お世話になります、
Tokyo Consulting Firm Sdn Bhd の安孫子です。
海外の日系企業にとって、駐在員はなくてはならない存在であるかと思います。ただし、マレーシアにおいて、昨今は外国人雇用を制限する動きもあり、就労ビザの取得が厳しくなってきている状況にあります。
弊社へ最も多く問い合わせ頂くのも就労ビザに関連する内容ですので、今回は就労ビザについて記載します。
※今回はESDアカウントの取得、Projection登録について記載します。
【駐在員の雇用パスの取得】
外国人労働者の就労ビザはマレーシアでは雇用パス(EP:Employment Pass)と呼称されます。一部の業種を除く企業の雇用パスは入国管理局の外国人サービス部門(ESD:Expatriate Service Division)によって管理されています。
2014年4月より、企業ごとにオンライン上のアカウント(通称、ESDアカウント)を取得して、雇用パスの新規取得・更新ともオンライン上で手続きを進めるように変更されています。
申請の流れとしては、入国管理局の外国人サービス部門(ESD:Expatriate Service Division)に会社を登録し、登録完了後、申請者の就労ビザ申請をオンラインで行います。
1.ESDアカウントの取得
コンプライアンスに反することなく事業を運営していることをESDへ証明し、ESDアカウントの取得のための審査を受けます。
固定電話の請求書や法人口座の銀行明細を要求されるため、法人設立後より、短くとも申請までに3~4ヶ月ほどの準備期間を要します。提出が想定される資料は下記の通りです。
[必要資料]
・全ての取締役と雇用パス申請予定者のパスポートコピー
・会社事業案内
・直近3ヶ月の固定電話に係る請求書
・オフィス賃貸契約書
・Latest e-SSM Printout
・SSM Form 9 / Section 17
・SSM Form 24 / Section 14
・SSM Form 49 / 58
・直近の監査報告書 / 日本親会社の決算書
・地域管轄当局による営業許可証
・直近3ヶ月の法人口座明細
・事業ごとに必要とされるライセンス
・その他ESDによる審査に合わせて要求される追加資料
留意すべきは会社事業案内と事業ごとに必要とされるライセンスです。会社事業案内は英語で作成する必要があり、組織図や事業内容の詳細説明、商品・サービスの写真、オフィスの写真等を内容に組み込む必要があります。グループ法人で作成している全社共有の事業案内を使用することはできず、あくまでマレーシア法人単体の会社事業案内である必要があります。
ESDによる審査プロセスにおいて、会社の実態が見えにくいと判断された場合には、企業の取締役クラスがESD当局へ訪問し、企業の概要説明を求められることがあります。そのため、ESDへの訪問等をなるべく避けるためにも、事業案内はシンプルで明快なものを作成する必要があります。
また、事業ごとに必要とされるライセンスも、事業によっては取得ために非常に時間を要するライセンスもあるため、駐在員の赴任迄の時間を節約するためには、ライセンスの必要とされない事業想定で法人を設立する等の工夫が必要です。
2.Projection登録
ESDアカウント上で雇用パスの枠を確保します。実務上は1.のESDアカウントの取得申請と同じタイミングで登録することが求められます。原則的に駐在員として雇用パスを取得するには下記の条件を満たす必要があります。
・ 大卒以上で、かつ3年以上関連分野を経験していること
・ Diploma(短大卒業資格)保持者で、5年以上関連分野を経験していること
・ 職業訓練校の技術系証書などの取得者で、7年以上関連分野を経験していること
なお、企業のManaging Director(マレーシアにおいて、最も高い位置づけの役職)として雇用パスを申請する場合には、下記の条件が緩和される可能性があります。提出が想定される資料は下記の通りです。
[必要資料]
・職務定義書
・赴任予定者の履歴書
・赴任予定者の最終学歴証明書
・赴任予定者のマレーシア赴任に係る推薦書
・顧客 / 仕入先との業務契約書
・その他ESDによる審査に合わせて要求される追加資料
なかでも、マレーシア赴任に係る推薦書(Explanation Letter / Justification Letter)は最も重要な資料であり、赴任予定者がマレーシアにいかに貢献することが可能な人材かをアピールする必要があります。
以上、マレーシアのビジネス情報をお伝えします。次回は雇用パスの取得からエンドーズメントまで記載します。労務に関するお問い合わせはもちろん、会計や税務に関するお問い合わせも、お待ちしております。
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