香港の労働人口流出と優遇プログラム | 日本企業の海外進出支援サイト ヤッパン号


香港に関するコラム

香港の労働人口流出と優遇プログラム

H.S. Planning (HK) Limitedでは、香港でのビジネスや生活に役立つ情報を毎月コラムとして提供しています。なお、当社は香港に拠点を置き、香港・中国・アジア進出を目指す日系企業様に対して、現地法人設立、会計・税務、監査取次、人事労務アドバイス、駐在者の生活相談までワンストップで支援をさせて頂いております。何かお困りごとがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。

香港では新型コロナウイルス感染症の防疫措置が11月3日から更に緩和され、飲食店などの営業時間、店内飲食の制限時間が解除されます。さらにバー、パブ、ナイトクラブを含む飲食店、娯楽施設、スポーツ施設、宗教施設、ホテル、会議・展示場などで行われる結婚式などの活動等で、記念撮影をする際にはマスクを外すことも許されます。現在の香港の新型コロナウイルス関連の措置は、香港に到着後3日間を自己観察期間とする隔離措置「0+3」、そして飲食店でのテーブルの人数制限、マスク着用義務、陽性者の強制隔離、学校等へ通学する際の検査が引き続き義務づけられています。すでに海外では水際対策や新型コロナウイルス関連の防疫措置を完全撤廃している国も多く、香港として規制緩和が進んでいるのは明るい兆しですが、諸外国のような完全撤廃への動きはまだ見通しが立っていません。

香港行政長官は10月19日、立法会で就任後初の施政方針演説を行いました。そして懸念されている香港の深刻な労働人口の流出について触れ、「香港の人材を積極的に育成・確保するだけでなく、海外の人材誘致にも積極的に取り組む」と方針を明らかにし、海外から優秀な人材を積極的に香港に呼び込みたいと述べました。

香港では新型コロナウイルスに関わる各種規制や、ここ数年の政治的な変化など様々な要因から労働人口の流出が深刻となっています。演説では香港の労働人口が過去2年間で約14万人も減ったことも発表されました。行政長官は香港の人材を育成し積極的に確保するだけではなく、海外の優秀人材の誘致にも積極的に取り組みたいと考えを述べました。同時に国際金融センターとしての競争力を強化するという意向も示しました。新型コロナウイルス関連の各種規制が続いている香港から、シンガポールなど規制を完全撤廃した国に移転した外国企業は少なくなく、そのような動きからも香港の労働人口は必然的に減少傾向にあります。外国籍の労働者による香港の新規ビザ申請件数も過去4年間で3分の2も減少しており数字で見ても外国籍労働者の香港離れは顕著と言わざるを得ないでしょう。

こういった背景を踏まえ労働人口流出の対策として、香港政府は次のような計画を発表しました。

●次の条件に当てはまる外国人を対象に2年間の新たなビザが発給する。
・年収250万香港ドル以上の個人
・世界の上位100大学を卒業し3年以上の実務経験を持つ人(上限なし)
・世界の上位100大学を卒業し3年以上の実務経験を持たない人(年間1万人を上限)

●非永住者が香港で住宅を購入し、7年間居住した後に永住権を取得した場合、不動産の購入時に支払った印紙税の追加分15%について還付申請ができる制度を整える。

●中国本土や海外の計17か所の海外経済貿易オフィスに、優秀人材の確保に当たる専門チームを設置する。

●「重点企業誘致辯公室」を設置、生命健康科学技術、人工知能(AI)とデータサイエンス、フィンテック、新エネルギーなどの戦略的産業を誘致する。今後5年間でポテンシャルの高い100社を誘致する。

●より多くの人材と企業を香港に誘致して発展させるため「香港投資管理有限公司」を設立、「未来基金」の下に設立された「香港成長ポートフォリオ」「大湾区投資基金」「戦略的イノベーション科学技術基金」と、新たに「未来基金」から300億香港ドルで設立する「共同投資基金」の管理を統括する。これによって香港へ進出を考えている企業を資金面でサポート、誘致する。

香港政府は海外の優秀人材の確保に積極的な姿勢を示していますが、やはり世論的には目標の実現に向け新型コロナウイルス関連の規制の完全撤廃が最重要という見方が強く、今後の更なる規制緩和、完全撤廃への動きが注目されます。

また、労働人口の流出に関連した注目すべき動きとして、香港の失業率の改善と賃金アップ、最低賃金の引き上げも挙げられます。

香港の失業率は改善の傾向にあり10月20日の香港政府統計局による2022年7月~9月の失業率は3.9%で、その前の2022年6月~8月の4.1%から0.2%改善したと発表されました。5ヶ月連続の改善となり8期ぶりに失業率が4%を下回りました。失業者数は155,300人で前回の161,900人から6,600人減少しています。

そして香港人力資源管理学会によると今年の平均月給は去年よりも3.5%アップしており、多くの企業で昇給が実施されました。特に賃金上昇率が高い分野はマルチメディア、IT、通信業界で平均9.8%アップしています。これも背景には労働人口の流出、つまり頭脳流出による影響が表れています。

さらに最低賃金の引き上げも行われる予定です。現在香港の最低賃は時給37.5香港ドルですが、今後は時給40香港ドルへ引き上げる方向で政府に提案がされます。賃金引き上げ率は6.7%で政府の承認により早ければ2023年5月から適用される見込みです。

香港から海外への移住者の増加や、労働人口の流出など現時点では香港からの人口流出が目立っていますが、今回の優遇プログラムがスムーズに実現すれば人口流出に歯止めがかかり、海外から香港に優秀な人材がより集まりやすくなるかもしれませんね。

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