今回は、「不動産登記手続きに関する共同省令が施行」された事に関して言及させて頂きます。2013年7月29日より不動産登記手続きに関する共同省令(Inter-Ministerial Prakas concerning Real Rights Registration Procedure Pertaining to the Civil Code, Prakas No. 30)が施行されました。
1/共同省令(Prakas No. 30)の概要
2013年1月29日に不動産登記手続きに関する共同省令が一部施行されておりましたが、7月29日より完全施行となっております。起草、発令に際し約三年の期間を費やし、日本の法律専門家の方々の多大な協力によって施行に至っています。
本省令の目的および目標は、2011年に施行された新民法を基本として、適切かつ有効な不動産登記を行い、不動産登記の申請手続きについて明確化、透明化を図ることにあります。
2/不動産登記手続きの現状
新民法や不動産手続きに関する省令の運用に際しては、地籍管理所の担当者や現地弁護士などの専門家の対応が追い付いているかという点に疑問を感じます。
例えば、登記申請は対象不動産が所在する州(プロビンシャル)、地方(ディストリクト)、地区(カン)レベルでの地籍管理所で行われるはずですが、場合によっては、プノンペン本省での申請を要求されたり、全く別の地籍管理所での申請が要求されるケースがありました。
それ以外にも登記申請人や署名者の要件(カンボジア人に限られるのか等)が不明確であること、登記申請に必要となる書類が地籍管理所レベルで異なるなど(取締役会議事録や株主総会議事録が必要なのか等)の問題が発生しています。
3/不動産の登記確認の重要性
農業、製造業、物販やサービス業など全ての業種のビジネスにおいて、利用する不動産の権利がどのような状況にあるのか、契約の相手方が、本当にその不動産に関する権利を持っているのかを確認することが非常に重要となります。正確な情報を確認する方法は登記を閲覧すること以外にあり得ないかと思います。ビジネスを行う上で、対象不動産の登記や権利状態を確認せずに契約を締結するのはあまりにもリスクが高いといえます。
注意しなければならない事は、本省令はいわゆる初期登記がなされている不動産についてのみ適用されるという点です。初期登記とは、所有権(もしくは特別占有権)が登記され、その証として不動産占有権権利証書もしくは、不動産占有使用権権利証書が発行されている状態を意味します。
カンボジアでは不動産の初期登記が完了しているケースは非常に少ないのが現状です(カンボジア王国全土で約30%程度などと言われています)。すなわち、権利証書が発行されている不動産物件は少ない事を意味しています。
不動産取引の相手方が権利証の写しなどを提示してくれるケースは非常に稀であり、現状において登記情報の閲覧と確認にはかなりの労力と費用が必要になっています。本省令第6章においては、登記情報の閲覧および各種証明書発行手続きに関する規定が加えられており、本省令の施行に伴に、今後の改善が期待されます。
本省令の施行開始に伴う運用状況の変化については、弊社としても注視していきたいと思っております。今後、本省令の施行により変化し始める“不動産登記実務の現場”の状況を適宜お伝えさせて頂きます。
海外の不動産投資に詳しい専門家へのご質問がございましたら、下記よりお問合せが可能です。
→海外不動産投資特集ページ