確定申告の時期が迫ってきました
みなさん、こんにちは。朝日ネットワークス(タイランド)株式会社の小松です。さて、タイでもいよいよ確定申告の時期になりましたね。期限は3月末日となりますが、準備は万全でしょうか?
ちなみに、日本では雇用主側(会社)が社員に代わって個人所得税の年間納税額を計算し納税する仕組み(これが年末調整です)となっています。ただし、タイではこの年末調整制度が存在しないため、所得のある個人はすべて確定申告しなければなりません。
なお、タイ税務当局の情報によれば、申告している納税者は1,090万人(総人口が6,800万人なので約16%)であり、一定の収入額を超えているために納税する必要がある人口はわずか450万人とのことです。生産年齢人口比率の66.5%と比較するのは適切では無いですが、それにしても随分と少ない印象ですね。
本コラムでは、タイの確定申告・個人所得税に関するよくある質問を解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
日本・タイの両国で給与が発生する場合、どちらの国で確定申告が必要?
「昨年6月からタイ赴任(1年以上の赴任前提)となった場合、日本で支払われている給与をどの月の分からタイで合算課税する必要がありますか?」
まず、タイへの赴任前に日本で出国年調を行い、赴任前までの収入に対する個人所得税の計算・納税を完結させる必要があります。それを行った上で、赴任後に日本で支払われる給与は日本での課税対象とならないため、その分をタイで申告することが求められます。
今回の事例で言えば、赴任前の日本給与1~5月分を出国年調によって日本側で清算し、6~12月分(7ヶ月)のタイ給与&日本給与は、タイで合算課税する流れとなります。
滞在期間180日以内の場合、どちらの国で確定申告が必要?
「昨年9月にタイへ3年任期で赴任し、昨年はタイの滞在期間が4ヶ月のみ。日タイ租税条約で滞在日数が180日を超えない場合、タイで働いたとしても日本の給与分はタイで課税されないと聞いたことがあります。日本給与はタイで合算申告しなくても大丈夫ですか?」
これも非常に多い質問です。この疑問を紐解くキーポイントは、この租税条約の規定が日本の居住者であることを前提としている点です。つまり、タイへ赴任し日本の非居住者となった時点で、日タイ租税条約の規定を適用することができません。
今回の事例で言えば、前述した合算課税の原則通り、9月以降の日本給与分はタイで合算して確定申告する必要があります。
タイ赴任後に日本親会社から支給された賞与、タイで確定申告する必要は?
「タイに赴任後、日本親会社から賞与が支給されました。これはタイで確定申告する必要がありますか?」
結論から言うと、確定申告する必要があります。ただし、年の途中でタイへ赴任したケースは注意が必要です。賞与の支給対象期間の関係上、日本で課税されたものがある場合(日本の非居住者の国内源泉所得として20.42%の源泉税が課税されたもの)、その部分だけは除いてタイで確定申告する流れとなります。
タイへ単身赴任の場合、配偶者の扶養控除は適用できる?
「タイに単身赴任しており、日本に妻・子供(小学生)がいます。居住地が異なっても、扶養控除の適用は可能ですか?」
扶養控除の可否を紐解くポイントは、“単身赴任者ご本人の居住者認定(180日)”と“扶養者の所得”です。つまり、単身赴任者が180日以上タイに滞在してタイ居住者と認められており、扶養者の所得がゼロであれば、扶養控除の適用が可能になります。なお、単身赴任者が180日未満でタイ非居住者と認定される場合、日本にいる扶養者を扶養控除することはできません。ちなみに、非居住者でも、扶養者がタイに帯同していれば話は別で、扶養控除の適用が可能です。なお、扶養控除額ですが、配偶者控除が3万バーツ、子供控除が1人当たり1万5千バーツ(3人分まで可能)となっており、日本と比べると少額です。
また、扶養証明の取得方法ですが、日本で戸籍謄本を取得した後に在タイ日本大使館へ持ち込んで英訳をしてもらう流れです。ただ、この証明書は申告書に添付する必要はなく、あくまで税務調査があった際に提示する用となります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。日本では確定申告された経験がない方もいらっしゃると思いますし、国も違うので不明点や疑問点も出てきますよね。そんな方々に、このコラムが少しでもお役に立てれば嬉しい限りです。
なお、私たち朝日ネットワークス(タイランド)株式会社では、タイの会計税務・法律・会社設立などに関わる相談会も随時、開催しております。何かお困りのことがございましたら、是非お気軽にお尋ねください。