天然ガス輸入停止で右往左往、ミャンマー頼みのタイの電力事情
いまや真夏の恒例ニュースとなったタイの電力不足ネタ。2013年には、ブラックアウト(大停電)警報が発令されたこともあり、巷では「今年は大丈夫だろうか」と囁かれるほど浸透している話題だ。
タイ発電公社(EGAT)は3日、ミャンマーの天然ガス田「ヤダナ」と「イエークタークン」の定期点検(10日〜19日)による操業停止で、同国からの天然ガス輸入がストップすることへの準備が完了したと発表した。文言通りなら、ブラックアウトは回避できるとの解釈でよいだろう。だが、その後もエネルギー輸入停止の第二波として、同国ガス田「ゾーティカ」では、パイプラインの修理(20日〜27日)を控えている。前述2ヵ所からのタイ向けガス田供給量は約10億立法フィート/日で、3000メガワット(MW)以上の発電燃料に相当する。
ちなみに、発電燃料の約7割を天然ガスで賄うタイは、その8割をミャンマーからの輸入に依存している。まさに“ミャンマーさまさま”といった具合で、同国のさじ加減ひとつで、ブラックアウトに陥る危険と背中合わせなのが実情だ。
整った“準備”といえば、単純に天然ガスの代替エネルギーとして軽油や重油を充てるだけ。幸い、昨今の世界的な原油の価格下落のおかげで、発電コストは上昇せず、電気代への影響もないという。エネルギー省は、「万が一、電力が不足した場合はマレーシアから購入する手はずも整っている。ブラックアウトはない」と盤石の構えをみせる一方で、エネルギー規制委員会はタイ商工会議所やタイ工業連盟に対し、4月10日、17日、18日、20日の日中の節電を呼びかけ、協力企業には1ユニット(1kw/h)につき3バーツを払い戻す、二重三重の対策を備える。
国家にとって、経済成長の下支えとなる電力の安定供給は至上命題だが、場当たり的な対処では、抜本的な解決には至らない。しかも、頼りの綱のミャンマーも、AEC(ASEAN経済共同体)発足を前に、「自国消費用の天然ガスが増える」とし、タイと結ぶ天然ガス供給契約更新に、慎重な姿勢を示す。いまやエネルギー大量消費国となったタイ。日本も同様の悩みを抱えるだけに、今後のエネルギー政策に注目したい。