香港の新型コロナウイルスの感染者合計は9月13日時点で4,958人、退院者合計は4,630人、現在入院中の合計は181人となっています。再び感染者数の増加も緩やかになり、感染拡大が少し落ち着いてきました。これにより9月23日から各種学校が段階的に再開されることが決まり、感染対策の制限も緩和されることが発表されました。
香港政府が9月1日~7日に実施を予定していた無料のPCR検査は、希望者が殺到したため9月11日まで延長されましたが、今後さらに延長の可能性もあるようです。9月12日時点でオンラインでの検査予約は134万人余り、これまですでに約100万人の検査が済んでいます。
香港の医療制度
世界的に見ても香港の医療水準は高く、ここ4年連続で香港人の平均寿命は男女ともに世界一位です。香港ではどのように医療を受けるのか、日本とは違う香港の医療制度をご紹介します。
<西医と中医>
まず香港の病院には、「西医」「中医」の二種類があります。西洋医学を「西医」、それに対し東洋医学・漢方医を「中医」と呼びます。日本人はあまり漢方医に馴染みがないと思いますが、香港人は場合によって西医と中医を使い分けています。
中医は、診察で舌と脈拍を見てもらい、その人の体質に合った漢方を配合してもらいます。中医で処方された漢方薬を飲みながら長期間に渡って体質改善をしていきます。経過を見ながら漢方薬の配合を徐々に変えていきます。
西医は、日本の病院と同じく聴診器や問診、必要な検査をして製薬会社の薬が出されます。香港在住の日本人なら風邪をひいたら西医にかかると思いますが、香港で処方される薬は日本のものよりきついと感じるかもしれません。用量通りに飲むと効き目は抜群ですが副作用も顕著なので、インターネットで薬の成分を調べて参考にしてみるのも良いでしょう。
<クリニックと総合病院>
香港の街中には小さなクリニックが数多くあります。一般的にクリニックはケガでも病気でも何でも診てくれまます。日本語が通じるクリニックも香港内にはありますので、言葉に自信が無い人も安心です。クリニックは個人経営の開業医で、診察料もまちまちですが、例えば風邪なら一回の診察代と薬代でローカルのクリニックならHKD400~500、日本語が通じるクリニックならHKD1000~1500が相場です。
<公立病院と私立病院>
総合病院に関しては政府による公立病院と、民間による私立病院に分けられます。公立病院のメリットは安さ、デメリットは混雑と言えます。そして私立病院はその逆です。
公立病院では、香港IDカードを持っている香港市民であれば医療費が非常に安くなります。例えば外来の診察なら50香港ドル、入院なら1日120香港ドル、とオクトパスカードで手軽に支払える額です。医療費に反して受けられる医療水準は非常に高く、私立病院にない医療設備を公立病院が所持していることも多々あります。
ただし公立病院は常に混雑しているため、例え救急車で運ばれても病院に到着後は災害時のようにトリアージが行われ、緊急でないと判断されれば何時間でも廊下で待たされます。緊急でなければ手術ですら半年待ちも珍しくありません。慢性的な混雑のため医療従事者も多忙ですから、手厚い看護が受けられる環境とは言いがたいところです。
私立病院は、医療費が高く一回の診察で数千ドル以上もして全額自己負担ですが、もし勤め先の会社が医療保険に加入してくれていれば一部を保険でカバーしてもらうことも可能です。そのため私立病院を利用するのは、民間の医療保険に加入している人がほとんどです。公立病院では半年待ちと言われたMRIや手術であっても、私立病院ならすぐに対応してもらうことが可能です。
<医療保険>
香港には日本のような健康保険制度がないため、香港に滞在する日本人は何らかの健康保険に加入しておくことをお勧めします。
駐在員の場合:会社で海外旅行保険に加入していることが多く、保険料も高いですが多くは会社負担です。保険会社の提携病院を受診して、キャッシュレスメディカルサービスに対応していれば支払いや請求の必要はありません。もしそれに対応していない病院で受診した場合は、医療費を一旦支払って後日請求します。保障内容によっては病院を往復する交通費も請求できます。
現地採用の場合:香港のほとんどの会社は福利厚生として団体で民間の医療保険に加入していますので会社に確認しておくと良いでしょう。海外旅行保険と比べると保障額は少な目ですが、風邪などでクリニックを受診する程度であれば十分です。例えばクリニックで受診する場合「年に10回・1回の上限HKD200まで」という保障内容であれば、HKD500の診察代に対しHKD200は保険、HKD300が自己負担となります。
もし会社が医療保険に加入していない場合、あるいは保障をもっと手厚くしたい場合は自分で民間の保険に加入すると安心です。香港には日本でも名前を聞いたことがある外資系の保険会社が一通りありますので比較検討し、加入すると良いでしょう。万が一入院や手術が必要となったときに、私立病院という選択肢があると安心です。
※本記事はHS Planningホームページ「香港の医療事情」の投稿をもとに作成しています。