税制優遇、予算投下、地価高騰、いいとこだらけのタイ経済特区
AEC(ASEAN経済共同体)発足年を迎え、タイ暫定政府が本腰を入れはじめた。
その初手が、国境沿いの5つの経済特区だ。2015年1月19日、プラユット暫定首相は、ムックダーハーン県(578.5㎢)、サケーオ県(332㎢)、トラート県(50.2㎢)、ターク県(1419㎢)、ソンクラー県(552.3㎢)の5つの経済特区整備を布告した。
そもそも“経済特区”とは、平たく言えば、経済発展のために、税制上の優遇や規制緩和などの特別な措置を受けている地域を指す。つまりは、これまでのBOI(タイ投資委員会)ゾーン制(今年1月から廃止・変更)と同じ。特区では、投資企業に対して、法人税(8年間)、電気・水道の控除、機械輸入税、原材料輸入税(5年間)といった手厚い税制優遇が受けられる。
とはいえ、具体的にどんな企業にメリットがあるかは不明なのが現状。一部、タイ最大級の財閥企業CPグループやタイ・ビバレッジが興味を抱いている程度。そこで、プラユット暫定首相は、企業の投資計画を促すため、各特区の明確な目的を決めるよう、BOIと国家経済社会開発委員会事務局に指示した。
なかでも注目されるのが、ミャンマー国境近くのターク県経済特区だ。同県メソッドを取材したあるジャーナリストは「多くのミャンマー人が両国を結ぶ友好橋を渡り、タイで買い物をしている。今年1月からは同橋の通行可能時間も延長されたほど」と活況を伝える。ちなみに、同橋は1日に8000〜1万人が往来し、車両1500台が通行。2014年の国境貿易額は550億〜700億バーツとも言われ、政府もメソッド空港の改修を中心に整備を急ぐ。1月29日には、チャッチャイ商業相が同地域を訪れ、「両国の国境貿易は大幅に増加するだろう」と期待をうかがわせるほど。
一方、経済特区で思わぬ副産物となっているのが、地価の高騰だ。もともと空港周辺地域は1ライ(1600㎡)30万バーツ程度だったが、特区指定で急騰、いまや1ライ100〜500万バーツと、15倍以上に跳ね上がっているという。
いいとこだらけの特区だが、遅々として進まぬ、ダウェイ特区の例もあるだけに、今後に注目したい。