前回に引き続き、人事評価制度構築の進め方について話を深めてまいります。前回は評価の構成要素と、それぞれの要素ごとのスコア配分についてお話しました。では、一旦「ベトナム法人としては社員の何を評価したい」という評価の構成要素を確定させた後に、さらに各構成要素を評価項目に細かく落とし込むには、どうしたら良いのでしょうか。
今回は特に業績評価項目に焦点をあて、具体的な評価項目の立て方を考えてみます。前回同様、ベトナム進出にあたり人事制度構築の基礎を学びたい方にも有効です。
業績指標が定量的に量れる職種
期初にKPI(Key Performance Indicator:主要業績指標)を設定し、これに対する期末の達成度を数量的に把握し、評価者による私情の介在なく評点を自動計算するスタイルが一般的です。
売上目標達成率、新規顧客開拓数、品質管理指標達成率などはイメージし易い例です。ベトナム法人でもすでに活用中のKPIがあれば、それを人事評価項目として流用すれば良いですね。もし「これかKPIを設定したいが、まだない」という状況であれば、ベトナムに進出している外資系やローカルの競合他社で、どのようなKPIを設定しているのかをベンチマークするのが最も効率的かつ現実的です。
業績が定量的に図りにくい職種
一方で、ベトナムに進出する多くの企業様が業績評価項目の設定で悩みやすいのは、バックオフィス系職種などです。設定時に意識したい方針は大きく2つあります。
1.MBO(Management by Objective:目標管理)制度
評価期間中に達成すべき業務目標(必ずしも「業績」目標でなくてもよい)をベトナム人社員に設定させ、「いつまでに」「何を」「どこまでやるか」を明記させます。その業務目標の達成状況を、業績評価指標になぞらえて採点する方法です。
【メリット】業績貢献の度合いを定量的に測りにくいような職種であっても、例えば「第2四半期末までに●●業務マニュアルへの社長承認を得て、社内展開する」などというように、ある程度職種の汎用性がきくこと。
【デメリット】ベトナム人社員それぞれの業務目標の設定スキルの高低、またはレビュアーである上司の目標設定レビュースキルの高低によっては、制度自体が形骸化(既に日常的に問題なくこなせているような平易な目標しか設定しない、達成・未達成の判断ができない目標設定になっている等)してしまうこと。
2.業績評価項目は設定せず、その他の評価構成要素にスコア配分を全て振る方法
業績評価指標の設定が難しい職種であれば、こちらの方が適切です。
【メリット】末端層のベトナム人社員に、「まずは求められる最低限の職能の体得に向けて、業務に励んで欲しい」と期待する場合でも、一律にMBOを設定させる必要は必ずしもなく、能力・行動評価項目で細かく職能の成熟度合いを評価できること。
【デメリット】定量的に評価できる業績評価項目に比べて、能力・行動評価項目は定性的な項目であることが多いため、評価基準の客観性が担保されにくい、私情や主観に流されやすいこと。
評価の公平性を担保する上でも、定性項目に対しては、「Excellent-Good-Average-Poor-Very Poor」といったような抽象的な表現に留めるのではなく、より具体的な指標を伴う評価基準書を整備しておくことが重要になります。
なお、弊社ではベトナムの人事制度設計に関するサービスを提供しています。基幹の⼈事制度である等級制度、評価制度、報酬制度の設計についてアドバイス等をお求めの方は、一度ご相談ください。
※本記事はiconicJobの投稿をもとに作成しています。
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