6.5人に1人が60歳以上。女性の生涯出産人数の平均は日本と同じ1.4人
タイの旧正月ソンクラン(13日〜15日)が明けた。外国人にとって馴染みは薄いが、期間中の13日はタイの「敬老の日」で、水かけ祭りを前に、家族の年長者の手に香りの付いた水をかけて尊敬の念を表す行為が慣習となっているという。
今回は、タイ経済の将来を考える上で避けては通れない「少子高齢化」問題を取り上げる。タイ情報通信技術省統計局の調査によると、2014年の高齢者(60歳以上)比率は14・9%で、人口6500万人のうち約1000万人が高齢者となった。推計では、高齢者数は2030年に1760万人、40年には2050万人に達すると予想され、タイの高齢社会はもう間近に迫っている。
また、タイの合計特殊出生率(1人の女性が生涯に生むとされる子どもの人数)は1・41(日本と同じ)。国民の平均年齢は34歳とASEAN域内ではシンガポールに次ぐ高さで(日本国民の平均年齢は約47歳)、確実にタイは少子高齢化への道を歩んでいる。
タイ軍事政権下で政治、経済の制度改革に取り組む「国家改革議会」も、現状を由々しき事態ととらえ、少子高齢化対策を急ぐ。中でも懸念されるのが、高齢者の所得問題。国家統計局によれば、2013年の高齢者の貯蓄割合は34・4%で、半数以上が貯金のない状態。ほとんどの高齢者は子や孫からの仕送りや補助に頼っている。
「公的年金は?」というと、あることにはあるが、すべてをカバーするには至らず、同改革評議会も新たな年金制度の青写真を描いたばかりなのが現状だ。不安定な所得の影響は、思わぬ数字にも表れている。少し古いが、1997年の高齢者の自殺率は、7・3%だったのに対して2000年には15%に上昇、年々数値は増加傾向にあるという。
一般的に、高齢化は経済成長の阻害要因として働く。高齢化による、医療費・年金負担の増加などが財政圧迫を招き、同時に子どもの減少が生産年齢人口比率の低下を加速させる。このダブルパンチ(少子化+高齢化)が、労働生産性を落とし、経済成長の鈍化、あるいは経済規模の縮小へとつなげてしまう。タイの少子高齢化は待ったなしの状態だ。