コロナ時代の越境ECを考える 【第3回】競争相手は「全世界」、成功体験への固執捨て、柔軟な戦略設計を – 3 | 日本企業の海外進出支援サイト ヤッパン号


世界全域に関するコラム

コロナ時代の越境ECを考える
【第3回】競争相手は「全世界」、成功体験への固執捨て、柔軟な戦略設計を – 3

国内の通販市場の競争環境が激化する中、ここ数年、企業の成長を支えてきたのが海外需要の取り込みだ。競争が激化する中にあってもインバウンドや越境EC、海外販路の開拓が各社の事業を潤してきた。

だが、2020年、新型コロナウイルスの感染拡大が、国内消費マインドの冷え込み、インバウンド需要の激減など事業環境に大きな変化をもたらしている。影響長期化から収束の見通しが不透明な中、コロナ時代の越境ECについて、これをサポートする専門事業者の視点から考察していく。

第3回目は、コンパスポイントの岡田氏、国際物流を行う4PX EXPRESS JAPAN(以下4PX)代表取締役の謝郁安(Ian Hsieh、以下イアン)氏、Payoneer Japan(ペイオニア・ジャパン)の岡本氏にコロナ以後の海外展開の変化について語ってもらった。

(ネット販売VOL.22 No.4より転載)

「日本品質」で勝負するべきか?

――海外企業と国内企業では、海外戦略におけるリテラシーの違いは感じますか。

岡本:日本は8割以上が内需で、国内でビジネスを回してお金を稼ぐことができます。その意味で、海外企業は現状に満足せず、新しい技術を取り入れながら事業拡大していく推進力は違うようには感じます。

イアン:日本企業はとても細かい。欧米にモノを送る時、日本では配送のプロセスすべての説明を求められます。「どんな梱包資材で、何の段ボールで」と。日本は梱包が丁寧できれいだけど海外は違うのでそれを受け入れられないという人もいます。海外だと「外箱はどうでもいい。とりあえず早く送れ」と言われるものが、日本だと「外箱は商品です」といった具合です。そういった文化の違いは感じます。コミュニケーションにしても国や人種が異なればすべて違うので、その点はやり方を変えていく必要がある部分もあるように感じます。

 

――日本品質がそれほど求められているわけでもない。

 

イアン:求められていない、というより求めても仕方がない部分もあります。日本で製造していない製品も多く、日本人が売っていても中国で製造しているものもあります。そうなると梱包のレベルは日本のクオリティでないケースもあります。そこに日本のクオリティを求めようとすると、結局、コストで負けてしまう。なぜ大事かというとコストなんですね。

今、世界のEC市場をみると、セラーの半数を中国人が占めているプラットフォームも少なくありません。そうなると、競争相手は日本人だけではあ

りません。そこで資材と高くするとなるとコストで勝てません。かつての海外戦略のように商社や代理店が上乗せして販売しようとすると負けてしまう。

岡田:海外企業は直接売ることに慣れているというのは感じますね。マーケティングやECに習熟した人も多い。日本企業はこれまで海外に行くとなると商社や代理店頼りだった面があり、社内にそうした専門人材がいないということがネックになっています。それで出ていけない、出てもうまくいかないということがあるように感じます。

 

――コロナ以後、メーカーの動きは変化していますか。

 

岡田:商社等を通じてやろうとしていた企業の中から直接やろうとする企業は増えているのは感じます。

岡本:これまでは代理店に渡して終わり、卸して終わりでした。ただ、コロナを機に危機感も強くなっていて、メーカーから直接、相談を受ける機会も増えています。商工会議所や地銀からも越境ECやりたい企業が多くあるから説明してくれという引き合いは増えています。

 

――とくに売れ行きがよい商品などはありますか。

 

岡田:コロナ以後、当初はサプリメントが増えたりレジャー系商品が増えたりということがありました。

イアン:外出自粛が増えた影響で倉庫がランニングマシンだらけになり、在宅勤務の浸透から椅子だらけになったり。キャンプ用品も増えています。

 

――越境ECに参入する上での失敗例、注意すべき点はありますか。

 

イアン:何も分からずに売るということが失敗でしょうか。分からないからこそ、コンサルティングをつけたり、

決済や物流などプロに聞くべきですが、日本をはじめアジアの人はすべて自分でやりたがる傾向が強いように感じます。ようやく分かってきた時には、置き去りにされている、というのが失敗するパターンではないでしょうか。

岡本:失敗を嫌がるということが失敗につながるように感じます。新しいことに着手する時に、コンサルに費用を支払うとか、それが回収できなかったらどうしようとか、だったら自分で、となります。専門家に依頼するような意識が低いというか一歩踏み出せない、費用をかけることが最大のリスクに感じてしまって、そこから動き出せないというケースはよくあります。

 

――この連載でも何人か専門家に話を伺っていますが、同じような指摘はよく聞かれます。

 

岡本:やはり自分たちはこれを売っていきたいという自負もあり、頑張ればできると思うのかもしれません。けれど海外でモノを売るのは、日本とは全く異なる世界です。梱包の話もありましたが、そこまで求めていない、ということもあります。日本の常識、成功体験をあてはめると失敗するケースもあります。プロの意見に耳を傾けつつ、柔軟に戦略を構築していく必要はあるかもしれません。

 

 

画像はイメージ(画像は4PXの保有する倉庫)

 

画像はイメージ(画像は4PXの自社開発のWMS)

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