大湾区情報 No.11『南海日本工業園』 | 日本企業の海外進出支援サイト ヤッパン号


中国に関するコラム

大湾区情報 No.11『南海日本工業園』

前回に引き続き、「大湾区情報」では今後、日系企業の皆様に有用と考えられる最新情報をいくつかピックアップしお届けしていきます。

南海日本工業園

■南海区とは

南海区は広東省仏山市に属する市区で、広州市に隣接しており、面積1073.82km2、定住人口は約303 万人、行政区としては古くから南海県と呼ばれていましたが、1992年に南海市に昇格、2002 年に仏山市に組み込まれ仏山市南海区となりました。

1980 年代、南海区は経済発展の速さで順徳、東莞、中山とともに「広東 4 小虎」とも呼ばれていました。また、毎年の中国の「全国総合実力トップ100地区」において、2014~2019 年の連続 6年で 2位を獲得しています。

これから述べる日系製造各企業の他、多くの外資、香港系金融機関(銀行、保険)などが南山区の金融パークにアウトソーシング拠点を設けているのも大きな特色の一つとなっています。

 

南海区は日系企業が中国華南地区に投資する際に最も人気のある地域の一つです。1994 年に最初の日系企業が南海に進出して以来、トヨタ、ホンダ、東レ、旭化成などの世界的に有名な企業をはじめ、コア技術を持ち、大企業をサポートしている企業も多く進出しています。

2020 年9 月時点で、仏山市に投資した日系企業220 社のうち、118 社が南海区を選択し、その総投資額は30 億米ドルを超えており、その金額は仏山市全体の日系企業投資の 60%以上を占めています。産業は新素材、自動車、機械、スマート製造等の分野となります。

特に自動車産業については、地理的にも自動車セットメーカーの集中する広州市に近く、交通の利便性もよいことから多くの自動車部品メーカーが南海に進出しています。

■日系企業を重視

日本は南海区の最も重要な貿易相手国の一つであり、2018 年の南海区-日本間の輸出入取引は1,550 億日本円に達しました。南海区は日系企業の誘致に力を入れていて、積極的な活動を行っています。例えば、ビジネスマッチングのものづくり商談会(FBC)は日系企業を呼び込む重要なプラットフォームの一つであり、5 年連続で南海にて開催されています。

また、南海は2007 年にすでに日系企業を対象とした日本中小企業工業園の第1 期を開発しており、2010 年には第2 期を開発し、2 期合わせて33 万 ㎡の規模で、日本貿易振興機構(ジェトロ)広州事務所と協力し、合計35 社の日系企業を誘致しています。

■丹灶(Danzao)鎮

南海区の西部に位置し、清末民初の思想家、政治家、書家として有名な康有為の生誕地として知られる南海区丹灶鎮。

2004 年に最初の日系企業「捷貝汽車配件有限公司」(日本ブレーキ工業出資)が進出してから、16 年後の2020 年には38 社の日系企業が進出、南海区進出日系企業の三分の一をも占めており、大湾区の中で最も日系企業が集まる地区となっています。

統計によると、2019 年丹灶鎮の日系企業の総工業生産額は46 億2500 万人民元と前年度から14.09 %増加し、丹灶鎮全体の13.39 %を占めることとなりました。

その中で、エフ・シー・シー傘下の富士離合器、マレリ傘下の馬瑞利汽車照明が生産額5 億人民元以上、ケーヒン(現:日立アステモ)傘下の京浜大洋冷熱工業と捷貝汽車配件がそれぞれ生産額 1 億人民元以上と突出しています。これらの企業は日産、トヨタ、ホンダ、フォルクスワーゲン、その他の国内外の大手自動車メーカーへ部品供給を行っています。

■日本中小企業工業園

2007 年、南海区は、在中国の自動車セットメーカーへの部品供給企業の投資と発展を促進するため、南海国家生体工業園区内に12 万 ㎡の「南海日本中小企業工業園」を開設しました。標準化された工場、企業の要求に応じて個別化された工場、土地を借りた上での自社工場、という3 つのパターンにより、日系自動車部品企業のためにカスタマイズされた高品質の工場を建設しました。日本企業8 社が第1 期に誘致され、総投資額は1 億8000 万米ドル、フル稼働後の年間生産額は20 億人民元にまで達しました。

 

南海日本中小企業工業園の開発モデル及び投資モデルが日系企業に十分に受け入れられたことから、2010 年、南海区政府は丹灶鎮において工業園の第2 期を開発しました。

工業園の開発にはジェトロ広州事務所による提案も組み入れられており、南海区政府が外国政府機関と協力して工業園を建設したのはこれが初めててあり、南海と日本との間における経済協力の新たなステージを示しています。また、ジェトロが現地政府と協力協定を締結するのもこれが初めてでした。

工業園の第1 期、第2 期の成功を踏まえて、丹灶鎮は第3 期の建設を進めています。第3 期は丹灶鎮の南に位置し、園区はゾーンA とB に分かれています。A とB、2 つのゾーンの総建設面積は21 万㎡ となっています。工業園第3期は標準化された工場と個別化された工場のリースを提供し、スタッフの寮エリアや運動場などのサポート施設に加え、高級人材向けの住まいも整備される予定です。

将来的には、より多くの日系優良企業による開発と生産を誘致するために、自動車部品、ハイテク機器製造、電子デジタル、エネルギー及び環境保護分野等の先進製造企業が集まる産業区を構築する予定です。第3 期のゾーンA は2021 年末までに引き渡しを予定しています。

■南海に新たに進出の日系企業

〇 武漢総和汽車零部件有限公司(仏山分公司:工業園 3 期に入居)
自動車部品の鉄・鋼成形部品や複合製品を中心に生産している会社で、TIS グレープ、東風ホンダ、広州ホンダなどの自動車メーカーに提供している。仏山への進出は、大湾区における同社の発展の布石としての重点的プロジェクトの一環であり、総投資額は3,000 万人民元を予定していると報じられている。

 

〇 米思米(中国)精密機械貿易有限公司
日本の著名精密部品メーカーであるミスミの中国における営業本部(本部:上海)。

株式会社ミスミはプレス金型用標準部品、FA 標準部品、プラスチック金型用標準部品、加工工具の設計・製造・販売を主に行っており、業界では工業製品のワンストップ購入プラットフォームとしても知られている。
南海での新規プロジェクトは約 3 万 ㎡の近代的な工場を建設する計画で、主に工場の自動化精密機械部品を開発し、自動化生産、プレス、金型製造、電子配線、工場用工具などをカバーし、華南地区の顧客に専門的で多様なサービスを提供。

米思米(中国)の総投資額は2 億米ドルになり、丹灶鎮で巨額の資産投資を選択した理由を米思米(中国)の総経理、徐少淳氏は「江蘇省南通市にすでに生産工場を持っているが、中国華南地区もミスミグループ
の重要なマーケットであり、広東省の顧客は中国国内顧客の3 分の1 を占めている。
また、丹灶は華南地区における「日系企業の故郷(日企之郷)」であり、立地面での優位性と政府の強力な支援を受けて、丹灶で製造プロジェクトを立ち上げることになりました。」と述べている。

【参考資料】
・南海区が東京で中日産業交流会を開催(佛山ニュースネット)
http://www.foshannews.net/nh/nhtt/201904/t20190411_239427.html

・日本の大手 2 社が進出!丹灶に 3,000 ムーの日中協同テクノロジー産業園を建設
(南方都市報)
https://m.mp.oeeee.com/a/BAAFRD000020200518321983.html

・日系企業 2 社が南海日本中小企業工業園第 3 期の入居契約を締結(佛山ニュースネット)
http://www.foshannews.net/nh/nhtt/202005/t20200519_321276.html

・南海区丹灶、日中協同テクノロジー産業園の建設を提案(佛山ニュースネット)
http://www.foshannews.net/nh/nhtt/202005/t20200520_321511.html

・実力あり!南海が日本資本 1.96 億を誘致、140 社企業が現場にマッチング
(佛山ニュースネット)
http://www.foshannews.net/nh/nhtt/202009/t20200924_352118.html

・総投資百億超え、丹灶の産業発展は爆発的な時代に!ペプシ、匯芯、ミスミが開業に注力(佛山ニュースネット)
http://www.foshannews.net/nh/nhtt/202012/t20201218_374079.html

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