近年、日本企業のアジア諸国への進出が加速する中で、自社のリソースを主体とした進出ではなく、アジア企業を買収する「クロスボーダーM&A」というかたちでのアジア進出が増えてきています。
進出国の選定は、事業内容や自社の状況によって検討する必要があるため一概には言えないですが、クロスボーダーM&Aを活用するというポイントで言うと「成長性のある国」を選ぶことをおすすめします。クロスボーダーM&Aの最大のメリットは「時間を買う」ことです。ゼロから創り上げるのではなく、既に存在する企業のノウハウと実績を買う事により、素早く事業を軌道に載せビジネスチャンスを拡大することができます。そのため経済の動きが早く、成長性の高い国への進出の際は多くのメリットが有るでしょう。
中でもここ10年で経済規模を約3倍に伸ばしているフィリピンは、今後も安定的な成長が期待されているため、M&Aを活用して進出するメリットは大きいでしょう。2014年には人口1億人を突破し、その平均年齢は約23歳です。若く働き盛りの人材が多く経済成長を下支えしています。2020年には経済規模でタイと肩を並べると予測されているほど、アジアの中でも今後の成長性とそのスピードは注目されています。
今年6月には大統領にドゥテルテ氏が就任しました。現行経済政策の継続と教育改革などの方向性を示し、政治面から見ても、今後も安定成長が期待できます。また賛否両論ありますが、麻薬組織の取り締まりを強化し、フィリピン治安面での改革に力を入れている点、外資規制緩和の方向性を示した点は、日本企業にとってプラスに働く可能性があります。
また、進出後に現地でのマネジメントのしやすさも国選定には重要なポイントになります。その点、フィリピン人はフレンドリーで働き者というイメージに加え、英語スピーカーが多く、人口の80%がカトリックです。イスラム教国などに比べると、日本人にとって比較的理解しやすい文化で馴染みやすいでしょう。実際に労働闘争はここ10年で数件しか発生しておらず、経営側としては比較的事業運営をしやすい環境にある国です。