最先端を行くベンチャー社長から学ぶ連載、今回はAmazon(アマゾン)を活用した販売促進・海外進出をサポートする株式会社コンパスポイントを紹介する。同社は、国際物流の整備、現地での販売許認可取得からマーケティングまで一貫して行い、現在までに500社以上のサポートを行ってきた。岡田昇社長は「日本企業はまだAmazonを十分に活用できていない」という。岡田社長が指摘する日本企業の課題とは――?
(企業取材集団IZUMO・正木 伸城)
JBpressより転載
Amazonのセラーになる企業が増えている
はっきり言えば「卸先任せ」は機会損失を生む。メーカーの視点に立てば、まず販路がどうなっているかがわからない。誰が売っているかもわからない。顧客データもたまらず、販売ノウハウも蓄積できない。さらに言えば利益率も下がる。
かといって、Amazonのベンダーチームに卸せば解決、というわけでもない。Amazonのベンダーとて、こと商品知識に関しては、メーカーの人間より情報が少ない場合が多いからだ。
一方、商品画像の大きさ、ページデザイン、商品紹介の文章など「見せ方」を考え、検索されるキーワードを調べて活用し、時に広告も使えば、もっと商品は売れるはず。では、どうすべきなのか。
大幅に押さえられる初期コスト
「卸も、状況によってはベンダーを介さず、自らがセラーとなってAmazon運用を始めるのです。当社は国内での販促を考える企業に、このノウハウを提供しています」
それは以下の図のようなイメージだという。
岡田氏いわく、クライアントの中にはこのナレッジを吸収し、岡田氏がコンサルしてこの仕組みをつくった後、自社運用に移行する企業も出てきたという。そして、これらの中には、顧客データ等を活用し、Amazonでの売り上げを飛躍的に高めている企業も多いらしい。
大幅に押さえられる初期コスト
「Amazonを使った海外進出」の大きなメリットの1つは初期コストを抑えられることだ。
もし海外に「リアル店舗」を構えようとするなら、まず現地法人や支社を作り、人を雇用し・・・と、初期コストは数億円単位になる場合がある。ランニングコストも莫大だ。しかしECなら、初期コストは数百万円で済む。
「そこで私は、Amazonへの出品サポートだけでなく、各国の許認可チェック、国際物流や国際送金の手配、現地イベントの企画運営、商品説明の翻訳、Amazonアカウントの取得・運用代行、その後の税金の支払いまでトータルサポートを始めました。マーケティングに関しても、“海外のAmazon販売で最適なパッケージデザインはこれですよ”“この商品の利用シーン画像には、この年齢層のこの人種の方を出した方がいいですよ”といったアドバイスを行っています」
価格感は、同社がベースにしているAmazonアカウントの運用代行なら着手金が20万円、月額15万円からだという。リアル店舗を構えるよりは、当然コストを抑えられる。「まずは“Amazonをつかった海外進出”で反応を見て、その後、販売を拡大していけばよいのです。実際、Amazon上での売り上げがよく、その後『現地のリアル店舗への卸も手伝ってほしい』といった相談もされるケースが増えています」
もし売れなければ撤退すればいい。撤退の際のコストは、アカウントを消すだけだから、ほぼ0円である。
見逃せない“パチモン”による日本企業の機会損失
岡田社長は、コンサル業から商社に入り、商材の国内外ECでの販売を手掛けてきた経歴を持つ。コンパスポイントの「Amazonを使った海外進出」のサポートは、そのときの経験に基づいている。貿易関係の知識とデジタルマーケティングの知識、両方がある岡田社長の目から見ると、「国内の企業は“もったいない売り方”をしているところばかりです」という。
まだAmazonを敵視?
言葉を選ばず言えば、ECには「有象無象が集まっている」。いわゆる“パチモン”の出品も多い。「それゆえ、真面目に作った商品が検索下位に押しやられる例も後を絶ちません。良質な日本製品の価値が不当に下げられていることがあるのです」。
岡田氏いわく、偽物の蔓延による海外での機会損失は日本メーカーにとって深刻な問題だという。例えば勝手にコピーされた商品が現地の法に違反した状態で販売され続けていたため、いざ日本メーカーが本格的に売ろうとしたら現地では販売できない状態になっていた、というケースもあるらしい。
「それにもかかわらず、大手の担当者に会っても、危機感がないことが多いんです。ブランド価値が毀損され、まがいものに市場が荒らされていても『よくわからない』で終わってしまうんですね」
メーカー内にはそうした問題に対処できる人員がいるケースは少ない。だが、岡田社長はそうした状況を一刻も早く改善すべきだと訴える。
まずいのはAmazonを敵視しているような企業
最後に岡田社長は日本メーカーに向けて次のように提言をする。
「これから、EC対策を適正化させたメーカーとそうでないメーカーの差がはっきり分かれていきます。まずいのは、Amazonを敵視しているような企業です。コロナ禍によるECへのシフトで、もはや見て見ぬふりはできなくなりました」
「世界的な視点で見ると、日本企業はプラットフォーマーとしてのパイはとれていません。しかし物作りに関しては現在も非常に評価が高い。しかし、せっかく良い商品を作ってもEC販売が上手な企業にパイを奪われているのです。モノづくりの力は抜群なのだから、ECをうまく運用できれば爆発的に収益が伸びる企業は多いはず。ぜひそこに気づいていただきたいと思います」
現在、コンパスポイントには海外メーカーから「日本に進出したい」という依頼も来始めているという。「EC対策の適正化」には国際的な需要があるのだ。さらに言えば、国境に阻まれていた日本市場は、今後、海外の企業の草刈り場になる可能性すらある。
「ブランディングし直す、工場を作り直す、といったことに大金を投じなくても、デジタルマーケティングに強い人材が1人いれば、ECでの売上は伸ばせます。そこで私たちは、企業内でいえばEC事業部とマーケティング部にあたる仕事を代行しているのです」
東証一部上場企業から5人ほどの小規模事業者まで、現在までにサポートした企業は500社以上、最近はクライアントの要望に応え、楽天やYahoo!ショッピング等のコンサルも依頼されているという。
みなさんの会社の商材はどんな状態だろうか。