非居住者取締役に役員報酬を支給する場合には、株主総会での承認決議が必要となります。また支給額に対して22%の税率で源泉徴収を行った上で、支給月の翌々月までに支払調書の提出及び納税が必要となります。
1:必要手続
非居住取締役に役員報酬を支給することに問題はありません。
非居住取締役に対する支給は、非居住者という立場からシンガポールにおける職務執行の対価である役員給与(Salary)ではなく、経営意思決定などの対価である役員報酬(Directors’ fee)として取り扱われます。
Directors’ feeの支給につきましては、株主総会における承認決議が必要であり、監査報告書において開示が必要となります。一般的には定時株主総会(AGM)にて当該事業年度における支給総額の承認と翌事業年度における支給総額の上限の承認を決議するケースが多いかと思います。またDirectors’ feeは年1回の支給が一般的です。
2:シンガポールにおける所得税の取扱い
非居住取締役への役員報酬については、シンガポール法人は22%の税率で源泉徴収を行った上で、支給月の翌々月15日までにシンガポール税務当局(IRAS)へ支払調書(Form IR37)を電子申告する必要があります。源泉税の納税につきましてはGIRO(口座自動引落)を通じて電子申告直後に銀行口座から納税額が引き落とされます。
税務上の支給日は、実際に役員報酬を支給した日または支給額が株主総会で承認された日(翌事業年度の支給額の事前承認を除く)いずれか早い日となります。
源泉徴収税額及び納付期限の具体例は以下の通りです。
一方、居住取締役への役員報酬及び役員給与については、源泉徴収及び支払調書提出の必要はなく、個人の確定申告を通じて納税することとなります。なお、役員報酬につきましてはシンガポール国籍・永住権を保有する者のCPF掛金拠出額の計算上、賃金には含まれません。
3:日本における所得税の取扱い
日本居住者については全世界所得が課税対象となりますので、日本国外払かつ日本国外源泉所得であるシンガポール法人の役員報酬についても日本で課税されます。
具体的には、確定申告において国外払であるシンガポール法人の役員報酬を給与所得に含め、外国税額控除を適用することにより二重課税を排除することになります。
4:シンガポールにおける法人税の取扱い
日本の法人税制と異なり、役員報酬及び役員給与の支給ともシンガポール法人の法人税の課税所得の計算上、損金算入制限はありません。