―まずはじめに、御社の事業内容や実績を教えて頂けますか?
弊社は海外では、中国、タイ、シンガポール、インドネシア、ミャンマーの5か国に事業拠点があり、環境・リサイクル事業に取り組んでいます。環境・リサイクル事業とは具体的に、「廃棄物処理」「土壌の調査・浄化」「金属等の資源リサイクル」の3サービスが大きな柱で、これらに伴う環境物流や、コンサルティングサービスも各国で行っています。 DOWAグループはもともと鉱山事業から始まっていますが、その経験から環境への影響に配慮する事業を始めたのがDOWAエコシステムです。土壌調査は1990年代から、廃棄物処理・金属リサイクル工場の海外進出は2003年から進めています。―環境・リサイクル事業というのは、日本でのニーズは聞きますが、アジアでもニーズが有るのでしょうか?
はい、アジア各国の産業集積や経済発展が急速に進む中、海外における環境・リサイクルサービスのニーズは着実に高まってきていると感じています。特に、中国・タイでは既に土壌規制の導入が進んでいるほか、アジアの他の国でも、将来的には規制が導入されていくと予想さているます。例えまだ規制が導入されていない国でも、環境債務を抱え込むリスクを避けるため、汚染責任の範囲を明確にすることは重要です。―アジア各国での土壌汚染に関する法律はどの様な状況ですか?工場設立時など注意することはあるでしょうか?
環境保護に関する法律の整備は、一人当たりGDPの上昇と相関性があり、土壌汚染に関連する規制が導入される水準はおよそ1万ドル(名目)が目安です。現状で言えば、中国、タイ、マレーシアが該当します。規制の仕方としては、日本が自主対応型であるのに対し、海外では行政介入型がほとんどです。 日本の企業にとって影響がある点で言えば、例えば中国・タイでは、操業中の工場であっても、規制対象業種であれば、土壌・地下水調査の実施と、行政への報告義務を課す方向に進んでいます。そのため、これらの国々では、土壌・地下水汚染に関わる事業リスクが急速に高まってきています。 一方、規制がまだ整備されていない国々でも注意が必要です。土地取引に関わる土壌汚染問題に共通するのが、無過失責任(規制制定前の汚染や土地の所有者、使用者というだけで汚染原因者ではない場合など)や遡及責任(過去に汚染責任が遡る)であり、汚染された土地を購入・借用してしまえば、汚染原因者でなくとも環境債務を抱え込むリスクがあります。したがって、法律がない場合でも、リスク管理の観点で、ある程度の土壌調査を実施しておくべきです。―最後に、アジア市場での今後の展開や、ビジョンをお聞かせください。
アジアではこれまで、1,000件以上の土壌調査・対策を実施してきました。例えば最近、弊社のクライアントが、残念ながら最近撤退することになったのですが、その際に土壌汚染を疑われました。しかし、進出当時にも弊社が土壌調査を実施していてたため、撤退時と調査結果を比較することで、そのクライアントが汚染したわけではないことを証明できました。 今後も、アジア各国で各種環境規制、特に土壌汚染の法規制は一般化されていくと考えられるため、弊社の豊富な経験に基づく環境コンサルティングで、ご進出済み、ご進出予定の日本企業の方たちを支援できればと思っています。
大和不動産鑑定様(監修企業)からのコメント 確かに、アジア各国での不動産投資において、環境問題について意識が高いといえる状況ではないものの、かつて日本もそうだったように、土壌汚染の法規制は、始まれば急速に広がるものと思っている。そのときに、日本での実績はもちろん、各国での豊かなご経験を踏まえて、日本の法制度の違いを把握し、リスクを説明してくれるDOWAエコシステム株式会社の存在は非常にありがたい。僭越ながら、今回ご紹介できたことがきっかけで日系企業のアジアへの不動産投資に弾みがつけば、こんな嬉しいことはない。 |
大和不動産鑑定 とは50年以上に渡り、法人に対して、不動産に関する情報やサービスを提供してきた総合不動産コンサルティングファーム。2017年よりシンガポールに法人を構え、本格的にアジア圏でのサポートを始めている。