―2014年にインド支社の立上げ、2017年にシンガポール支社の代表取締役にご就任と、複数国でマネジメントをされてきていますが、各国のスタッフの特徴や苦労された事、工夫されている事がございましたら教えてください。
インドに関しては、本当にゼロから立上げでした。ターゲットセグメントや価格設定からのスタートで、手探りで進めてきたものの、思うように売上げが上がりませんでした。そんな状況の中で、1年目で5人ほど採用したのですが、耐え切れず全員辞めてしまいました。
やっぱりキャッシュフローが大変で、お金ってどんどん無くなっていくものなんだと感じました。その時代は社員がカラーコピーするだけでハラハラしてしまうほどでした。(笑) ただ資金繰りの苦しさを学べたので、貴重な経験が出来たと思います。
その後、インド支社は従業員15名ほどまで規模拡大し、事業も軌道に乗りました。そして、2017年にシンガポールにアサインされました。それまでとは組織の規模もビジネスのフェーズも異なる挑戦です。私が言ったことが、最下層に降りるまでに伝言ゲームのようになってしまい、最終的に全く違う形として伝わったりすることもあります。彼らひとりひとりの声に耳を傾けることも簡単な事ではないですね。
また、シンガポールならではの工夫としては、インセンティブと評価のスパンを短くしている事があります。給与改定は年2回ですが、インセンティブと評価に関してはクォーター単位で行うようにしています。その都度フィードバックして評価をしないと納得してもらえないのがシンガポールの特徴の一つだと思います。
各国の人材を四象限で考える
私は、X軸に個人と組織、Y軸が短期と長期という四象限を作り各国の特徴を捉えています。日本人は「組織×長期」タイプですよね。組織へ帰属するし、キャリアの考え方も長期です。シンガポール人は真反対の「個人×短期」タイプが多いです。個人主義でキャリアの考え方が非常に短期です。インド人は実はバランスがよく、四象限の中心よりに位置しています。なので日本人の私にとってはインド人の方が、マネジメントや個人個人の理解という点では早いです。シンガポール人になってくると、日本人と真反対のタイプの彼らを理解をするのに時間がかかる。短期スパンで評価がわかりやすくなるように設計を組み替えていかないと、彼らは納得しない。そういう風にタイプ分けてマネジメントの仕方を工夫しています。
海外だからこその悩みは多い
インド人は割とまじめで、「働いて稼がないと」という価値観も強いので、休みに関してはきっちりしています。ただ、遅刻は多いです。時間にルーズな部分は感じましたね。シンガポールに関しては、傷病休暇(MC=Medical Certificate)を急に使う割合がかなり多いですね。2週間海外旅行に行ったマネージャーが次の日にMCを使って休む、ということも以前ありました。ここに関してはなかなか理解するのに時間がかかります。インドネシアは日本に似ていて、組織への帰属意識が強いです。ただその反面、和気藹々とし過ぎで仕事にベクトルが向きづらいといった特徴があります。また、ムスリムの従業員が多く、断食の時期は中々マネジメントが難しく、その時期は働けと強くは言いづらいですね。
また、シンガポールの日系企業の方々より人材マネジメントについてよく悩みを相談されるのですが、圧倒的に多いのが「離職」に関してですね。「なんでこんなに辞めてしまうんだ」と頭を悩ませていらっしゃる日本人の方が多くいらっしゃるようです。または逆で、組織が硬直化して、昔からいる社員が管理職の名の下に辞めないために、ポジションを渡さないので若手が育たないというものもあります。
―勤怠管理に関して、海外だからこそ難しいと感じることはございますか
勤怠管理は本当に難しいと日々感じています。「電車が遅れた」「雨が降っていて道が混んでいた」というのが理由になるのかならないのかという議論がいつもなされていますね。
いろいろ試したのですが、今は「パニッシュメント型」に落ち着きました。「○回遅刻したらAnnual Leave(年次有給)をマイナスします」という方法です。一度「プライズ型」も試してみました。こちらは「1ヶ月遅刻なし、MCなしだったら、フリーランチか金曜日に4時に退社できる権利をあげる」という形のものです。ただこちらは変化が少なかったですね。結局、遅刻する人はそれを気にしていないし、遅刻しない人は最初から遅刻しないように行動しているということですね。こればかりはお国柄というより、その人次第という印象を持っています。
―最後に、御社の今後のビジジョン、早瀬様の今後の目標をお聞かせください
今後のビジョンとしては、世界でNo.1の人材紹介会社になることですね。これは変わらないです。現在、売り上げは世界トップ10ぐらいに入ったかなという所。ここからいろいろな戦略をとって、世界トップを目指していきます。今年日本法人がアジアの法人をすべて子会社化したので、日本も巻き込んでグローバルで戦略的に行動できるようになりました。これまでは資本関係がなく、独立法人だったので、情報の共有もきわめて限定的でした。今後はグループの一体感を更に増し、一枚岩になろうと、役員、各社社長も意気込んでいます。
私個人としては海外マネジメントが得意領域だと考えています。今まで人とは違う経験をさせてもらっていると思うので、ここに関して、日本人の中でも頭ひとつ出していきたいです。国境関係なく、どの国に行ってもマネジメントができるようになる事が目標です。
記事の監修
日本でクラウド勤怠管理システム「キングオブタイム」を開発し、国内シェア トップクラスを獲得したメンバーが、その海外展開として東南アジアへ進出。徐々に人事管理が浸透してきている東南アジアでも勤怠管理システムや人事管理システムを提供し、ローカル企業のクライアントも多数。 |