近年の香港の物価の上昇について | 日本企業の海外進出支援サイト ヤッパン号


香港に関するコラム

近年の香港の物価の上昇について

6月27日(日)の早朝、屯門(Tuen Mun)から烏渓沙(Wu Kai Sha)を結ぶ「屯馬線(Tuen Ma Line)」が全線開通しました。屯門~烏溪沙間は全長約56kmでMTRの路線では最長となり、片道の所要時間は73分、料金は大人HKD23.5です。この路線には全27駅があり、そのうち6駅で他のMTR路線との乗り換えが可能です。新設された駅は宋皇臺(Sung Wong Toi)駅、土瓜湾(To Kwa Wan)駅の4駅です。宋皇台駅は建設中に宋王朝時代の遺跡が発掘されたことから、駅には考古学的なデザインが取り入れられています。また、これまでMTR駅がなかった宋皇臺駅、土瓜湾駅周辺では地価が上昇しており、下町風情のあった街も今後は街の風景が変わっていきそうです。MTR屯馬線は、路線を少しずつ増設し繋げていく長期に渡るプロジェクトで、これまで馬鞍山線として利用されていた烏溪沙駅~大圍駅に、昨年大圍駅~啟德駅が先行して完成しました。続いて今回、啟德駅~紅磡駅が繋がったことで、既存の西鐵線である紅磡~屯門線とも繋がり、屯門~烏溪沙間が全線開通となりました。香港の交通網がより充実し、さらに便利になりそうです。また次は、紅磡駅~香港島の金鐘駅を繋ぐ海底路線の工事が進められています。

さて、今回は香港の物価について取り上げたいと思います。

アメリカ企業のマーサーは『2021年世界生計費調査(Cost of Living Survey)–都市ランキング』を発表し、世界で最も生活費が高い都市に、香港が2位でランクインしました。世界の209都市における、住宅、交通、食料など、200品目以上のコストが調査対象となっています。昨年1位からランクが下がったとはいえ、世界的に見ても香港の生活費は非常に高いですね。

かつて80年代~90年代の香港と言えば日本人旅行者にとっての「買い物天国」で、海外ブランド品が日本よりも安く購入できることから多くの日本人女性が香港を訪れました。当時はパッケージツアーや社員旅行で香港へ行くことが多かった時代です。2000年代からは格安ツアーや格安航空券が登場し、若者や大学生が気軽に海外旅行をするようになり、日本から近くて治安の良い香港は人気のある旅行先でした。そして何より、日本人にとって香港は物価が安いことも魅力的な場所でしたが、ここ20年余りで香港の物価は目に見えて上昇し続け、今や日本よりも物価が高くなっています。

その要因はこの20年における中国本土の目覚ましい経済発展と関係しています。中国の発展に伴って香港経済も潤い、また中国本土から香港の不動産購入が相次ぎ、香港の不動産価格が急上昇しました。香港に賃貸で住んでいる方は、家賃が年々値上がりしていくのを肌で感じると思います。

香港の不動産が高騰すると、香港人の若夫婦が新居を購入できなかったり、テナント料が払えず名店がやむを得ず閉店したりと影響が出ました。政府の対策として非香港居住者に対する不動産購入時の印紙税が倍となり、多少は本土からの不動産の「爆買い」は落ち着きましたが、コロナ禍においても依然として香港の不動産は高止まりしています。

屯馬線の乗車料金を見てもわかるように、香港の交通費は日本に比べてまだ安く感じます。それでも、以前に比べると料金の値上げは確実に進んでおり、たまに利用する交通機関においては料金の値上げに驚くこともあるでしょう。

庶民の足スターフェリーの料金も近年2度の値上げが行われました。

中環~尖沙咀間、湾仔~尖沙咀間(平日の上層階の料金)
・2017年2.5ドル→2.7ドルへ(+0.2ドル値上げ)
・2021年2.7ドル→3.2ドルへ(+0.5ドル値上げ)

香港島を東西に走る路面電車、トラムの料金も値上げされています。
・2011年2ドル→2.3ドル(+0.3ドル値上げ)
・2018年2.3ドル→2.6ドル(+0.3ドル値上げ)

市内を走る赤いタクシーの初乗り(2キロまで)料金は頻繁に値上げされています。
・2008年16ドル→18ドルへ(+2ドル値上げ)
・2011年20ドル→20ドルへ(+2ドル値上げ)
・2013年20ドル→22ドルへ(+2ドル値上げ)
・2017年22ドル→24ドルへ(+2ドル値上げ)

交通費はもともと日本より安いためそれほど高く感じませんが、値上げ率は大きく、将来的に香港の交通費が日本より高くなる日も来るかもしれませんね。

香港ディズニーランドの入場料は、2005年9月の開園当時はなんと295香港ドル(12-64歳のワンデーチケット)でした。その後はかなりの値上げ幅で変遷しています。
・2009年2月350香港ドル
・2011年7月399香港ドル
・2013年3月450香港ドル
・2014年11月499香港ドル
・2015年11月539香港ドル
・2016年12月589香港ドル
・2017年12月619香港ドル
・2019年4月639香港ドル(現行の価格)

東京ディズニーランドよりも面積は狭いものの、入場料は東京よりも高くなりました。

日本は物価も給与水準も20年前とそれほど変わっていませんが、香港はどちらも劇的に上昇しています。香港人も香港に居住する外国人も、香港で稼いでいれば香港で消費する分には物価の上昇に着いていくことができます。コロナ前は頻繁に日本へ旅行に来ていた香港人たちですが、かつて香港に来ていた日本人旅行者のように、日本の物価が香港よりも安いことを魅力に感じていることでしょう。

※本記事はH.S. Planningホームページ「近年の香港の物価の上昇についての投稿をもとに作成しています。

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