強いため、シンガポール以外でも積極的に投資機会を模索していきたいと考えています。
一方でミャンマーやカンボジアは、将来的に大きな成長が見込めそうですが、まだまだ法体制や投資インフラなどが整っていないので、不動産投資をするには不確定要素が多すぎるように感じます。成長性と安定性のバランスを考えた時に、ベトナム、フィリピン、インドネシア、タイ、マレーシアなどが、今後の注目エリアになるのではないでしょうか。
―今後のアジアでの展開の展望を教えてください。
我々のコア・ビジネスは、海外でも不動産アセットマネジメントです。顧客である投資家の方々に不動産の投資機会を提供していく仕事ですので、満足頂くためにも、より多くのユニークな投資機会を提供していくことが使命だと考えています。日本では独立系最大で、それなりの実績がありますが、今後は海外も含めて投資機会を提供できる体制を充実させたいと思っています。
そのために、これまで自社資金での投資を繰り返してきましたが、ノウハウも徐々に溜まってきているので、今年か来年中には、アセアンの不動産に投資する私募ファンドを投資家の方々の資金で組成できればと考えています。
不動産投資市場においても、成長著しいアジアの存在感は、これから大きくなっていくばかりだと思うので、アジアでの事業展開をより加速していきたいと思っています。
大和不動産鑑定様(監修企業)からのコメント シンガポールに来てみて思うのは、不動産の価格に値上がり期待がある東南アジアではかつての日本がそうだったように、現物の不動産に対する所有欲~持っていればなんとかなる~がまだしっかり生きていて、不動産をいかに金融商品にするか、と考え方はまだ成熟しておらず、ノウハウも浸透してません。こんな状況だからこそ、ケネディクス様の役割、日系不動産アセットマネジメント会社が東南アジアで活躍できるチャンスだと思っています。もちろんチャレンジングな面は多々ありますが、だからこそ面白い局面にいると考えています。 |
大和不動産鑑定 とは50年以上に渡り、法人に対して、不動産に関する情報やサービスを提供してきた総合不動産コンサルティングファーム。2017年よりシンガポールに法人を構え、本格的にアジア圏でのサポートを始めている。