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シンガポールに関するコラム

税制徹底解説!~シンガポールにおける移転価格文書~

 

TCGのノウハウツールWiki Investmentの中から、シンガポールにおける国際税務のポイントを公開します。

 

 

地域統括拠点として、財務上の管理をシンガポール拠点で行う上で、気を付けなければならない税務上の論点の一つが、移転価格です。

 

 

シンガポールではこの移転価格に対する対応として、比較的最近規則が導入されました。

今回は、シンガポールにおける移転価格文書の要求についてお伝えします。

 

移転価格文書の法的要求の開始

 

 

従来、シンガポール所得税法(ITA: Income Tax Act)には、移転価格税制に関する規定はありませんでした。

 

 

シンガポール所得税法33条および 53条 2A・3と、シンガポールと各国間で締結された租税条約の租税回避防止規定を根拠に、OECDガイドラインに沿って運用することで対処していました。

 

 

この移転価格ガイドラインには、独立企業間価格の原則(The Arm’s Length Principle)と文書保存義務(Documentation Requirement)、事前確認制度(APA)、相互協議(MAP)について 規定されています。
2009年に、独立企業間価格への準拠を要求する所得税法 34条Dを追加しています。

 

 

そこから2018年、当該財務年度(Year of Assessment 2019)より、所得税法ITAが改正され、同法第34条Fで、特定の企業には移転価格文書の作成が義務付けられるようになりました。

 

適用対象企業

 

 

移転価格文書作成が義務付けられるのは以下いずれかの条件に該当する企業です:
a.当該年度の交易等営業行為による収益(Gross revenue)がSGD10,000,000を超える
b.移転価格文書の作成が当該年度の前年度に求められた

 

 

なお、上記に該当しない企業についても、グループ間取引で営業利益を出し、シンガポールで納税する企業については、できる限り移転価格文書を作成することが推奨されています。

 

 

例外的に移転価格文書の作成が免除されるのは、下記サービス・カンパニーの場合に加え、シンガポール国内で行われ同一の税率で課税対象となる取引のみを行う場合や、親子ローンまたは純粋な仕入/売上のみの取引で金額がSGD15,000,000を超えない場合などです。

 

 

サービス・カンパニーの場合

 

 

同じ関係者間取引でも、グループ内の別の会社のために事務的な作業を提供するサービス・カンパニーについては、以下の2つの条件を満たしている場合は、移転価格文書の作成を免除されます:
・グループ内の会社のみを対象として、定期的にサービスを提供する
・サービス提供の費用の5%を利益として加え、提供先の会社から収益を得る

 

移転価格文書の内容

 

 

シンガポール税務当局IRASは移転価格について「Income Tax (Transfer Pricing Documentation) Rules 2018」というガイドラインを設けています:
https://sso.agc.gov.sg/SL/ITA1947-S93-2018?DocDate=20180222

 

 

そこで作成が義務付けられているのは、以下の書類です:
・納税者である企業に関し、シンガポールで行われる営業活動に関係するグループ間取引の全体像の説明
・納税者である企業が関係会社間で実行する営業活動、取引の説明(機能的分析、移転価格分析を含む)

 

移転価格文書の提出および保管

 

 

移転価格文書は、提出が求められる該当年度の法人所得税税務申告(Tax Return)までに作成することとされています。

 

 

実際には、税務申告の際に移転価格文書の提出が求められることはありません。

 

 

その後、税務当局IRASが提出を求めてきた場合、要求通知から30日以内に移転価格文書を提出する必要があります。

 

 

また、移転価格文書は提出が求められた該当年度から最低5年間保管される必要があります。

 

 

以上、シンガポールの移転価格文書についてお伝えします。

 

 

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