カンボジアにて駐在事務所、支店、現地法人を設立する手続きの中で、事務所所在地を確定させる必要があります。
したがって、現地法人、支店、駐在事務所の設立以前に賃貸借契約の締結を行い、管轄省庁(商業省、所轄税務署)にその写しを提出する必要があります。
法人設立前の契約に関して実務上は、次の方法が一般的に利用されています。
【1】将来的に設立される会社の「取締役の個人名」もしくは「支店、駐在事務所の代表者名」で契約を締結する方法
→ 現時点では商業省、所轄税務署への申請について、代表者名もしくは個人名で問題なく承認されています。
【2】「親会社名」で契約を締結する方法
→ 現在時点では、この方法でも商業省、所轄税務署での申請について、承認されています。現地法人もしくは駐在事務所、支店が設立された後、(2度手間になっていましますが)現地法人、支店、駐在事務所名で再締結するケースが多く、こちらの方法がもっとも一般的に利用されています。
【3】「将来的に設立される現地法人、支店、駐在事務所名」で契約を締結する方法
→ 本方法についても商業省、税務署での申請について、承認されております。契約時点では法人格が存在しない状態であっても、相手方(貸主)が承諾する限り、実務ベースでは登録可能です。
現地弁護士の見解では、商業省での商号調査が終了し法人商号名が確定していれば、法人格がない状態で契約してしまっても実務上問題ないという方もいます。
そうだとしても、法律上はどのように理解するのが望ましいでしょうか。
【法律上の取り扱いについて】
会社法139条では、会社設立前の契約行為について、以下の通り定めています。
まず、会社が成立される前に、会社名義もしくは会社を代理して、契約を締結した者は、個人として当該契約に拘束されるのが原則です(会社法139条第1項)。
会社は、契約締結後から合理的な期間内において、新設会社が設立される前に締結された契約書を採用することができます(同法139条第2項)。
その場合、契約締結時点から遡及的に契約当事者であるかのよ うに、契約に拘束されます(同法139条第3項)。
以上をまとめますと、カンボジア現地法人、支店、駐在事務所が設立される前であっても、当事者が契約の効果を現地法人等に帰属させる意思があれば、将来設立される法人名で契約することは可能だと考えられます。
他方、法人格が存在しない状態で契約をすることに対してリスクがあると考える方については、まずは個人もしくは親会社名で契約を締結すべきだと考えます。その際に、貸主に事情を説明の上、賃貸借契約書に「現在法人設立手続き中で、法人設立後は、新設立法人が賃貸借契約の当事者となることにお互い合意した」とする旨を記載するか、別に覚書を交わす形で契約を締結するとよいでしょう。
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