日本式の解釈や人事制度は、ベトナムでは通用しない
「人事制度設計」と言うと、何やら専門的で難しく聞こえますが、分かりやすく言い換えると「ルール作り」です。スポーツの勝敗を分けるのにも必ずルールや判定基準があり、またその結果に基づいて、報奨金やランキングの昇降ルールが存在します。ビジネスの場面においても、こうしたルールがそれぞれの会社の人事制度となって具備されています。
当然ながら、人事制度は組織や社員の利害関係に直結します。ベトナム進出後に制度が整備されていなかったり、あっても明確でない場合、ベトナム人社員が各々の立場で「都合の良い解釈」をして、小競り合いになってしまう元凶ともなりえます。
特に、日本の人事制度を翻訳してベトナム法人で使用する場合、ベトナム人にとっては表現が抽象的で基準が曖昧に感じられることもあります。
また、日本人の感覚でベトナム人に妥当な解釈を求めたり、日本社会の「言わなくても通じる」概念も、都合の良い解釈を生む原因になりかねません。
お人好し過ぎは禁物!ベトナムでの有事を想定した人事制度設計を
そのため、ベトナムで人事制度設計をする立場の人は、明確かつリーズナブルで、公平なルールをしいて、小競り合いの元凶を絶つようにしたいと考えます。
但し、ベトナム人の感覚を重視するあまり、制度設計のフェーズで「お人好し」になりすぎてはいけません。平常時には問題なくとも、人が悪意をもってしまったり、会社方針に背きだしたり、社内で敵対関係が発生してしまうなどの有事も想定しておきます。
その上でなお、機能できる制度になっているかチェックが必要です。ベトナムの職場では、人事制度に関して具体的にどのようなトラブルが起きているのか、事例を踏まえて設計すべきでしょう。
有事の際に制度が濫用されるのか。それとも、有事だからこそ制度が機能し、会社を正常な状態に戻す後押しとなりえるのか。この違いを作るものこそ、制度設計の前提となる「人の善意に頼り過ぎない」、そして「有事をしっかり想定すること」であると言えます。
ベトナムではロジック・マーケット・ドキュメントの運用に注意
最後に、具体的な制度設計のポイントと失敗例をご紹介します。
ポイント① Logic Driven
日本法人の感覚に頼らず、ベトナム現地法人にとって重要な視点を整理します。ベトナムの労働市場相場も加味した上で適切な重みづけを行い、結果としてはじき出した数値をルールに基づいて、しっかりと処遇反映や育成に使用します。
【ありがちな失敗例】
・日本の感覚でベトナム人の昇給について決めた結果、課長補佐と熟練工員の給与水準が同レベルになってしまった。
ポイント② Market Driven
個人の見解やベトナムの人事制度に関するちょっとした見聞き、自社の人事業務を行う社員からの情報だけに頼らず、客観的な労働市場や競合他社に関するベンチマーク情報を入手します。こうしたデータをもとに、制度設計の肝となるベトナム法人としての指針やターゲットレートを判断します。
【ありがちな失敗例】
・ベトナムではインセンティブ導入が進んでいる業界で、インセンティブのない報酬制度で進出した結果、優秀な人材が離職し能力不足な人材が定着してしまった。
・「ベトナムでは、他社は全て◯◯手当を支給してますよ」という人事社員の報告のみを信用して、手当付与過多になってしまった。
ポイント③ Document Driven
ベトナム法人における人事制度やルールを構築したら、それを見える化してドキュメントに落とし、これを公式な書面ベースで社内展開し、ルールに権威を持たせます。特にベトナムでは、口頭説明や口頭注意だけでは誰も動かないことがあります。
【ありがちな失敗例】
・「言ったじゃないか」「そんなことくらい分かるだろう」とベトナム人社員に言ったものの、本質が全く伝わっていなかった。
なお、弊社ではベトナムの人事制度設計に関するサービスを提供しています。基幹の⼈事制度である等級制度、評価制度、報酬制度の設計についてアドバイス等をお求めの方は、一度ご相談ください。
※本記事はiconicJobの投稿をもとに作成しています。
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