▶御社の海外における事業内容、従業員についてお話ください
弊社がタイに進出したのは2007年で、日系企業が数多く進出してきている中“日本品質の警備サービスを”という弊社のコンセプトの下、これまで実績を積んでまいりました。現在では、タイを含めたアジアに9つの関係会社があります。
弊社は、世界各国の在外公館等で警備立案などに携わる“警備対策官”を含め、海外における安全対策の一翼を担ってきた人材が多数在籍しており、私自身も、警備対策官として外務省に出向し、新規公館の警備に関する立ち上げや、赴任国の治安に関する情報収集等の仕事をした経験があり、その貴重な経験を、現在の仕事にも生かしています。
現在弊社従業員は800名を超え、その殆どが警備員です。警備の基本である、警備員を契約先の対象施設に配置し、昼夜警備にあたる「常駐警備」に加え、センサー等を設置して警備を行う「機械警備」が基本的なビジネスモデルであり、現在ではタイ国内のバンコクを中心としてアユタヤからラヨーンあたりまで、日系企業を中心に400箇所を超えるご契約先があります。
警備員を配置する“人的警備”と、センサー等による“機械警備”を併用して24時間体制で警備を提供できることが同業他社との差別化の一つとなっております。
警備員についてですが、タイにおいても2016年に制定された“警備業法”により、決められた時間数の教育を受けた者でなければ警備業務に従事できない、と定められています。また、教育には、認可された施設でトレーニングを受ける必要があるので、弊社独自で認可を受けた研修所を所有しています。教育内容についても定めがありますが、タイの警備業法は日本のものを参考にしてできているため、殆ど私たちが日本で培ってきた教育ノウハウを生かした研修を行うことが可能となっております。
日本人は現在、駐在員が5名、現地採用が6名で、私が担当する運用管理部門、営業や技術担当者等がおり、日本人ならではのきめ細かいサービス提供を心掛けております。
▶800名もの従業員の方々をどのようにマネジメントしているのですか。
まず真っ先に行っているのは、幹部層の教育です。現在、運用管理体制は、現地採用の日本人、その下にタイ人のスーパーバイザー、更にエリアを複数に分けて各エリアにエリアマネージャーを配置し、隊員の指導に当たるピラミッド構造の体制としています。
彼ら幹部を指導・教育することで、私からの指示も末端まで到達しやすくなり、反対に隊員からの報告も上がってきやすくなることで、風通しのよい円滑なマネジメントが現在可能となっています。
中でも大切にしていることは、すべての契約先へ同様のサービスを提供することであり、例えばある警備隊で起こった事案を速やかに別のすべての警備隊に伝達、展開して再発防止に努める、このような体制を現在構築しています。
▶現場の隊員に対して日本と全く同じ品質のサービスや研修を求めることはスムーズに受け入れられるのでしょうか。
文化や言葉の壁もあり、勿論軋轢もあります。
弊社の研修は、警備のことだけではなく、会社の取り組みや姿勢、規律なども学ぶ塾や禅寺のような感覚もあり、日本の研修所には、弊社の隊員だけでなく、外部より企業単位で研修に来られたりすることもあり、メディアに取り上げられることもしばしば。
この日本で行われている研修内容をタイでも実践していることから、タイ人たちが音をあげるほど厳しいものですが、”私たちが直接指導した”教育担当のタイ人スタッフがしっかり教えることで、隊員達も研修内容を受け入れやすくなっていると思います。
また、日本と同じ品質のサービスとして求められていることの一つに、情報共有のスピード感、があります。例えば、大小かかわらず、何かトラブルがあったら夜中でもいいから連絡する、という面においては、警備員全員にこの考えを浸透させることにかなりの時間を要しています。
当然のことながら、警備員は研修だけでノウハウがすべて身に付くわけではなく、さらに現場で覚えていかないと一人前にはなれません。それは日本でも同じでお客様のご要望は千差万別なので、配属先によって求められるものが違ってきます。警備サービスは特注品です。お客様と一緒に作っていくものですから、基本的なことを研修所で覚え、さらに現場で学び育っていく。その指導は一筋縄ではいきません。
ただ、やはり厳しさだけではとても続きません。メリハリをつけて、同時 にやる気とモチベーションをあげていくことにも苦労しています。警備員の離職率は他の職種と比較すると高いとも言われており、当社においても定着率の向上が課題の一つとなっています。
そんな中、最近導入した対策の一つが表彰制度です。身だしなみや勤務態度などを向上させるためのキャンペーンを実施し、その中で優秀者への表彰をすることでモチベーションにつなげています。金一封は勿論ですが、表彰状などもタイの方には非常に効果があると感じています。良い警備サービスを行った警備員に個人表彰を行うことで、モチベーションが上がった隊員は定着率も高くなる傾向にあります。
▶表彰制度の他、決まった評価制度はありますか。
個人評価だけでなく、お客様からの声や、発生した事故事案への対応から、警備隊を評価する場合もあります。これによって警備隊全員の団結力も高まり、先程の定着率向上や、様々な相乗効果を生み出しています。
また、エリアマネージャーについては管轄するエリアの複数の警備隊の評価を総合的に判断して評価しています。
▶高山様のご経歴を教えてください。
都内の支社に入社後、まず施設を守る常駐警備隊員として現場を経験し、その中で、今の時代、警備のプロとして機械警備についても学んでおかなければならない、との思いから、機械警備で現場に駆け付ける“機械警備隊員”への配置転換を希望し、数年間その任についておりました。
その後、冒頭で申し上げたとおり外務省へ出向し、警備対策官として在外公館勤務を3年ほど経験させていただきました。
さらに帰国後は、ALSOKの本社で再び常駐警備に関わる部署に配属され、全国3000隊で発生したトラブルの共有や、教育担当をしておりました。ここでの経験により、習得した運用管理者としての専門スキルを生かすべく2019年3月にタイに赴任し、現在に至っております。
▶勤怠管理についてはいかがでしょうか。
警備員の遅刻・欠勤等は解決すべき課題の一つとなっています。エリアマネージャー等の幹部隊員が、勤務開始前に各隊員の現在地を確認し、万が一遅刻するようなことがあれば、予備隊員を配置して配置漏れを防いだりしています。
▶最後に今後の展開をお聞かせください。
当然ながら業績を伸ばしていくことが企業人としての責務であるわけですが、まずはタイで警備運用品質ナンバーワンを目指したいと思っています。日本と同等、それ以上のサービスが提供できれば、自然と業績もついてくると思います。
そのために表彰制度をはじめとした、これからも様々な施策を行っていき、すべてのお客様に満足いただける警備サービスの提供に、今後も邁進していきたいと思います。
日本でクラウド勤怠管理システム「キングオブタイム」を開発し、国内シェア トップクラスを獲得したメンバーが、その海外展開として東南アジアへ進出。徐々に人事管理が浸透してきている東南アジアでも勤怠管理システムや人事管理システムを提供し、ローカル企業のクライアントも多数。 |