タイのGDPを押し上げる”中国人観光客”へのジレンマ
世界中に中国人観光客が、ドッと押し寄せる春節(旧正月、今年は2月18〜24日)。
当然、タイも例外ではない。タイ政府によれば、同時期にタイを訪れた中国人観光客は、約50万人とも言われ、期間中の定期便やチャーター便は900便に及んだという。また、政府は2015年中の中国人観光客数を約600万人と予想し、観光収入を約2000億バーツ以上と試算。数値目標として掲げる、年間訪タイ外国人数が約3000万人だとすれば、実に5人に1人が中国人観光客となる目算だ。
そんな、上得意様へのリップサービスとして、コーブカーン観光・スポーツ相は「有効期間6ヵ月〜1年の間、何度も出入国できるマルチプル・ビザの発給を検討している」と明かし、“熱烈歓迎”をアピールする。それもそのはず、タイは観光業でGDPの約8〜10%相当を稼ぐ観光大国。そのうち、年間観光収入の約1割を中国人による観光収入が占めるとすれば、GDPを押し上げるほどの破壊力だ。
とはいえ、世界で悪評を受ける中国人観光客。タイにとっても、経済的に有益をもたらす代償として、問題も起こしている。そのひとつが、観光地に貼られている「進入禁止」「禁煙」「触れてはいけない」といった禁止事項の看板を無視した素行の悪さ。2月21日には、チェンマイにある有名観光地「ドイステープ寺院」の鐘を足で蹴り上げた中国人観光客が問題視されたばかり。
チェンライの有名寺院ワット・ロンクン(ホワイト・テンプル)では、あまりの“お行儀の悪さ”に、中国人観光客の拝観を半日間拒絶したほど。さらに、トイレの使い方が汚いとして、同寺院では中国人がトイレを使用する場合に限り、ガイドを付き添わせることを義務付けた。ほかにも、チェンマイ大学では、中国人観光客が同校の制服を着て、構内で横暴な振る舞いをしたとして、問題となったケースも……。
中国人観光客の素行の悪さに頭を痛めるタイだが、上得意様だけに、強弁姿勢はとれない様子。ようやく打ち出した対策といえば、中国人向けに配付した観光マナーブックだけ。春節を終え、効力の方は、いかほどだったのだろうか。