【香港】MPFについて | 日本企業の海外進出支援サイト ヤッパン号


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【香港】MPFについて

世界各国で新型コロナウイルスのワクチンの接種が始まっています。香港も2月末から医療従事者や高齢者から順次ワクチン接種が進められています。香港で供給されるワクチンには当初より中国のシノバック社製と、ドイツのビオンテック社製の2種類があり、どちらを接種するか選択することができます。このほかイギリスのアストラゼネカ社製を加え3種類となる予定でしたが、副作用などの報告が出ていることから香港政府はアストラゼネカ社製のワクチン調達を一旦中断しました。新型コロナウイルスの変異株の感染者も香港で見られるようになり、ワクチンの普及は急務ですが、接種後の副作用も気になるところで、ワクチンの接種率はなかなか上がらない状況です。

さて、長引く新型コロナウイルスの影響で事業を縮小したり、人員削減を考えたり、新たな雇用を検討する企業もあるかと思いますが、今回は従業員のMPF(年金制度)について説明します。

MPFとは、Mandatory Provident Fundの略で、日本語にするなら「強制退職積立金」という意味になります。それまで年金制度がなかった香港において2000年12月より初めて導入されました。日本の年金制度の歴史と比べると随分浅いと感じるでしょうが、香港など中華圏では普通、定年後の親の生活費は子どもがまかないます。香港では子どもが就職すると、毎月給与の3分の1ほどを親に渡す人も少なくありません。実家暮らしが多いので生活費を納めているとも言えますが、例え同居していなくても社会人になれば親にお金を渡すのが常識となっています。一昔前であれば、1組の夫婦に子どもが3~5人ほどいて、定年後の平均寿命も今ほど長くなかったことから、年金制度が無くても子どもたちに頼ることで暮らせました。しかし将来的に香港の少子化、高齢化が進むとこの習慣にも無理が出て来ることを見据え、満を持してMPF制度が始まりました。

MPFは確定拠出型の年金制度で、加入者がその資産を運用し、運用の成績により将来受け取る年金額が決まります。香港のMPFは全ての企業に対して加入が義務づけられており、従業員は正社員・パート社員を問わず加入しなければなりません。MPFの加入が可能な年齢は18歳以上~65歳未満です。具体的には、毎月の従業員の給与3万香港ドルを上限として、10%(企業負担5%,社員負担5%)を従業員のMPF口座に積み立てます。新たに就職した場合、雇用開始から60日以内にMPFに加入しなければならず、加入を怠ると企業側は罰せられます。また転職する際には、それまでの積立金を移管することも可能です。

MPFは65歳になると受給することができます。「年金制度」としていますが、厳密にはMPFは一括で支給される「退職金」のような制度です。ただし65歳未満でも受け取れるケースがあります。現地採用の日本人など外国人がMPFに加入した場合、香港を去って完全帰国すると誓約すればMPFを解約し、一度に限ってその時点での全額を受け取ることができます。もし再度、香港に戻って就業する場合は再度MPFに加入しなければなりませんが、今度は途中で完全帰国するとしても65歳まで受取ることはできません。

MPFは強制加入ですが、下記の条件が当てはまればMPFに加入は不要です。

1.香港での滞在期間が13ヶ月以内
2.月間賃金HKD7,100以下(ただし企業側は5%を積み立てます)
3.日本の駐在員など、外国の年金制度に加入している外国人

MPFに加入すると、運用会社の設定する幾つかのオプション(投信)を自分で選び、運用を開始します。あまり投資などの経験がなく、自分で株の売買をしたことがない日本人には自分で操作することに馴染みがないかもかもしれませんね。最初にオプションを設定したまま、その後は全く動かしていないという人もいるかもしれません。香港人は株など資産運用に慣れている人が多いので、定期的に運用成績を見ながら運用先を変更したりしています。同じ年数、同じだけのお金を掛けても、運用方法によって65歳になった時の結果に差が出ます。

こうしたMPFは保険会社、信託会社、銀行などで直接加入するか、保険代理店を通して加入することもできます。さらに、毎月の給与から天引きされ強制的に積み立てられる給与の5%の部分は、税金の控除を受けることができます。

日本の年金制度に関しては将来的に不安なニュースも聞こえて来ていますが、MPFもまだ制度として施行されてやっと20年ほどなので、現役世代の老後にどれほどの恩恵があるかまだはっきりと分かっていません。しかし香港ではMPF以外にも様々な保険商品があり、個人年金も選べるため、MPFとは別にそう言った保険に個人で加入している人も多くいます。

香港の銀行ではよく貯蓄型の終身年金保険があり、低リスクで複利を運用して資産を増やしていくことが可能です。香港では社会人になってすぐの20代からこういった保険に加入し始める人が多いので、老後に向けた資産形成の意識の高さが伺えます。加入義務のあるMPFはもちろん、任意でこういった個人年金も検討してみると将来豊かな老後が過ごせるかもしれませんね。

※本記事はH.S. Planningホームページ「MPFについての投稿をもとに作成しています。

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