海外赴任規定をお考えの方へ
この記事では、海外赴任規定の作成を行うご担当者様や経営者の皆様に向けて、待遇面・労務面などの注意点をまとめ、疑問を解決していきます。
アフターコロナに向け世界的に感染リスクが安全なレベルまで下がりつつある現在、ビジネス目的の往来が許可されたタイや韓国などには、すでに渡航されたビジネスマンの姿も見られます。
その一方で、これから新しく海外赴任される方がいらっしゃる企業のご担当者、コロナ禍での海外駐在員への対応を再検討しないといけない方にとって、入念な事前準備が必要になります。本記事で取り扱う内容はぜひ確認しておくべきでしょう。
特に、海外赴任規定を作成する目的、注意点、作成を依頼できる専門家の情報などの紹介をしていきます。海外赴任規定を作成する際の参考情報になれば幸いです。さっそくみていきましょう。
▼【海外赴任規定】ポイントと専門家を紹介
▼世界全域での海外赴任規定について相談先を見つける
海外赴任規定の本来の目的とは?なぜ必要なのか?
グローバルに展開される企業にとって、海外社員の安全な生活や、住居の確保、給与基準設定について悩むことが多いと思われます。
こうした際の「海外赴任前と同じレベルの生活水準を保障するためのルール作り」が、海外赴任規定の本来の目的です。衣食住だけではなく、給与や税金、労務の部分は、他社の模倣を行ってしまうと混乱を招く元になります。そのため、各社それぞれの実情に見合った海外赴任規定の制定が重要になるのです。
海外赴任規定を作成する上で押さえておくべきポイント
ここからは、海外赴任の規定作成ポイントを紹介します。法務面に関しては専門家とすり合わせる必要がありますが、担当ベースでも最低限知っておきたい部分が6つあります。
海外での給与計算
世界各国に拠点を持ついわゆる多国籍企業では、「購買力保障方式」と呼ばれる、派遣先国においても有利・不利のない購買力を、物価の差や為替変動、派遣先国独特の事情を加味して考慮する方法が多く採用されます。
購買力補償方式とは、海外赴任直前に日本で受けていた給与総額のうち、生計費を割り出し、その生計費が海外に赴任した後どのように変化するかを、一定の指数を乗じて算出して、現地での給料を決定する方式をいいます。そして、このようにして算出された海外生計費に、別途海外での手当を加算していくことになります。
一方で中小企業や、海外1カ国のみに展開する企業では、この購買力保証方式を導入してしまうと、細かい計算を行う手間も発生し、専門化にアドバイスを仰ぐ手間も生まれるなど、様々なコストが増加します。
そのため、これから海外展開を行う企業の皆様には、海外赴任時の給与を国内と同額に設定する「併用方式」がおすすめです。こちらは日本での基本給をそのままスライドして海外赴任給とし、赴任する国にあわせて物価など生活コストを手当などを追加することで調整するというものです。手当がシンプルになるため、当事者にとってわかりやすく、間接部門の負担も軽減されます。
海外での給与負担について
海外に子会社を持ち、そこに親会社社員を出向させるという手法を取る企業は多くありますが、海外赴任時の出向社員は名目上、別企業の社員となります。そのため給与負担は本国の親会社ではなく、原則子会社負担になります。
一方で、国内本社が給料を支払う事例として考えられるのが、海外支店勤務や駐在員事務所の形態で進出するパターンです。
手当の種類と金額相場
「手当」には以下のような種類があります。
・海外基本給…国内と同額に設定する場合が多い
・海外勤務手当…海外赴任を推奨するため、海外勤務者に付ける特別手当。類似の手当に「ハードシップ手当(危険手当)」がある。中近東やアフリカへの出向社員に支給されるケースが多い。
・子女教育手当…現地の学校や日本人学校に通学する際に発生する費用を支給する。基本全額だが、インターナショナルスクールなどは赴任者に実費負担になることも。
・赴任、帰任手当…赴任開始と終了時に支払われる。引っ越し代として支給する企業も。
この他にも、海外旅行傷害保険や予防接種、住居費用と言った、必要経費も会社負担の手当として支給することになります。
そのためトータルの報酬額は国内勤務と比較して1.5~2倍程度の額面になることが多いようです。
日本での社会保険や税金は誰が負担する?
社会保険については、国内本社に在籍したまま出向する場合は日本の社会保険に継続加入する場合が多いようですが、転籍出向の場合は日本の社会保険は継続できません。
社会保険のうち、 ・厚生年金 ・健康保険 ・雇用保険 は国内本社からの給与支払い時に継続可能で、 ・介護保険 については国内居住者のみが負担対象となり、海外赴任者は保険料の支払いが不要になります。
一方、海外で社会保険に加入する必要が出る国もあります。例として中国、ベトナム、タイ、フィリピンでは、社会保険の加入が必須です。香港、シンガポールは任意加入です。
海外の税金事情
続いて納税について解説します。
海外赴任を行った場合にかかる税金としては、 ・所得税(日本国内) ・住民税(日本国内) ・海外個人所得税 に分かれ、国ごとに累進税率や所得控除が異なります。
引用・画像出典: ガルベラ・パートナーズ「海外赴任者・海外駐在員の税金・税務調査」
個人所得税や社会保険について整合性のある説明がつかないというリスクが、適当に税務面を考慮せずに給与や手当を制定した場合に生じます。
また海外の法律について認知する必要があり、独学では非常に難しいため、現地会計事務所との連携は不可欠となるでしょう。もちろん任せきりではなく、本社でも仕組みや計算式をある程度理解する必要は生じるという心構えは必要です。
寄付金課税とは?
海外子会社が給与負担金の受け入れをせず、本国親会社からの給与支払いを行った場合、子会社に対する贈与とみなされます。
この際、課税当局により寄付金課税や移転価格税制など、余分な税負担が発生する例が近年増加傾向にあります。
たとえば企業のグループ間取引が「利益移転」に当たるとされ、親会社が損金として計上していた給与を寄付金扱いとされ、寄付金課税の対象になるというもの。この事例は日本経済新聞の報道にも出ています。 グループ間取引、課税拡大 増・減資や出向社員の人件費 国税、「利益移転」調査厳しく
また海外子会社を今後立ち上げ、日本国内の親会社社員が出向する形で現地監督を行う場合、この役務に対して海外子会社による対価の支払いが行われていないとして課税当局に指摘を受ける可能性があります。
参考ページ:「海外子会社の給与負担金、増加する寄付金認定の背景」~寄付金又は移転価格税制か~規定は模倣して良いか?
労務規定について悩まれる方が多い一方で、ネットや他社のものをそのまま使用している企業も見受けられます。ここでは「自社で制定すべきか?」といったことについて触れます。
ネット上で見つけた規定や、取引先の海外赴任規定を参考に作成する会社も多くあります。「海外赴任 労務規定」などで検索すると、ウェブも画像も参考になる情報が非常に充実しており、極論、1時間程度で海外赴任時の労務規定を作成できるのではないでしょうか。
しかし、それぞれの会社の状況や、赴任する国によって、オンオフ問わず暮らしに大きな変化があることは容易に想像できます。自社の拠点がある地域や会社の事業、社風などを加味して、まるまるコピーするのではなく、そこに少し手を加えてみるのはどうでしょうか。
他社のものを利用すればいいと、海外赴任規定を安直に作成してしまうとと、 ・人件費の負担が不必要に増してしまう(過剰な福利厚生費の支出など) ・現地生活に支障をきたす、安全面で課題が生まれる(手当や支援の不足) ・国内勤務と海外勤務の待遇差、役職の違いによる待遇差などで揉め事や人材流出が起きる といったことが想定されます。
大手企業、多国籍企業など複数拠点を持つ企業であれば、自社オリジナルの規定を持つことが様々な良い効果をもたらし、リスクの低減にもつながります。
この記事では、自社独自の海外赴任規定を作成することで、トラブルを未然に防ぎ、国内勤務・海外勤務で起こりうる社内からの不満を減らし、社員が安心して海外で働ける環境を構築できるということをご紹介しました。
専門家と相談の上、独自の海外赴任規定を作成しましょう。制作したあともそのままにせず、時代の動きに合わせ、数年に1回は見直しをすることも重要です。
世界全域✕海外赴任規定の専門家の中からチェックを入れた専門家、
もしくは全ての専門家に一括でお問い合わせすることができます。
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