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インドネシアに関するコラム

インドネシア経済 最新動向レポート【2021年更新】

インドネシアは14,000もの島々からなる赤道近くにある国です。
ASEAN最大の経済規模と人口を持ち、今後の経済成長が期待される新興国の一つとして注目されています。日系企業も製造業、小売業、飲食関係など幅広く積極的に進出しているインドネシア。 そんなインドネシアの経済状況について解説します!

 

インドネシア経済の状況

基本情報

・人口:約2.67億人
・国土面積:約192万平方キロメートル
(2019年、出典:外務省HP)

インドネシアの大きな特徴は、世界第4位の人口です。しかも労働力人口が多く、人口ボーナス期が2035年頃まで続くという見通しになっています。

面積は日本の約5倍、人口は約2倍です。
多くの島からなる広大な国ですが、首都ジャカルタに人口1,000万人以上が住み、都市部に人口が密集しています。

主要経済指標

・実質GDP:10,493億米ドル(2019年、出典:国連統計)
・一人当たり名目GDP:4,174.9米ドル(2019年、出典:外務省)
・平均所得:月収2,756,345ルピア(約2.1万円)(2020年8月、出典:インドネシア中央統計局)
・失業率:2019年5.3%、2020年8%(出典:IMF)

インドネシアは世界銀行の分類で上位中所得国に位置付けられています。2020年に基準に到達し、下位中所得国から引き上げられました。

ASEANの中では、一人当たりGDPがマレーシア・タイに続く5位。次にフィリピン・ベトナムが続きます。

2019年に発表した目標では、2045年に一人当たりGDPが3億2,000万ルピア(約2.2万米ドル)になり、先進国入り。また、名目GDPは7兆ドルとなり、世界の5大経済国に入るという目標を掲げています。

実質GDPと経済成長率の推移

実質GDPと経済成長率の推移は以下のようになっています。

(データ出典:国連統計)

実質GDPは通貨危機後の1998年より20年以上、右肩上がりで増加を続けています。

2009年はリーマンショックの影響で成長率が鈍化しましたが、それでも4.63%の経済成長を維持しました。これは多くの国がマイナス成長になったことに比べると高い成長率です。

2019年の経済成長率は5.02%。2000年代後半から2010年代初めの5%後半~6%の経済成長率に比べるとやや鈍化していますが、安定的な発展を続けています。

2020年は新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を受け、通年の実質GDP成長率(前年同期比、出典:インドネシア中央統計局)は▲2.07%とマイナスになりました。四半期の内訳を見ると、1-3月期2.97%、4-6月期▲5.32%、7-9月期▲3.49%、10-12月期▲2.19%で、成長率の動向は緩やかに回復傾向です。

インドネシアの産業構造

主要産業と2018年における名目GDP構成比は以下の通りです。(外務省ホームページより引用)

・製造業(19.9%):輸送機器(二輪車など)、飲食品など
・農林水産業(12.8%):パーム油、ゴム、米、ココア、キャッサバ、コーヒー豆など
・商業・ホテル・飲食業(15.8%)
・鉱業(8.1%):LNG、石炭、錫、石油など
・建設(10.5%)
・運輸・通信(9.1%)
・金融・保険(4.2%)
・行政サービス・軍事・社会保障(3.7%)

インドネシアの産業構造は、製造業がGDPの2割、農林水産業・鉱業が2割、サービス業などの第3次産業がGDPの5割以上となっています。

2010年(名目GDP、出典:インドネシア中央統計局)と比較すると、製造業がGDPに占める割合は22.0%から2.1ポイント減。農林水産業は13.9%から1.1ポイント、鉱業は10.5%から2.4ポイントと減少しています。

成長しているのは建設・運輸・通信の分野です。建設業が2010年の9.1%から1.4ポイント増。運輸・通信業も7.3%から1.8ポイント増加しています。

輸出・輸入額の推移

インドネシアの輸出額・輸入額と貿易額の推移は以下の通りです。(外務省ホームページより引用)

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年
輸出 2,035.00 1,900.20 1,825.50 1,762.90 1,502.80 1,444.30 1,687.30 1,800.60 1,675.30
輸入 1,774.40 1,916.90 1,866.30 1,781.80 1,426.90 1,356.50 1,568.90 1,886.30 1,707.20

(単位:億ドル、インドネシア政府統計)

輸出・輸入額は2000年代後半から2011年・2012年にかけて拡大しました。その後2016年まで減少が続きましたが、2017年以降やや回復しています。

貿易相手国ランキング

最新の貿易相手国ランキングは以下表の通りです。

1位 2位 3位
輸出 中国 アメリカ 日本
(258.5億米ドル) (176.7億米ドル) (137.5億米ドル)
輸入 中国 日本 タイ
(445.8億米ドル) (155.9億米ドル) (94.1億米ドル)

 

(2019年非石油・ガスの総額、出典:外務省)

経済の特徴、近年のトピック

新型コロナウイルスの状況と対応

インドネシアでは新型コロナウイルスの感染者が2021年3月31日までに累計150万人超、死者は4万858人となりました。東南アジアでは突出して多い感染状況です。

感染拡大防止のため、2020年4月からジャカルタなどで大規模社会制限を導入。学校や職場などが約2か月間閉鎖されました。その後再開されましたが、2020年秋と2021年初めにもショッピングモールや飲食店の人数制限などをしています。

この影響を受けて、2020年の経済成長率は上述の通り▲2.07%になりました。マイナス成長の主な理由は国内景気の落ち込みで、減少したのは運輸・倉庫やホテル・レストラン、ビジネスサービス、建設業、機械・設備、自動車などの分野です。

一方、情報・通信、保健衛生・社会事業などは増加しました。

輸出依存度の低い内需主導経済

インドネシアの経済の特徴は内需中心という点にあります。マレーシアやタイなどと比べると輸出依存度が低いため、リーマンショックのときにも大きな影響を受けずに経済成長を持続しました。

2019年のGDPの内訳は、民間支出が占める割合が57.9%、投資が33.8%です。輸出は18.4%で、輸入18.9%とほぼ同じ水準になっています。(出典:国連統計)

成長を牽引しているのは拡大する民間支出・投資です。この20年間で一人当たりGDPが約6倍に拡大。所得が増え、貧困人口が減ったことにより、個人の購買力が上がりました。世界第4位の人口と、人口の5分の1という厚みのある中間層が形成する大きな消費市場です。

通貨危機以降は、民主化が定着し、為替相場やインフレ率も比較的安定した動向になっていることも、消費を支える効果を果たしています。

産業構造の変化

インドネシアは天然資源が豊富な国です。石油・天然ガス・石炭や、スズやニッケルなどの鉱物資源、パーム油や天然ゴムなどが採れることから、かつては鉱物資源・農水産物が主力の産業でした。現在も輸出はこれらの資源が中心になっています。

工業化の推進により、第2次産業が成長。1990年代にはGDPの40%を占める主力産業になりました。通貨危機により大きな打撃を受けましたが、その後自動車や機械を中心に拡大しています。

第1次・第2次産業より早いペースで拡大したのが、運輸・通信、建設業などを中心とした第3次産業です。現在は第3次産業がGDPの50%以上を占め、経済の中心になっています。

シャリア経済マスタープラン

インドネシアのジョコ大統領は2019年に「シャリア経済マスタープラン」という経済政策を発表しました。シャリアとはイスラム法のこと。ハラール食品と呼ばれるイスラム教で認められている飲食品や、イスラム法に則したファッション、観光、医薬品・化粧品やシャリア金融などを発展させるという政策です。

インドネシアはイスラム教を信仰する人が87%を占め、世界最大のムスリム人口を抱える国です。2023年に3兆ドル規模に成長するという見通しのイスラム経済圏に取り組むべく、世界有数のシャリア経済国となるという目標を掲げています。

現在注力している産業

輸送機器(自動車・二輪車)

インドネシアの製造業の中で、食品・飲料、燃料関係に次いで大きいのは輸送機器、つまり自動車と二輪車(オートバイ)の分野です。

インドネシアの自動車・バイク産業は国内生産・国内消費が特徴。1960年代から国産化を進め、現地生産に協力した歴史を持つ日系メーカーが圧倒的なシェアを占めています。

2020年の国内自動車販売台数に占める日系ブランドのシェアは96.3%。バイクもホンダとヤマハで90%以上を占め、日本車に対する信頼が厚い市場です。

国内自動車生産・販売台数は100万台前半で推移しています。2020年は新型コロナウイルスによる影響を受け、販売台数53万2,027台(前年比▲48.5%)、生産台数69万150台(前年比▲46.5%)に落ち込みました。

しかし中期的には、人口が多い上に所得増による自動車の保有人口増加が期待できるという環境があることから、インドネシアは有望な自動車市場です。

インドネシアは資源経済依存からの脱却を目指しており、自動車など付加価値が高い商品の輸出が奨励されています。環境規制と電気自動車(EV)政策も打ち出しており、EVを含めた自動車産業への今後の国の政策が注目されます。

インフラ整備

インドネシアのジョコ大統領の重要政策の一つがインフラ整備です。インフラ開発を通して、経済成長や地域格差の是正、海外からの投資を呼び込むことを目指しています。

2019年には日本が全面支援した「ジャカルタ都市高速鉄道(MRT)南北線」が開通。インドネシア初の地下鉄です。ジャカルタ首都圏に人口約3,200万人以上が住む一方で、交通手段は自動車・バイクに頼っているため、交通渋滞が深刻で、経済損失と大気汚染が問題になっていました。

2019年に発表した第2期ジョコ政権の優先項目でも、輸送関連インフラの開発を5項目の一つとして表明しています。

インフラ整備計画は約6000兆ルピア(約45兆6000億円)規模です。但し、資金調達には課題があると見られています。内訳は輸送関連のほか、エネルギー関連、潅漑(かんがい)など。

また、首都ジャカルタをカリマンタン島に移転する方針を決定しています。2024年に国会や省庁の移転を開始予定。首都移転にかかる費用は、466兆ルピア(約3兆4,484億円)という見通しです。

観光

インドネシアで国際的に有名な観光地といえばバリ島やボロブドゥール寺院ですが、ほかに知名度のある観光地が少ないのが現状です。

2018年のインバウンド(旅行で訪れる外国人)による国際観光収入は141億米ドルでGDPの1.4%。タイの12.5%やマレーシアの5.3%などを大きく下回っています。国内観光を含めても、観光セクターがGDPに寄与する割合は5.25%です。

同年にインドネシアを訪れた外国人観光客数は13.4百万人。外国人観光客ならびに国内観光客は増加を続けていて、今後の成長の余地が大きいと考えられます。

政府は観光業を将来の成長の柱とする方針を掲げており、バリ島に次ぐ新たな観光地10カ所を開発すると発表しました。

2021年の経済見通し

2021年1月に発表された見通しによると、2021年のインドネシアの経済成長率は以下の通りと予測されています。

・IMF:4.8%
・世界銀行:4.4%

どちらも2020年のマイナス成長から経済回復するという見通しになっています。但し、2021年1-3月期についてはマイナス成長という見通しです。

インドネシアと日本の関係性

インドネシアと日本の貿易額

インドネシアと日本の貿易額の推移は以下の通りです。(外務省ホームページより引用)

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年
対日輸出 27,160 25,764 28,172 27,156 23,903 19,799 22,307 23,789 19,779
対日輸入 14,123 16,187 16,621 15,605 13,962 12,302 15,022 17,430 15,243

(億円、財務省貿易統計)

日本への輸出品目は資源関係が多く、金属鉱・くず、天然ガスと製造ガス、石炭、コークス、練炭が主な品目です。

日本からの輸入では、一般機械、輸送用機器、電気機械等が多くなっています。

インドネシアと日本の旅行者数

2018年にインドネシアを訪問した日本人旅行者数は57万3,310人です。50万人台で推移しています。

同年のインドネシア国籍を持つ訪日旅行客は39万6,852人。訪日インドネシア人の数は年々増えており、特に2015年から2017年には毎年前年比30%前後と大幅に増加しました。(出典:⽇本政府観光局(JNTO))

日本語を学ぶ人口が多い

インドネシアは日本語学習者の数が中国に次ぐ第2位。東南アジアでは1位です。(2018年、出典:国際交流基金)

インドネシアの人は親日家が多いと言われています。

政治的な関係性

日本とインドネシアは経済的に密接な関係にあります。日本にとってインドネシアは中東以外の重要なエネルギー供給国。インドネシアにとって日本は最大の政府開発援助(ODA)供与国であり貿易の主要相手国です。

この経済的な結び付きを背景に、政治面も緊密な関係を結んでいます。自由で開かれたアジア太平洋秩序の維持に向け、経済協力や安全保障・防衛協力を強化することで一致。ASEAN地域の課題に連携することを確認しています。

インドネシアの日本企業と在留邦人数

インドネシアにいる日本人の長期滞在者(在留邦人)は19,612人(2019年、出典:外務省)です。2017年まで増加し、以降は安定して推移しています。

在インドネシアの日系企業数は1,489社(2019年11月時点、ジェトロ・ジャカルタ調べ)。2000年以前には車関係などの製造業が中心でしたが、2010年代前半には小売・商社などの非製造業が多く進出。2010年代後半は進出数が減少しています。

最近の日本企業の進出事例

近年のインドネシア進出事例としてニュースで見掛けるのは「LINE」です。2013年に現地法人を開設し、インドネシアの利用者は1,300万人。台湾・タイ・日本の次にLINEのシェアが高い国で、フェイスブックのワッツアップに次いでフェイスブックメッセンジャーと同率2位です。(2020年「Digital 2020」レポートより)

日本食などの飲食店も多く出店しています。名古屋のラーメン店「スガキヤ」は2018年にインドネシアに出店。華人・華僑に人気の豚骨ラーメンではなく、鶏ベースのスープとチャーシューを開発しイスラム教徒の取り込みを図っています。

販売業では、工場用間接資材の販売を手掛ける「モノタロウ」が2016年にインドネシアに進出。ジャカルタ周辺に倉庫を構え、インターネット通販で販売しています。

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