はじめに
21世紀に入り、かつてGDP世界ランキング第二位であった日本は、急速に台頭してきた中国に追い越されてしまう。経済成長が著しいのは中国に限らず、ASEAN諸国も政府の積極的な取り組みにより、成長率を伸ばしている。この経済状況から、日本企業も中国・東南アジアへ海外進出する動きは大きい。今回、中国・東南アジアの経済状況について触れるとともに、今後の動向についてGDP推移、人口推移の二点において考察する。
GDPから見る、中国&ASEAN10ヵ国の経済状況
中国では経済規模が急成長しており、世界第二位の経済大国となったと言われているが、実際の購買力ベースなら既に1位というデータも出ている。(出典:外務省 目で見るASEAN-ASEAN経済統計基礎資料」)
一方、もう一つの成長地域として注目されているのがASEANだ。ただ、ASEANと言っても、加盟国の経済状況は国ごとに大きく異なる。経済規模(名目GDP)は、ASEAN5 (マレーシア・タイ・インドネシア・フィリピン・ベトナム)とシンガポールに対して、それを除く他4ヵ国の差が顕著に見られる。所得水準を示す一人当たりGDPの値では、シンガポールがトップであり、次いでマレーシアが高い。ただ、アメリカ、中国、日本などと比べると、ASEAN域内の経済規模はまだ小さい。
人口推移から見るアジアのマーケット
では、今後の中国&東南アジアのGDPはどうなっていくだろうか。その将来展望を考えるうえで重要なのは、今後の人口推移である。上のグラフを見ていただきたい。中国の人口は2030年に約14億4118万人に達すると予測されており、その年をピークに人口減少の一途をたどる。
一方、ASEAN10ヵ国においては、タイ、フィリピンを除き、おおよそ2060年~2070年まで人口は増加する。これは、経済の基盤となる労働力人口を多く確保できるということであり、技術革新による労働生産性の上昇の要因も加えて、人口の増加は、今後のASEAN域内の経済の拡大を促す大きな原動力となることが予想される。ちなみに、タイとは2030年くらいから人口減少が始まりますが、フィリピンは2025年に日本より人口が多くなり、2090年まで増え続ける。
今後10年、30年の中国&ASEAN5ヵ国のGDP推移予測
次に、今後のGDPの推移予測を見てみる。先にも述べたように、中国は2030年あたりを目途に人口は減少すると予想されている。しかし、GDPは2030年~2050年の20年間でも増加すると予測されており、このことから、中国の所得水準は大幅に上がると思われる。ASEAN5においても経済成長は著しく、2016年から2030年、2030年から2050年ごとに約二倍GDPは伸びると予想されている。
まとめ
今後の人口推移・GDP推移の二つの予測から、人口の増減がGDPに直接大ダメージを与えるというわけではないのが分かる。しかし、2030年あたりから人口の減少が予想されるタイは、2016年度のGDPはベトナム・マレーシア・フィリピンよりも大きいが、2030年以降の伸び率は小さく、結果2050年にはASEAN5の中で最下位になると予想されている。逆に、2000年代後半まで人口が増加し続けると予想されるベトナム・フィリピンにおいては、2030年以降大幅な経済規模の拡大が見込まれる。