進出形態 3パターン
日本の企業がドイツに進出する場合、大きく分けて3パターン(現地法人 / 支店 / 駐在員事務所)の進出形態があります。進出形態によってドイツ国内で可能となる業務範囲が異なったり、それぞれにメリット・デメリットがあるので、大枠だけでも理解しておくことが必要かと思います。
▼ 駐在員事務所(Representative Office)
駐在員事務所はドイツ国内での経済活動(営業など)ができないため、この進出形態で実施できる業務は情報収集や市場調査に限定されるのが特徴です。そのため、営業や製造などの本格進出をするための準備段階において、駐在員事務所を設立し、駐在員を日本から派遣するケースが多いようです。
正確にお伝えすると、次の活動に限定している場合に駐在員事務所とみなされます(日独租税条役第5条(3)より引用)
(a) 企業に属する物品または商品を専ら保管し、展示し、または引き渡すため、施設を使用すること。
(b) 企業に属する物品または商品の在庫を専ら保管し、展示し、または引き渡すため、保有すること。
(c) 企業に属する物品または商品の在庫を、専らほかの企業による加工のため、保有すること。
(d) 企業のために専ら物品もしくは商品を購入し、または情報を収集するため、事業を行う一定の場所を保有すること。
(e) 企業のために専ら広告、情報の提供、科学的調査またはこれらに類する準備もしくは補助的な性質の活動を行うため、事業を行う一定の場所を保有すること。
なお、営業活動を行うことはできないと述べましたが、禁じられているのではなく、上記の活動範囲から逸脱した場合は、駐在員事務所ではなく税務上の恒久的施設(Permanent Establishment)とみなされ、その営業活動がドイツで課税対象となります。問題は、これら営業活動の課税が通常日本で行われているため、ドイツ税務局が恒久的施設と認定した場合は、二重課税が発生してしまうことです。
▼ 現地法人
営業拠点や製造拠点としてドイツに進出する場合、現地法人の設立or本社の支店形態が考えれます。
会社形態としては、有限会社(GmbH)が一般的で、日本から進出される大多数の企業がこの形態を採用しています。中小規模の企業に適した形態となっており、設立手続きも簡易であることが特徴です。
有限会社(GmbH)以外にも、市場からの資金調達を考慮するなどの大企業に適した株式会社(AG)形態や、個人企業に適した会社形態など、現地法人の種類はさまざまです。
▼ 支店
本社や他国に存在する現地法人の支店形態で進出するパターンもあります。支店の場合、法的手続きで「本社の代表者の署名」などが必要になるため、ドイツの現地法人を設立するより手間がかかることが想定されます。また、本社の役員変更がある度、ドイツ支店の登記も更新する必要があります。
それらの煩雑さと対照して支店形態が持つ大きなメリットとしては、支店の場合、ドイツでの経済活動による欠損金が日本本社側で活用できる(損金算入が可能)という点です。現地法人の場合、本社とは別法人となるため、欠損金をドイツ現地法人自体の将来&過去の利益と相殺させることでしか活用できません。※ただし、2015年から適用になる本社支店間の移転価格税制ルールを加味すると、支店の移転価格文書化が現地法人よりも煩雑であることが判明しました。つまり、このメリットを享受するためのスキーム構築は簡易ではないということです。
その他のメリットとしては、現地法人と違い、支店はドイツでの会計監査の義務が免除されます。また、支店長の責任・権限は、現地法人社長よりも軽いこともメリットになるかと思います。
まとめ
以上、ドイツへの進出形態3パターンの解説でした。文章量などの関係で細かくはお伝えできませんが、進出形態のそれぞれの違いを大枠で理解する一助になれば嬉しいです。
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