お客様の成長を真にサポートしたい
―『人事の舞台』を開発された背景について教えてください。
私どもは会計事務所ですから、会計の業務が基本にあります。多くの海外進出企業様を担当するなか、業績が振るわない企業様もありました。その原因を分析していて分かってきたことがあります。
それは、事業戦略や環境といった要因はあるものの、有効なマネジメントの仕組みが作られていないこと。PDCAのサイクルがうまく回らず、赤字が続いていたのです。
業績が悪ければ、トップダウンで戦略を修正することもできます。しかし、「やれ」といったところで、スタッフがそれを理解して動かなければ意味がありません。
特に海外ではジョブディスクリプションの問題もあります。「これを解決するには、やはり制度から変えていく必要がある。われわれがそのサポートをできないだろうか」と考えたのです。
―なぜ会計事務所が人事関連の評価システムを手掛けたのですか?
会計事務所といえば、伝統的に、毎月の資産表を作り、決算時期の業務を行うのが主な仕事でした。しかし今、その部分はどんどんコンピュータ化され、出番は少なくなってきています。
われわれも、従来の会計業務だけでは十分でないと感じていました。「会計という目線で、顧客の成長につながる価値を提供しつづけること」、これこそ、これからの会計事務所の果たすべき役割ではないかと考えていたのです。
財務というのは出てきた「結果」ですから、直接コントロールができません。結果を変えていくためには、その前段階にある「行動」を変えていかなければいけないし、「行動」の前には、社員様の「意識」があります。財務の結果を変えるためには、社員の教育による「意識改革」や「行動の変容」がどうしても必要になってくるわけです。
そこでわれわれにできることは何かを考え、行き着いたのが「評価システム」を作ることです。
―海外法人にも必要な理由は何でしょうか?
日本では、会社の経営理念や戦略が、組織の隅々まできちんと伝わる伝達系統があります。「察する文化」もあるため、理解が共有されやすいといえるでしょう。
しかし海外では、言葉の壁、文化の壁に加え、価値観の違いもあります。日本の親会社がもつ価値観を浸透させるためには、言葉で伝えるだけでは十分ではありません。実際の行動を変えてもらうためには、より「制度化すること」が必要になると考えたのです。
さらに、会社の期待がきちんと伝わるようにするためには、現地の上司と部下の間でもしっかりと運用ができるよう、分かりやすい言語にすることが重要だと考えました。
自分で決めれば意識が変わる。行動が変わる
―『人事の舞台』は、どんな課題を解決するためのツールなのでしょうか。
全ての事業には、導入期、成長期、成熟期があり、そのままにしておくとトレンドは陳腐化し、衰退していきます。そのため、新しいビジネスプランを考えて進めていこうとしますが、現場からは「忙しい」「時間がない」「人がいない」という声が聞こえてくる。トップが旗振りをしても、誰もついてこない。そんなことが起こり得ます。
何故そこを変えられないのでしょうか。一つには、「新しいことをやることで会社が成長していく」というビジョンが共有されていないこと。もう一つは、まだ誰もやったことがないために、「いつ誰が何をどのような形で」やればよいのか、具体的な行動を起こす仕組みがないことです。
それを解決するためには、制度を作って人を動かすことが必要です。『人事の舞台』は、ゴールに向かうための行動を、人事評価制度を組み込んだ形で確実に進めるために開発されました。全体として向かうべきゴール、KGI(Key Goal Indicator)を決め、ゴールに向けて何が必要か、社員が自分で目標を決めて5W1Hに落とし込んでいく。それを評価者が絶対評価で評価していく、そんな仕組みになっています。
―具体的なプロセスを含めて、ぜひご紹介ください。
まず初めに、「会社としてどこに向かっていきたいのか」という、財務的な目標の設定をします。ここで大事なのが、「目標と予算は違う」ということ。
予算というと、「今の延長線でこれぐらいは達成したい」と考えるため、イノベーションの要素が入ってこないのです。やはり現状を打破するイメージで、売上高を2倍にするぐらいの大きな目標をたてることが必要でしょう。
そこから、「それを達成するためには、どうすればよいか」という個人の行動目標を決めて数値化します。そして、3カ月ごとに査定し、評価シートに評価していくのです。直接評価する一次評価者の他に、それが妥当かどうかを判断し、承認する二次評価者を設けています。
―『人事の舞台』の特長はどんなところですか?
多言語で各国の通貨に対応しており、クラウドで一元管理できるため、海外拠点でも使いやすいということ。そして絶対的に評価できるところが特長です。
自分で行動目標を決めることで納得感が得られますし、単に他の人と比べて査定するのではないため、頑張りを正当に評価できるシステムなのです。
行動目標が達成できなかったからといって、評価をマイナスにすることはしません。目標達成と評価を連動させると、「できなかったらどうしよう」と考えてしまい、思い切った目標がたてられないからです。
『人事の舞台』では「挑戦をしているかどうか」を評価基準にします。頑張ったことが評価されることで、社員様も安心して目標に向かうことができるでしょう。
―実際導入していらっしゃるのは、どんな企業さんが多いですか。
さまざまな業種の方にご活用いただいていますが、従業員数では10名から50名ぐらいの会社様が多いです。一人の人間が管理できる人員は、6名ぐらいが限界という議論がありますが、それを超えたくらいのお客様が評価制度の必要性を感じておられるようです。
―『人事の舞台』の導入にはいくらかかりますか?
『人事の舞台』のツールそのものは、無料です。従業員様のマスターを入れていただくなど、初期設定をしていただければお使いいただける形になっています。
ただ、最初のKGI設定の部分については、社内だけで考えていると今の延長線になりがちで、なかなか新しい企業戦略は浮かんできません。会社を大きく変えたいときは外部の力を借りるというのも一つの方法です。
そんな皆さんのために、当社では別途コンサルティングサービスも行っており、経営幹部の皆さんと一緒に、時間をかけてKGIを作り込んでいます。会計事務所の強みを生かしたコンサルティングにも、どうぞご期待ください。
【監修:東京コンサルティングファーム】 世界27カ国44拠点進出。取引時実績700社。 海外進出支援・海外ビジネスのファイナンスサポート・進出後の海外スタッフのマネジメント支援までの一括コンサルティングなどを通し、日本企業の海外ビジネスを徹底サポート。 詳細はこちらから |