―海外における御社の事業内容についてお聞かせください
当社は、1981年に創業しました。アビームコンサルティング株式会社としては、デロイト トゥシュ トーマツグループから脱退した2003年からスタートしています。現在12ヵ国28拠点、グローバル全体で従業員数は6,000人超おります。事業内容は【マネジメントコンサルティング】、【ビジネスプロセスコンサルティング】、【ITコンサルティング】、【アウトソーシング】の4つで、日本発・アジア発のコンサルティングをグローバルに展開するというのが我々の一番の特色です。 コンサルティングを通じたお客様への貢献にはビジネスのグローバル化への対応が不可欠という思いから、弊社は海外拠点の拡大を続けています。シンガポール拠点は2005年に開設しました。現在、シンガポール拠点にはグループ会社の「アビーム ライトストリームアナリティクス」社を含めて約150名おり、人種は実に様々です。日本人駐在員は約20名ですが、最も多いシンガポール人の他、マレーシア、インドネシア、フィリピン、インド、タイなど様々な国籍のメンバーが一体となってサービスを提供しています。またITに強いインド系経営者の立ち上げた「オプティマムソリューションズ」社とも提携してプロジェクト対応を行っています。―日本とシンガポールで業界のトレンドに違いはありますか
日本と事業内容は同じなので、大きな業界のトレンドについては同じだと思います。ですが、日本と比べて事業規模が小さいことが大きな違いですね。一つ一つの案件に対してチームを作り、期間を定めて、プロジェクトベースで仕事を進めていくことは同じなのですが、一人一人の役割がより大きくなります。マルチタスクで進めることも必要なので、チャレンジングだと思います。また、日本より短いサイクルで仕事を回す必要もあります。一方で、必然的にいろいろな無駄を省くことができたり、組織階層がフラットで意思決定のスピードが速かったり、といった良い面もあると考えています。 日系企業のお客様と仕事をさせて頂く中では、日本人駐在員の方々が、本社の意向と現地の戦略、両方をくみ取りながら調整を行う必要があり、板挟みになって苦労をされている話をよく聞きます。当社の日本人コンサルタントは、そこに寄り添い、各国固有の商習慣や文化、風習なども熟知したうえでローカルメンバーと日本人メンバーの考え方の差を埋めるご支援をしております。その結果、予算内、期間内で円滑にプロジェクトを進められる、そこが当社の強みだと言えるでしょう。―御社における人材マネジメント/人材育成の取り組みについてお聞かせください
当社の商材は「人」しかありませんので、働き方や環境、制度などを魅力的なものにしていくよう強く意識しています。働き方のトレンドや求めているものに会社側が合わせていかないと優秀な人は集まりません。特に今は、家族との生活を重視し、スローライフ的な生き方に価値を感じる人が増えていますね。日本人も徐々に変わっていますが、特にシンガポールのメンバーはその傾向が強いです。 もちろんシンガポールのメンバーも自分たちの仕事にプライドや責任感を持っており、トラブル時や、納期前の早急な対応が必要であればきちんと対処します。ただ、ダラダラと残業することは常態化しないし、無駄なことはやりたがりません。海外から日本人の従来の働き方(夜中までの残業や休日出勤など)を見ていると、日本だけが特殊だと感じます。日本も働き方をグローバルスタンダードへ合わせていくべきと私は感じます。 コンサルティング業務は、「いかにお客様の役に立てる人を育成するか」が経営の根幹になりますので、人材育成の一環として弊社は積極的に日本から海外へ駐在者を出しています。駐在員は会社の意向と個人の希望の両方を調整しながら決めています。採用活動時に海外勤務の可能性が高いことをアピールしていることもあるので、海外勤務を希望する社員も多いですね。グローバルトレーニング制度というものもあります。海外勤務を希望する社員は、自ら立候補し、選考を受けて、海外に派遣されるという流れになります。当社は、比較的昇進スピードが速いので、年上のお客様と相対するケースが多いです。ですので、知識や経験をお客様以上に早く蓄積していかないと、お客様についていけなくなるわけです。海外のマルチカルチャー・マルチランゲージの環境下で仕事を経験してマネジメント力を伸ばすことは、大変意味のあることだと思います。 シンガポール拠点における現地メンバー向けの人材育成は、まだまだ試行錯誤中です。日本におけるトレーニングプログラムは充実していますが、これは日本でプロジェクトを進めていくためのトレーニングプログラムです。このプログラムをこれからローカライズしていく必要があります。もちろんベーシックな部分は共通ですが、プロジェクトを進める方法論については、規模感やスピード感が違うため、同じようにやってもうまくいきません。各国の事情に合わせてカスタマイズしていかなければいけないでしょう。また、日本では新卒採用メンバーに対してじっくりと当社の仕事の進め方を教育しますが、即戦力になることを期待して採用を行うローカル人材に対して、どのように当社の価値観や仕事の進め方をクイックに植え付けていくか、そこも悩みどころです。―海外人材の評価などはどのように行われていますか?
定性的な目標設定をどのように定めるか、タイトルやランクごとにどのような成果を期待するか、といった評価のフレームワークは日本と同様です。一方で、給与や賞与など報酬に関わる制度は、各マーケットに合わせる形になっています。弊社が期待するパフォーマンスに応じてレンジで報酬体系を定めています。他社と比較して報酬が低いからと辞めていくメンバーもいますし、他の社員と比較して評価などに納得がいかないといって交渉をしてくるメンバーもいます。「比較するのは文化」と思って、割り切るところもあります。 しかし、繰り返しになりますが、弊社は何よりも「人」を大切にしなくてはなりません。なので、メンバーにモチベーション高く継続して働いてもらうために、本人の要望を聞いたり、より親密にコミュニケーションを取ったりと、各メンバーに対する働きかけは惜しみません。他にも直接的な報酬以外のベネフィットを見直したり、CSR貢献に対する取り組みを支援したり、といったことを実施しています。対外的にもこういった取り組みをアピールし、定着率UPに努めています。 勤怠管理については、あまり細かく管理はしていません。限られた時間で成果を上げることを重視しているからです。ただ、お客様と一緒にプロジェクトを進めていきますので、お客様のルールを守らない、ミーティングに遅れる・無断欠席をする、といったことは許容できません。各プロジェクトでルールを定めて対応を行っています。―これまでの経歴、マネジメントをされる上で大切にされている事などお聞かせください
新卒でアビームコンサルティング(当時はデロイトトーマツコンサルティング)に入社しました。帰国子女として培った英語スキル、会計に関する専門知識を活かして、海外および日本国内の案件を数多く経験しました。シンガポールに来る直前は、日本で約450名のメンバーを抱えるCFOサービスの部門を統括していました。また、働き方改革を推進するスマートワーク担当でもありました。現職には今年の7月に就任しました。 人材マネジメントにおいては、日本人だから、外国人だからと対応を分けるのではなく、伝えるべきことを正面からしっかりと伝えることを意識しています。メンバーには、自分が期待するアウトプットを明確に伝えたいし、結果に対してもポジティブなのかネガティブなのかを曖昧にせず、なるべくロジカルに思ったことを伝えたいと考えています。「話さなくてもわかるよね」といった日本人的な感覚は、特に海外では通用しません。―今後のビジョン/展開についてお聞かせください
会社としては、お客様にとってより魅力的な存在になるためにも、シンガポール拠点メンバーを増やし、よりサービスを拡大し、より成長していかなければならないと思っています。難しさはありますが、シンガポールのメンバーから見て、この地にしっかりと根差して事業拡大をしている、ということを見せていきたいです。 個人としては、新しいビジネスキャリアのサイクルが今まさに始まったばかりです。今までのキャリアを振り返っても、新しい役割を担う度に悩みつつ苦労をしていますが、納得いくような自分なりのマネジメントスタイルをシンガポールで作り上げることを目標にチャレンジしていきます。日本でクラウド勤怠管理システム「キングオブタイム」を開発し、国内シェア トップクラスを獲得したメンバーが、その海外展開として東南アジアへ進出。徐々に人事管理が浸透してきている東南アジアでも勤怠管理システムや人事管理システムを提供し、ローカル企業のクライアントも多数。 |