前回に引き続き、「大湾区情報」では、日系企業の皆様に有用と考えられる最新情報をいくつかピックアップしお届けします。
かつての漁村から貿易港、金融センターに至るまで、香港の主要な経済活動は常にビクトリア・ハーバーの両岸の地域に集中してきました。
香港の経済発展が本土の近隣都市とより密接に結びつき、協力しあうようになる中で、また、「第 14 次 5 ヵ年計画」における香港の位置づけや、大湾区建設を考慮すると、香港の空間開発戦略と土地利用計画は、どうすれば香港の長期的な社会的・経済的発展に最も適しており、有益なものとなるのかという議論が続けられてきました。
その答えとして土地資源を有効に活用することで、市民の住宅、生活、雇用のニーズ、経済や産業の発展、企業の運営、集積、支援施設などに対応することができると考えられています。
香港で最も競争力のある産業は金融サービスであり、現在の主要地域であるビクトリア・ハーバー都市圏にて更なる発展を推し進めている一方で、新しい経済エンジンはイノベーションとテクノロジーであり、香港の北部の新都市圏に配置し、南部に金融サービスエリア、北部にイノベーション&テクノロジーエリアという二つの重心を配置することにより、貴重な土地や人材をより効率的に配分し、関連インフラや施設、サービスを提供することにより、より便利で住みやすい生活・仕事環境を作るという計画が進められています。
今回の施策には、前政権による「香港 2030+:2030 年以降の計画ビジョンと戦略」調査の際に行われたパブリックコメントに寄せられた意見も反映されています。
南北のレイアウト計画と開発の多方面に渡る意義
(A) 国家発展とのよりよい融合
大湾区が強力な地域開発エンジンとなり、香港と深圳の協力関係がますます広く深く発展していく中で、深圳に隣接する北部地域にイノベーションとテクノロジー産業が集積することで、両地域の緊密な連携と協力が促進され、より活気のあるイノベーションとテクノロジーの産業チェーンが形成され、この新しい経済エンジンの育成と迅速な発展に有利に働きます。
また大湾区における国際的なテクノロジーとイノベーションのハブの開発や、両地の金融、専門家、その他高付加価値サポートサービスの綿密な協力と共同開発を加速させます。
(B) よりバランスのとれた合理的な産業発展
金融以外に、イノベーションとテクノロジーは香港の経済発展の重要な原動力となり、ハイレベルの雇用と起業の機会を数多く創出します。 革新的なテクノロジーを持つ企業や研究機関を誘致し、その発展を持続させるために十分なスペースを確保し、伝統的な産業のアップグレードと転換を促進することで、今までの特定の産業に過度に偏っていた経済成長の欠点を改善していきます。
(C) 土地と住宅の供給不足への対応
土地の供給不足は常に香港における商業、社会、生活サービスの発展の障害となっており、窮屈な生活環境と高い不動産価格が最も深刻な問題となっています。
住宅難や不動産価格の高騰を軽減するためには、開発用地や住宅用地のために活用可能な土地を提供していくことが必要であり、北部の都市圏開発と、それから産出される他エリアでの合理的な土地利用の機会は、今後 20 年間の重要な土地供給計画の柱となるでしょう。
(D) 生活と移動の合理化計画
新界(ニューテリトリー)地区に住む多くの人々が都市中心部に通勤しなければならない現状が大幅に改善され、仕事と住居がよりバランスよく配置されるようになるでしょう。
実際、交通渋滞は都市や経済の発展を妨げるだけでなく、市民にとっても無駄な時間コストを増やす原因となっています。
南部に金融サービス、北部にイノベーションテクノロジー産業が集中することで、通勤者の流れは再分配され、交通システムの負担も軽減され、より効率的な移動が可能になり、便利で快適な都市生活を送ることができるようになります。
香港の南端に位置するビクトリア・ハーバーの都市圏は、今後も金融・ビジネスサービスの発展のための空間を提供していきます。また北端は、自然と生態系の美しさを備えた北部都市圏を、都市と郊外の融合、開発と保全のコンセプトに基づいて建設し、質の高い仕事、学習、生活環境、便利なレクリエーションやレジャー空間を提供していきます。 南部の金融サービス業と北部のイノベーションテクノロジー業の発展により、香港の北端と南端がダンベル状に発展し、2 大経済エンジンを担うことになります。
そして、南北両端の中間には、西の新界北西部とランタオ島を結び、交通や物流の利便性を高める「西部経済回廊」と、東の九龍東、新界東から北の都市圏を結び、3 つの大学、サイエンスパーク、大埔インダストリアルパーク、香港・深圳サイエンスパークをカバーする「東部インテリジェンステクノロジー回廊」があります。
より合理的な全体の空間計画および交通インフラ優先の開発コンセプトと組み合わせることにより、より多くの開発可能な土地が提供され、その区画比率が向上することで、市民の住宅ニーズを満たし、居住の質を向上させることができます。
また、地図を広げてみますと、「ツインシティ・スリーサークル」という大きな空間レイアウトも見えてきます。 「ツインシティ」は当然ながら香港と深圳を指し、「スリーサークル」は以下三つのサークル(輪)を指します。
西部の深圳湾開発区:
深圳の前海、蛇口、後海が香港の天水圍、元朗、洪水橋とつながり、このエリアが香港の郊外から深圳の西部につながる中心地へと変化します。
中央の香港・深圳の緊密交流サークル:
羅湖、落馬洲、皇崗、文錦渡などの複数のイミグレーションを含み、羅湖や福田などの深圳の発展地区とつながり、香港の新田、古洞北、粉嶺、上水、そして新界のニュータウンへとつながります。
東部の大鵬湾・印洲塘生態レジャー観光圏:
大鵬湾と印洲塘のほか、蓮麻坑、地質公園、東平洲、大鵬半島の美しいレジャー景勝地などが含まれています。
「一区二園」科学技術イノベーションにおける香港・深圳相互協力のためのファ ストトラック
高さ 300 メートルの深圳・香港コラボレーション・イノベーションセンターの上層階に立つと、川の両岸と 2 つのゾーンや園区の建設状況が一望できます。
2017 年に深圳と香港が「深圳・香港科技イノベーション協力区」の共同設立を確認して以来、落馬洲ループの深圳同協力区の深圳園区にある 37 万平方メートルのハイレベルな研究スペースが活用され、「深圳・香港コラボレーション・イノベーションセンター」「深圳・香港国際科技パーク」「国際量子研究所」「国際バイオメディカル産業パーク」という 4 つのイノベーション施設が建設され、香港や海外のハイエンドの科学・イノベーションリソースを率先して受け入れています。
大湾区における科技イノベーションをテーマとした唯一のプラットフォームとして、深圳-香港科学技術イノベーション協力区は、国境を越えた独自の優位性を持っています。
ここでは、最初の 5 つの初期政策が着実に実施され、人材、資材、情報などのイノベーション要因の利便的な流れを促進する制度的メカニズムに突破口が開かれ、国家薬品監督管理局の「大湾区医薬品・医療機器技術審査検査大湾区センター」や「未来ネットワークテスト施設(深圳センター)」などの主要な国家研究プロジェクトやプラットフォームが定着しています。
「相互協力の先駆者」深圳と香港の科技協力プログラムに対する深圳からの財政支援
今年の 9 月 6 日には、深圳と香港が「深圳・香港科技イノベーション協力区の『一区二園』建設促進に関する協力取り決め」を締結し、協力区建設が加速化しました。 深圳・香港科技イノベーション協力区は、深圳と香港の間の科学技術イノベーションの開放と協力のための先駆的な地域であり、国際的な先進イノベーションルールのパイロットゾーンでもあり、大湾区におけるクラスタ化のスピードが加速しています。
実際、深圳は近年、広東・香港・マカオ間のイノベーション協力を継続的に深めるための一連の取り組みを導入しています。 早くも 2018 年には、深圳の大学・研究機関・企業と香港の大学・研究機関との科学技術協力を支援するための「深圳市『深圳・香港イノベーションサークル』プログラムプロジェクト管理弁法(試行)」が導入されました。
過去 3 年間で、深圳は深圳-香港・深圳-マカオの共同資金調達スキームに計 33 件の資金を提供し、資金調達額は 6,605 万人民元に達しました。
深圳パイロット・デモンストレーションエリア大湾区グループの専門家で、長年にわたり深圳-香港間の研究に注力してきた深圳-香港科技協力推進協会の設立会長である張克科氏は、国際的な科技イノベーションセンターの建設は、単なる科技プロジェクト、科学技術企業、製品ではなく、エコロジー(生態)であるとし、深圳や香港などの都市は、地域の共同イノベーションコミュニティを構築するという観点から、また科技イノベーションのサプライチェーン、産業チェーン、バリューチェーン全体から、キャリアやプラットフォームを設置すべきであり、国際的、専門的、かつ市場志向の科技イノベーションの発展のエコロジーを構築する必要があると述べています。
また、張氏は、「国際的な科技イノベーションセンターの建設は、知的財産権や技術サービスなどを必要とするハイエンドのサービス産業に支えられていなければならず、そうでなければ単なる製造業や加工業になってしまいます。
深圳と香港は、この分野で共に発展・進歩する余地が十分にあり、交通、人材、サービス、都市支援などの面で相互運用性を高めることが最も必要とされています。」と加えました。
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