さて、「Q1:カンボジア法(カンボジアの法律)の歴史について教えてください」の続きです。
今回は、カンボジア法の「法整備の現状」「法曹」「裁判制度」を説明させて頂きます。
3/法令整備の現状
カンボジアは2004年、貿易自由化を進めるためにWTOに加盟加入し、これを契機に、司法、法令制度の刷新が始まりました。同国政府は法整備にあたり、1975年以前のフランス民法と英米法の両者の理念を生かしつつ、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国の法制度との整合性をとることに注力しました。
新たに公布された法令としては、以下などが挙げられます。なお、徐々に法整備の状況が改善され、投資環境は改善されています。
「会社法(Law on Commercial Enterprises)」
「有価証券及び支払取引法(Law on Negotiable Instruments and Payment Transactions)」
「担保取引法(Secured Transactions Law)」
「破産法(Insolvency Law)」
「税関法(Customs Law)」
「標準法(Law on Standards)」
「外資規制法(Foreign Ownership Law)」
「収用法(Expropriation Law)」
「反汚職法(Anti-corruption Law)」
「マネーロンダリングとテロリストに対する金融に関する法律(Anti-Money Laundering and Combating the Financing of Terrorism)」
4/法曹に関する制度
カンボジアにて弁護士資格を取得するにはカンボジア弁護士協会での登録が必要となります。カンボジアでは無資格者が有料の法的助言をしたり、法廷代理人として弁論を行うことは禁止されています。なお、現在カンボジアにはわずか800名程度の弁護士しか存在せず、その数は極めて少ないということできます。
カンボジア進出に際しては、倫理観と実力を持ち合わせた信頼出来る弁護士を見つけることが非常に重要となります。後述しますが、カンボジアの裁判は予見性が低く、リスクを回避するためには、進出の際に徹底的に予防法務を実施することが成功の鍵になるかと思います。
5/裁判制度
現在のカンボジアの裁判所は、各地方にある複数の第一審法廷と、上訴裁判所1か所、最高裁判所1か所から構成されています。上訴法廷は、法律および事実を審理し、最高裁判所は、法律に関する問題のみを取り扱います。法令の合憲性を判断する機関として、憲法制定評議会(Constitutional Council)が設置されています。
商事訴訟の多くは、プノンペン市裁判所で裁判が行われています。下級裁判所は通常、民事、刑事、商事の紛争を区別なく、事件を取り扱っています。地方裁判所の判決に対し異議がある訴訟当事者は、上訴法廷に上訴を行い、上訴法廷は法律問題および事実認定について審理を行います。最高裁判所が再審を求めて上訴裁判所に案件を差し戻し、上訴裁判所の判決が最高法廷に再度上訴された場合を除いて、最高裁判所が事実確認を繰り返すのは極めて稀となっています。
カンボジアの司法制度は現在、判事やあらゆるレベルの職員の再教育を進めるなど、大幅な改革が行われています。判事や検察官、裁判所書記官、廷吏などの育成は、唯一、2002年に設立された王立裁判所専門家養成校(Royal School for the Court Profession)で行われています。少しずつではありますが、判事や検察官などの能力向上が図られ、適切な司法サービスが享受できるようになりつつあります。
以上が、カンボジア法(カンボジアの法律)の基礎情報となります。
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