ベトナム進出後に起こる、人事制度のローカライズ化問題
ベトナム進出に際し、日本で使用している人事制度をそのまま翻訳し、ベトナム現地法人でも使っていませんか。ベトナムの人事制度設計に関する専門知識が十分でないために、「とりあえず本社の制度をそのまま翻訳して使おう」とするケースをよく目にします。
そしてベトナム進出後、往々にして、
・ベトナム語に翻訳しただけでは、表現が抽象的で伝わらない
・ベトナム人から見ると基準が曖昧
・ベトナムの労働市場に対比すると、昇給/昇格スピードが遅い
などの不具合に直面します。
ベトナム人社員にも納得感がある人事制度を構築するためには、何をどのようにローカライズしていけば良いのでしょうか。本記事では、ベトナムに進出する多くの日系企業様からご相談いただく、「ベトナムの人事制度」についてポイントを解説します。
ベトナム法人では「説明責任」を果たさなければならない
日本法人とベトナム法人の大きな違いとして、社員の人事考課結果や処遇内容に関する情報交換が、ベトナム人社員の間で頻繁に行われている実態があります。従って、情報を比較検証した社員から、その妥当性を問われる事となり、説明責任を果たす制度を構築する必要が出てきます。
ベトナム法人で実施すべき具体的な事例は、主に以下4点です。
(1) 人事考課項目の定量化
(2) すでに社内で“市民権”があるデータを人事考課に連動
(3) 昇給や賞与ロジックの明確化
(4) 昇格要件の明確化(一部、定量化を含む)
(1)のように人事考課項目を定量化すれば、結果に対する上司の恣意性が働く余地は少なくなります。また、(2)の“市民権”を得ているデータ、即ち、社員が一定の納得感を持ってる記録等を考課に連動させると良いでしょう。定例的なKPIレポート、PDCAレポート、社内表彰の記録、スキルマップによるスキル評価の記録などがこれにあたります。昇給・賞与のロジックとして、計算式やテーブルを用意しておく必要もあるでしょう。
ベトナム進出後、こうした課題及び対策が必要な旨を留意しておいてください。
ベトナム労働市場の相場観を反映する
元より人事制度の骨子自体は、そこまで多様性がありません。しかし、ベトナムでのレート設定や、ベトナムの労働市場における「標準者」をどう捉えてモデルを設定するかで、人事制度の競争力は劇的に変わります。
そのため、骨子がいくら素晴らしいものでも、設定を誤れば下記のようなケースに至ります。
・レート設定に失敗して競争力を欠いた結果に苦しんでいる
・短期的な競争力だけでレート設定をし、勤続が長くなるに応じて、相場を遥かに超過した賃金水準に陥っている
相場観を見ながらの賃金管理が、いかに重要であるかが分かりますね。ベトナム進出にあたり、ベトナムの労働市場を理解することは、長期的な法人運営に欠かせません。
ベトナム労働市場で検証すべき8つの項目
では、相場観を反映するための具体的な方法をお伝えします。以下のような視点で、自社水準とベトナムの労働市場水準を比較検証し、その市場で実現したいポジショニングを射抜けているかどうかをチェックします。
(1) 役職や職種毎の給与水準
(2) 手当の種類や手当額の水準
(3) 昇給額/率の水準
(4) ベースアップ額/率の水準
(5) 賞与カ月数の水準
(6) 標準的な昇格スピードの水準
(7) 福利厚生プログラムの水準
(8) その他、トータル報酬設計に影響を与えうる項目など
なお、弊社ではベトナムの在日系企業を対象に、給与・昇給率・福利厚生等に対する調査報告書を販売しています。ベトナム進出にあたり、こうしたデータ活用による検証もおすすめします。
※本記事はiconicJobの投稿をもとに作成しています。
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