香港映画『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』と現代の香港社会:豊かさと貧困の対比 | 日本企業の海外進出支援サイト ヤッパン号


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香港映画『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』と現代の香港社会:豊かさと貧困の対比

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2024年5月に公開された香港歴代No.1ヒット映画「九龍城寨之圍城」は日本でも2025年1月に公開が決定し、邦題は「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」となりました。この映画はサモ・ハン・キンポ―(洪金寶)、ルイス・クー(古天樂)、リッチー・レン(任賢齊)など実力派の豪華キャストが集結した渾身の一作です。舞台となる九龍城寨は1993年に取り壊された無法地帯の巨大スラム街で、1994年に完全に撤去されてから今年で30年になります。日本語では「九龍城」「九龍城砦」と呼ばれ、日本でも映画や小説、漫画、ゲームなどの舞台として取り上げられるほど日本人にも今なおファンが多い伝説の場所です。1800年半ばから1994年まで香港に存在していた九龍城砦は、中国本土からの難民が流れ込み、無法地帯という特殊な土地柄から貧困層の生活基盤となりました。衛生面や老朽化により香港返還を目前に取り壊しが決定してからは、惜しまれつつも完全撤去されました。映画の大半が精巧に再現された九龍城寨のセットの中で撮影されたので、香港でも多くの若者たちはこの映画で初めてその中の様子を鮮明に目にしたことでしょう。

そして現在、その忠実に再現された実物大レプリカのセットが香港国際空港ターミナル1の到着ホールAに設置されています。自由に写真を撮ることができるのでインスタ映えスポットとして話題になっています。2024年10月7日(月)から11月20日(水)まで香港国際空港に設置され、その後は啓徳にあるAIRSIDEに移される予定です。このセットは映画全体の製作費用の6分1に相当する5,000万香港ドルで作られたということで、今は無き九龍城砦をリアルに体感できるでしょう。

さて、香港返還を経てなお著しい経済成長を見せた香港ですが、現在は人口の12人に1人がお金持ちと言われています。このほど世界的な長者番付とも言える「世界ビリオネア指数トップ500」が発表され、香港からは15人がランクイン、トップ100には長江実業グループ創設者の李家誠をはじめ4人がランクインしました。

その一方で香港の貧困層を支援する団体Oxfam(オックスファム)が「2024年の香港の貧困に関する報告書」を発表し香港で話題になっています。2024年の香港の貧困に関する報告書によると、香港ではコロナ禍以降に貧富の差がさらに拡大し、人口約750万人のうち貧困状態となっている人は現在139万人以上にのぼるということです。香港の全世帯数の10%にあたる最も貧困といわれる層の世帯月収は中央値が1,600香港ドル、最も裕福な10%の世帯月収の中央値が131,100香港ドルで、その格差は81.9倍となりました。貧困世帯数は香港全体の20.2%を占めており、65歳以上で区切った最貧困層は58万人です。経済的に豊かなイメージの香港ですが実際は貧富の差が大きく、両極端な社会を形成しています。

大都市に特有のホームレスは香港にも存在します。一般的に街で目にする、いわゆる路上生活者は高架下、歩道橋、ビルの裏などで暮らしています。ホームレスは特に老人が多く、中には女性も少なくありません。昼間は路上で通行人に頭を下げ、空き缶を置いて「物乞い」をしている人が多く、道行く人は小銭や食べ物を置いていきます。日本のホームレスで物乞いをする人はあまりいませんが、香港に限らず日本以外の国ではよく見られる光景です。

そういった路上生活者とは別に、普段見かけることのない貧困層で「ベッドスペース宿泊者」という人たちがいます。彼らが住むベッドスペースというのは、かつて単身の低賃金労働者の寮として作られた安価な賃貸住宅で、動物を入れるような網のケージで作られた住まいのことです。その形から別名ケージハウス、棺桶ハウスとも呼ばれています。一人分の広さは畳1畳あるかないか、高さは半身を起こしても頭がつかないものの立ち上がるほどの高さはありません。施設内の設備は全てそこの住人と共用です。非常に安価ですが、家賃は住人たちの月収の約4割を占めるため、彼らにとって負担は大きいといえます。

政府や民間団体はホームレス問題を人権問題として取り上げ、実態調査や公的な支援に取り組んできました。住居や再雇用などホームレスを支援する公的扶助は徐々に進んでいるものの、移り変わりの激しい競争社会の香港だけに一筋縄ではいかないようです。香港の住宅は高騰し続けるため、格安アパートですら間仕切りして単価を下げて貸し出しています。低賃金労働者は手に職が無く、学歴にも乏しいため再雇用先が見つかっても賃金は低く、低所得層から抜け出せないでいます。

さらに香港では老朽化した建物を取り壊して新しい商業施設やマンションを建てる再開発があちこちで行われています。その一方、追い出されてしまい行き場を失った人々もいました。2021年の香港映画「濁水漂流」(邦題:香港の流れ者たち)は実際に起きたホームレス荷物強制撤去事件を元にした作品で、再開発の陰で追いやられるホームレス排除問題に焦点を当てた作品です。貧困の他に移民、薬物など香港が抱える社会問題について取り上げられていますので、映画を通して香港の華やかな一面とは違ったもう一つの顔を理解することができるでしょう。

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