大湾区情報 No.37【仏山のデジタル・インテリジェント化が巨大な市場需要を生み出す】 | 日本企業の海外進出支援サイト ヤッパン号


中国に関するコラム

大湾区情報 No.37
【仏山のデジタル・インテリジェント化が巨大な市場需要を生み出す】

前回に引き続き、「大湾区情報」では、日系企業の皆様に有用と考えられる最新情報をいくつかピックアップしお届けします。

深圳証券取引所上場の中国国内大手家電メーカー、美的(Midea)グループ(仏山市順徳) の子会社でドイツに本社を置く産業用ロボット製造の庫卡(KUKA)社は、2021 年の上半期業績報告書を公表しました。

当報告期間中のKUKA の受注高は 18 億 8,800 万ユーロ(前年同期比 52.2%増)、売上高は 15 億2,900 万ユーロ(前年同期比 30.9%増)、税引後利益は 2,600 万ユーロ(前年同期比 100%以上増)となりました。

 

マーケットの絶好のチャンスをとらえ、今年 4 月、仏山市順徳にて「MideaKUKA インテリジェント製造科技園」の第 2 期工事が開始されました。今後 3~5年の開発ニーズに対応するため、1 年半以内に 6 棟の建設を完了させる予定です。

 

この計画によると、同科技園では、今年 14,000 台のロボットを生産販売、その生産額は 20 億人民元に達する予定です。

 

国内のロボットの 5 分の 1 を生産する産業ハブである仏山は、ロボット企業にとって益々魅力的な場所になっています。 今年の上半期だけでも、エクストン(ESTUN)、川崎重工、藍胖子(Dorabot)などの国内外の主要なロボット企業が進出してきており、現存企業の拡大と相まって、現地のロボット産業は拡大を続けけており、急速な発展の時期を迎えています。

 

仏山市の「第 14 次 5 ヵ年計画」によると、2025 年までに、インテリジェント生産設備やロボットなどの 4 つの主要産業クラスタの生産額が 3,000 億人民元に達するとしています。 仏山のロボット産業は更なる飛躍の転機を迎えており、製造業もデジタルインテリジェンスによる変革の新しい波を引き起こし、かつてない発展のチャンスが訪れています。

大手企業が製造ハブに集結 拠点を先取り

Nanjing Estun Automation Company(南京エクストン)は、三龍湾順徳潭州コンベンションセンター 南区にある土地を落札し、その持株会社が隣接する土地を落札しました。

 

2 つの敷地は合計 70 畝(ムー)*で、4 億人民元以上の投資を行い、2 つのインテリジェント製造拠点を建設します。

 

1993 年に設立されたエクストンは、当初はコンピューター数値制御(CNC)工作機械のビジネスを展開していましたが、2011 年よりロボット分野に進出しています。

 

同社は、仏山市三龍湾に投資し大湾区本部を設置し、買収したヨーロッパの溶接ロボットのトップ企業である CLOOS 社と共に CLOOS 溶接ロボット(華南)技術センターを建設し、仏山市が産業用ロボットからシステムインテグレーションまでの産業チェーン全体の発展パターンを形成するのに役立つと期待しています。

 

エクストンのみならず、4 月、川崎重工業グループのカワサキロボティクス(川崎機器人; Kawasaki Robotics)は地元仏山の隆深機器人有限公司(ROSSUM)と手を結び、1 億人民元を投じて合弁会社を設立しました。 合弁工場への投資額は 10 億人民元に達し、2021 年 8 月の生産開始を予定しており、年間売上高は 8億人民元となります。

 

カワサキロボティクスは、産業用ロボットの研究開発と製造に強みを持つ、世界 5 大ロボットブランドの 1 つです。ROSSUM は、仏山の新興ロボット企業であり、家電ロボットの研究開発・製造で主導的な優位性を持っています。2015年には中国の家電業界における代表的なシステムインテグレーターの分野のリーダーとなりました。

 

両社の協力関係には長い歴史があります。2014 年に ROSSUM とカワサキロボティクスは代理店関係を確立し、2017 年には両社が共同で中国初のエンジニアリング研究開発センターを設立し、ROSSUM の自動車産業への参入に大きな弾みをつけました。

現在、両社は合弁での工場建設のために深く手を取り合っており、ロボット本体製造におけるさらなる飛躍を目指しています。

 

カワサキロボティクスと ROSSUM の協力関係は、典型的な例といえます。 近年、産業構造の変化に伴い、ROSSUM や Jaten Robotics(嘉騰機器人)など、仏山の地場のロボット企業が台頭してきました。「カワサキ前」には、ABB、KUKA、ファナック、安川電機の世界4大産業ロボットメーカーが進出しており、「カワサキ後」には、国内のリード企業エクストンが頭角を現してきました。

 

4 年前、Midea と大手不動産業者の碧桂園(Country Garden)はロボット分野に異業種から進出し、Midea はドイツの KUKA を 292 億人民元(36.2%のプレミアム)で買収、Country Garden は順徳ロボットバレーの建設に 800 億人民元を投資することを発表しました。

 

Midea が KUKA と手を組んだ 2 年目(2018 年)、KUKA の CEO であるティル・ロイター氏の退任が年初に報道されました。 当年度 KUKA 社の業績は急激に悪化し、売上高 6.8%減、利益 80%減となりました。 また、KUKA 社を含むロボティクス&オートメーションシステム事業は、Midea グループの中で唯一減収の業務となりました。

 

2019 年、KUKA 社の年間総売上高は 31 億 9,070 万ユーロで、2018 年の同時期に比べて 1.6%減少しました。2020 年は、新型コロナ肺炎流行の影響により、KUKA 社のビジネスはさらに後退し、年間の売上高は前年比 19%減となりました。

 

このように下落傾向が継続された状況で、Midea は何度も批判の的となりました。

 

KUKA の業績が低下する中、Midea は KUKA に事業戦略の調整を促し、特にKUKA の現地化プロセスを積極的に推進しました。 2018 年には、前述のように、順徳に「Midea-KUKA インテリジェント製造科技園」の建設をスタートさせました。

 

今年の上半期の営業データを見ると、KUKA 社の国内での業績は顕著です。

 

KUKA グループ中国支部の上半期の受注総額は 3 億 5710 万ユーロ(前年同期比43.2%増)、売上高は 2 億 6230 万ユーロ(前年同期比 97.2%増)であったと開示されています。 KUKA グループの上半期の累積受注額は、前年同期比 52.2%増の 18 億 8,800 万ユーロとなりました。

 

業績の面からみると、KUKA 社は状況を好転させることに成功しました。

Country Garden 傘下の博智林(Bright Dream Robotics)についてはしばらくの沈黙を経て、今年の上半期に明るいニュースが多くありました。 2 月には、同社が50 種類近くの建設用ロボットとインテリジェント製品を開発していると発表され、3 月には最初の商用利用プロジェクトの公開と合わせて 18 種の建設用ロボットが商用化されたことが発表されました。

 

8 月 24 日、Country Garden の莫斌社長は中間決算会見において、Bright Dream Robotics の建設用ロボットとインテリジェント建設ビジネスは来年には黒字転換が可能であろうと述べました。

 

仏山市は、いち早く産業用ロボットの産業パークを建設し、中国の主要なロボット生産地の一つとして発展してきましたが、中国国内の他のライバル地域との競争もますます激しくなってきました。

 

大規模な製造業の都市である江蘇省蘇州市のロボット産業の発展見通しは近年非常に明るく、産業用ロボットとインテリジェントロボットの 2 つのカテゴリの製品には、完全な産業チェーンが形成されています。 蘇州市昆山には、100 ムー以上の面積を持つ国家レベルのロボット産業パークがあり、哈工大機器人グループ(HRG)や艾博機器人(ABLE ROBOTICS)など、すでに数十社のロボット企業が集まっていることは特筆すべきことです。

 

広東省では、仏山にほど近い東莞市でも、近年ロボット産業の発展を積極的に推進しており、今年上半期において東莞の産業ロボット市場のプレイヤー数は大幅に上昇し、産業用ロボット生産量は前年比で 123.3%増加しました。

 

2020 年末の統計によると、仏山市の規上企業(**)でロボットを使用しているのは 7.5%に過ぎません。

 

これは製造業がデジタル化やインテリジェント化を推進するにつれて、仏山でのロボット需要の爆発的増加が到来する大きな可能性を示しており、仏山のロボット産業の発展にとって大きなチャンスとなることが予想されます。

 

ロボットの需要急増のチャンスをいかに活用し、産業の欠点を補い、新たな段階に進むかということが仏山にとっての課題となっています。

**規上企業:年間主要事業収入が 2,000 万人民元以上の産業企業のことを指す。

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