カンボジアへの進出企業の増加に伴い、知的財産権に関するお問い合せが増えています。
今回は、カンボジアの知的財産権に関する概要をお伝え致します。
1/カンボジア知的財産権に関する沿革
カンボジアは1995年に「世界知的所有権機関(World Intellectual Property Organization「WIPO」 )」に加盟し、それに伴い知的財産権保護に関する規定が整備されつつあります。1997年9月22日には商業省内に知的財産部(Intellectual Property Division)が設立され、知的財産権に関する政策や法制度の研究などが行われています。
2/カンボジア知的財産権に関する法制度
カンボジアの知的財産権保護に関する法律は以下のとおり規定されています。
・ 2002年「商標・商号・不正競争に関する法律」
・ 2003年「著作権に関する法律」
・ 2003年「特許、実用新案、工業に関するデザイン法」 など
その他、「企業秘密と秘密情報法」や「地理的表示法」など関連法令が整備中です。もっとも、カンボジアにおいて知的財産権は比較的新しい分野であり、今後、商標権を中心に本分野の発展が期待されています。今回は商標権に焦点をあてて、情報共有をさせて頂きます。
3/カンボジアの商標権について
カンボジアの商標権に関しては、「商標・商号・不正競争に関する法律(商標法)」の中に規定されています。同法は、カンボジアにおける初めての知的財産保護に関する法律となっています。
【商標登録について】
カンボジアは標章の国際登録に関するマドリッド協定に加盟していないので、国際商標出願および登録を行うことはできません。
したがって、カンボジアではカンボジア国内の商業省・知的財産部にて登録を行う必要があります(商標法3条)。商標登録に際して、登録言語は英語もしくはクメール語となり、またニース条約の国際分類に従って登録する必要があります(WIPOのサイト上で国際分類を確認することができます)。
出願に際しては、商業省での試験に合格した代理人が出願を行う必要があるので、注意が必要です。登録完了までには、実務上、約3ヶ月〜7ヶ月の期間を要します。
【商標の定義について】
商標の定義については、「事業者の商品またはサービスを識別することができる標章である」と規定されております。商標登録の範囲については、識別可能であれば、原則的に登録可能となっています。
ただし、例外として、識別性がない標章、公序良俗に反する標章、商品の産地と混同する標章、国旗もしくは国を示すエンブレムと同一もしくは類似する商標などは登録することができないと規定されています(4条)。
【商標の保護について】
商標の保護期間は、10年と定められており、商標登記から5年経過後の1年以内に、商標使用宣言書の提出が必要となります。
更新に関しては、更新費用を支払えば、10年毎に更新が認められています(12条)。
商標権の効力は、登録商標と同一もしくは類似の商標を独占的に使用することができることにあります(11条)。商標権者の承諾なくして、登録商標を使用することは商標権侵害となり(24条)、使用差し止め請求や損害賠償請求をすることが可能になっています。
以上となっております。
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