世界初エボラ治療用の抗体開発
世界初の快挙にWHOも賛辞。実用化には約1年
タイのマヒドン大学医学部・シリラート病院(バンコク)が2日、西アフリカで猛威を振るう「エボラ出血熱の治療用の抗体を作ることに成功した」と発表。ビックニュースは、瞬く間に世界を駆け抜けた。ただ、同チームが開発した抗体は、ヒトへの臨床試験を経ておらず、今後はサルなどでの動物実験を行うため、実用化には少なくとも約1年はかかるという。
同日の会見で、研究チームリーダーのワンペン教授は「エボラ出血熱に対して、治療用の抗体開発は、世界で初めて」と自信を覗かせ、効果についても「開発した抗体は、米国で実験中のジーマップ(抗体医薬品)のわずか5分の1の大きさで、感染者の細胞に、より深く入り込むことができる。ヒトの遺伝子情報から作ったため、副作用もない」と断言。タイチームの成功は、当初から植物や動物ではなく、ヒトの遺伝子情報による抗体研究を重ねてきた点に尽きるとされる。
このニュースを知った世界保健機関(WHO)は3日、さっそく同研究チームにメールでお祝いの賛辞を送り、「タイの開発した抗体を(WHO)我々の研究チームに送ってほしい。効果が検証できれば、すぐにでも流行している地域で実用化したい」と伝えてきたという。WHOによると、西アフリカのエボラ出血熱の死者は9月28日現在、2228人で、感染者は7178人。「封じ込めはできて9いない」とするなかでの今回のタイの発表は、流行地域に光明をもたらしたに違いない。
とはいえ、タイチームが開発した抗体の実用化への道も険しそうだ。
ワンペン教授が「我々の研究では、本当のエボラウイルスではなく類似のウイルスを使った」という通り、効果のほどは今後の臨床実験にかかっている。例え、実験が成功したとしても、流行地域に配布するには、製薬会社による大量生産が不可欠。しかし、「タイの製薬会社では、十分に対応できない」(同教授)と前途は多難のようだ。それでも、世界を救う“希望”の発表だけに、ぜひとも実用化にこぎつけてほしい。
【タイ】世界初エボラ治療用の抗体開発
2014年10月06日