ここ数年弊社で受けている定番の問合せが、Tallyと日本のシステムとのデータ連携です。
システムのデータ連携が求められる背景
データ連携に至る元々の要望は、日本本社や海外グループ企業において自社独自開発のシステムを使用されていて、インド子会社にもそのシステムを使ってもらい、同じ体裁のレポートで業績をチェックしたいというものです。
海外グループ拠点のシステム統一計画、あるいはM&A後のマネジメント統合などを背景に、このような要望が増えてきているようです。
しかしながら結論から述べますと、インドにおいて自社独自システム単独での業務運用はきわめて困難です。理由は以下の通りです。
・インドでは税制が実務と深く結びついており、帳票やマスターなどシステム実装に与える影響が大きい。
・日本本社のシステム人員がそれらを詳細に分析して、再設計、開発するのは人員面からもコスト面からもハードルが高い。
・システム構築後も、税制改正(期中に即時実行されることも!)を継続的にフォローする必要がある。
したがいまして、生産現場の管理限定で独自システムを用いることは可能でも、業績集計対象となる商取引を伴う機能範囲では、Tallyをはじめとしたインド仕様のソフトウエアに頼らざるを得ないでしょう。
インドで自社独自システムを単独運用できるのは、現地法人が非常に大規模で、日本から複数のシステム要員を常駐させることのできる組織に限られると思います。
インド現法から本社へのレポーティング方式
多くの日本企業では海外現地法人に対して月次での財務レポーティングを求めますが、その対応方法は概ね以下の3通りに分けられます。
1.現地での独自システム運用は行わず、Tally内のレポートを元にExcelまたは連結会計専用Webシステムで最低限必要なレポートをもらう。
2.レポーティング用の独自システムと実務用のTallyを共存させ、二重入力する。
3.Tallyのみを使用し、CSV等指定形式のデータを出力して独自システムに取り込む。(要カスタマイズ)
図で表現すると以下のイメージのようになります。わたしの見た範囲で最も多いケースは方式1です。
<イメージ:本社へのレポーティング方式>
それぞれの課題を挙げますと、方式1ではTallyから出力されたレポートをExcel上で編集したりコピーしたりする過程で非常に時間がかかること、あるいは転記ミスが多発するなどの問題を抱えています。
また方式2にしても同様の問題が発生し、別システムとの二重入力になるため、さらに多くの時間を必要とします。
その結果、現地会計担当者、データを受け取ってチェックする日本側の経理部門とも、月初のレポーティングに大きな負担をともなうことになります。
Tallyとのデータ連携における課題
そこで、方式3のデータ連携に取り組みことになりますが、システマティックにデータを取り込むうえで必ず持ち上がる課題が、基盤を統一することです。
具体的には以下のようなポイントを日本側と現地側ですり合わせてシステムを再構築し、運用を定着させなければなりません。
・勘定科目体系および科目コード
・インドでの現行運用に含まれていない付加情報 (事業セグメント、部門など)
・詳細な運用基準 (計上タイミング、特殊処理)
たとえば以前の第二回記事「インドの主要ERPソフト「Tally」の特徴と運用上の問題点」で述べたように、当初のTally運用において設定を会計担当任せにしていた結果、勘定科目がスパゲティ状態になっている場合、これを日本側科目体系との紐づけが可能なように再編成することになります。
現地システム再構築時の留意点
上記を踏まえつつ、Tally再構築を実行するにあたり気を付ける点は、統一作業を現地に任せきりにすると進捗が停滞しやすいということです。ご経験のあるかたもいらっしゃるかと思いますが、現地スタッフにフォーマットファイルを渡して説明をするだけでは、その後動き出せないのが実際だと思います。
かといって現地駐在員から指導するにも他の業務との兼ね合いで時間を捻出しにくく、また当人に管理系の知識バックグラウンドがなければ詳細に説明するのが難しいかもしれません。
このような場合においては、本社システム部や経理部が現地の状況に踏み込んで、課題と解決方法を把握し、現地業者へ詳細に作業依頼するのが、手間はかかっても最終的にはもっとも確実な進め方です。
とはいえ、IT大国と呼ばれるインドではあるもののTally業者は外国企業の相手に慣れているとはいいにくいため、言語の問題のみならず、仕事の仕方や知識基盤の違いから、コミュニケーションに相当な労力と忍耐力が求められるはずです。状況に応じて長期出張することも必要になります。
すでにご担当されているはお分かりでしょうが、そこまでしなければ状況を前へ進めることができません。
本社側の強い意志が問われるのがこのデータ連携なのです。
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山田 則光(やまだ のりみつ)
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