年度中途で帰国する場合には帰国日の1ヶ月前までに確定申告書を提出し、帰国前にその納税を完了する必要があります。申告にあたっては帰国月までのシンガポール払、日本払給与、及び現物給与の金額をあらかじめ確定させておく必要があります。
【解説】
年度中途で帰国する場合には、タックスクリアランスという期中確定申告を済ませてから出国することになります。
具体的にはIR21という申告書を原則として帰国日の1ヶ月前までに提出、帰国前に納税することになります。
一般的な帰国までの手続は以下の通りです。
但し、実際には事前に帰任通知が発行されず帰国が急に決まることも多くあり、実務上は1ヶ月前までに申告できない理由をIR21に記載して(チェックボックスに✓を入れて)出国前までに申告するケースもあります。
納税については、申告後に会社がシンガポール税務当局(IRAS)から通知を受け10日以内に駐在員に代わり納税します。
駐在員の個人所得税については会社が税金相当を負担するTax on Tax方式を採用しているケースが多く、実務上は給与から納税見込額を控除せず満額支給し、別途会社が税金を支払うケースも多く見受けられます。
なお、会社負担額は駐在員の給与に含まれますが、出国後に納付すると会社負担額はシンガポールだけでなく日本でも課税されますので、出国前までに納税を完了させることが検討されます。
課税所得の計算にあたっては、帰国月までのシンガポール払及び日本払給与の金額の他、現物給与(日本の社会保険料(一定要件を満たすと免税)、社宅またはホテル宿泊費、水道光熱費、社用車、会員権・会費、通勤費、一定の限度額を超える出張手当、一時帰国費用、子供の教育費、生命・傷害保険の会社負担分及びストックオプション等)の金額も確定させます。社宅については家屋の年次価値を月数案分することにより算定します。
また、NORスキームを適用する場合、日数及び所得金額の要件は帰国日までで判定します。
上記のタックスクリアランス手続の完了後、帰国までに就労ビザ(EP)のキャンセル手続を行いEPカードを人材開発省(MOM)へ返却、代わりに短期滞在ビザを取得して(キャンセル手続後即時に取得できます)当該短期滞在ビザ(紙で出力したもの)にて出国審査手続をすることになります。
なお、実務上は会計事務所等を通じて帰国後にEPキャンセル手続を行うことも可能です。